オックスフォード連続殺人

The Oxford Murders
アレックス・デ・ラ・イグレシアがイライジャ・ウッド、ジョン・ハート、レオノール・ワトリングなど大スターを迎えてのミステリー作品を監督。良質ミステリーに仕上げました。
オックスフォード連続殺人

「オックスフォード連続殺人」は2008年のスペイン、イギリス、フランス製作によるミステリー。
ハリウッドの大物、イライジャ・ウッドとジョン・ハートが主人公です。
ギジェルモ・マルティネスの「オックスフォード連続殺人」が原作で、原作つきだから監督と脚本の個性は比較的抑えめのようです。

監督・脚本は「気狂いピエロの決闘」のアレックス・デ・ラ・イグレシア、もうひとりの脚本ホルヘ・ゲリカエチェバァリアとはいつものコンビのようです。個性は控えめですが、その分、この人たちのちゃんとした技術の裏付けというものを強く感じました。この監督だからというのではなく、ちゃんとミステリーとして良質だったからです。

お話はマーティン(イライジャ・ウッド)がイギリスへ留学してくるところからです。オックスフォードのセルダム教授(ジョン・ハート)に強く憧れています。何とかセルダムに注目されたいという気持ちが先走っております。
しばらく後、事件が発生し、図らずもセルダム教授と親しくなってべったり付き合うことになります。この二人を中心に謎解きが進行します。

一見ややこしそうで実は表層的な理論がバンバン出てきまして、ジョン・ハートの渋い饒舌が光ります。その裏でミステリーが上手に構築され、最後の最後まで気が抜けません。物語は常に謎解きに宛てられています。とても良いミステリーです。

ときどきオーソドックスなミステリーが観たくなったりします。派手な殺しやドキドキサスペンスなんかいらないパズルのような推理モノ、昔の探偵小説のようなクールで知的な物語、ミステリーにはあまり詳しくないので憧れにも似た渇望です。この「オックスフォード連続殺人」はまさにそのような物語です。監督誰とか関係なしに、これはかなり好きなタイプのミステリー映画。
知的でクールなミステリーは映画的に派手なシーンがなく、やたら会話ばかり多かったりして、じつは多く作られていないような気がします。気がするだけですけど。知りませんけど。

殺しやドンパチなどの派手なシーンが少ないことを逆に捉えると、演出によって如何様にも描き倒すことができるというふうにも言えるかと思います。
その証左が、序盤に現れる主要登場人物すべてを総ナメにする超長回しによる俯瞰シーンです。
これはいいシーンですよ。
ある一瞬、主要登場人物が偶然に近い場所におりまして、彼ら全てをカメラが移動しながら舐め回していきます。なめ回しの最後の最後にカメラが捉えるのは・・・。
という感じの、これから起きるわくわくを厭が応にも盛り上げる素晴らしいシークエンス、ここは注目のシーンです。

主演二人の脇を固めるのがこれまたいい俳優たちでして、みんなのアイドル、レオノール・ワトリングやスーパー個性派俳優ドミニク・ピノン、俳優監督脚本何でもやるほんとのオックスフォード出身アレックス・コックス、妙な表情のこれまた個性派バーン・ゴーマンなど、キャスティングも絶妙です。

さてミステリーですので一切のストーリー紹介が面白さを妨げることになります。ですから「良質のミステリーでした」という以外の発言を控えますが、この先はアレックス・デ・ラ・イグレシア作品としての面白いところをいくつか書いてお茶を濁しておきます。

この映画を観た男が必ず注目するシーンがあります。
ストーリー的な必然もなければ映画的な必然もないのでありますがアレックス・デ・ラ・イグレシア的には必然があったのでしょうか、監督やるからにはこのシーンを入れずにおれなかったのでしょうか、駄目元で頼んでみたらOKもらえたんでしょうか、それはつまりレオノール・ワトリングのお色気シーンであります。裸エプロンです!やった!
この世に存在するありとあらゆる映画の中で、レオノール・ワトリングの裸エプロンが拝めるのは「オックスフォード連続殺人」だけ!超貴重!必見!
すいません。取り乱しました。

さらに変なところは、この映画ではレオノール・ワトリングがさほど魅力的に描かれていないのですよねえ。なんか無理矢理な濃い化粧で、ちょっとエキゾチックな風貌です。ナチュラルっぽいほうが可愛いのに。そもそもモテモテの外国人留学生の主人公役がイライジャ・ウッドっていうのも変なキャスティングで、何かやっぱり基本的にこの映画は捻れています。そういうのも含めての貴重なレオノール・ワトリングの裸エプロン(しつこい)

時々、カメラアングルで個性を感じるのは、大勢の人がいるシーンで広角カメラによるなめ回しと後退するショットです。こういうシーン、この監督の他の映画でもちょいちょい見かけます。この監督の持ち味であると同時に、やっぱりテリー・ギリアムみたいと感じる部分でもあります。
地味目な映画だからこそ、演出に凝れる部分もあるというか、構図のダイナミックさや、説明的描写の取捨選択のセンスはやっぱり抜群です。

それからアレックス・デ・ラ・イグレシア作品の一大特徴、オープニングがカッコいいです。
昔の映画では、ピンクパンサーとかOO7みたいな、ああいった凝ったオープニングタイトルがよくありましたが、昨今はわりと少ないですよね。
最近作「気狂いピエロの決闘」も壮絶な格好良さのオープニングでしたが、この「オックスフォード連続殺人」のオープニングもやっぱりカッコいいです。
ついでにいうと、アレックス・デ・ラ・イグレシアの他の作品も、とにかくオープニングがカッコいいです。ビデオクリップにして取っておきたい誘惑に駆られます。結論としてこの監督はカッコいいです。

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