マーサ、あるいはマーシー・メイ

Martha Marcy May Marlene
マーサ、あるいはマーシー・メイ
公開年:
2011
製作国:
監督:
脚本:
音楽:
主演:
出演:

山で生活をしているカルト集団から逃げだして姉夫婦のところに転がり込む少女マーサの現実と思い出。

マーサ、あるいはマーシー・メイ

「マーサ、あるいはマーシー・メイ」っていうキャッチーでカッコいい邦題のアメリカ映画です。
原題は「マーサ、マーシー・メイ、マリーン」て感じで、3人分の名前が出ています。
マーサは少女の名前です。この少女、変なカルト集団に嵌まっていたようでして、その集団ではマーシー・メイと呼ばれています。はて。ではマリーンって誰?それは教団の中で対外的なやりとりに使うための名前です。例えば教団で電話に出るときはマリーンを名乗ります。

主人公少女は、何とか自分の意思でカルトから抜け出したものの、脳の奥底にこびりついた洗脳がなかなか解けないことに苦悩します。
逃げ出して姉夫婦の世話になっているわけですが、時々変な態度を見せたり、忘れていた洗脳がフラッシュバックしたりするという、そういうのを描いた映画です。

観る前は、「元カルトの洗脳がなかなか取れない少女」の設定を踏まえて、メインのストーリーは洗脳を解くための苦悩とか頑張りとかそういう話だと思ってたんですがそうでなく、お話のメインが「逃げ出して洗脳の影響を受ける少女」そのものでした。「元洗脳だからどうのこうの」ではなくて、それそのものがメインストーリーだったんです。つまりここで「カルトの洗脳が取れない少女」と言ってしまうことが即ち全体のネタバレ的な、そういう映画でした。あわわわ。ネタバレすいません。でもそんなふうに宣伝してたしねー。

物語の構成は、逃げ出した後の暮らしと教団にいた頃の暮らしが並列に描かれ、ミステリー仕立ての進行となります。
冒頭のあとしばらくして、もう想像として合点している教団での暮らしをわざわざ描写するものだから、なんだかくどいなこんな回想シーン必要なのかと不信感も持ちましたが、その教団での出来事が後半ちょっとしたミステリーの謎解きのオチみたいなふうにも繋がってくるし、そもそも、その教団での出来事そのものがメインのストーリーだとだんだん気づきます。非常に親切にピュアにこの映画を楽しむには、映画の後半で「そうか!この少女がいた集団はカルトだったのか!」「その時の洗脳から解き放たれていないのか!」と気づいてあげることです。そういう作りです。この構成を理解できると楽しく見ることが出来ます。

つまりこれは何か新鮮な意味での洗脳を扱った社会派文芸映画なのではなく、素直な展開のホラーじみたミステリーのサイコ系スリルとサスペンスであるわけです。その題材が教団の洗脳や恐怖に繋がってくるという、そういう映画なのでありますね。何、そんなこと観てから気づいてアホちゃうか、と。はいすいません。

というわけで、サイコ系スリルとサスペンスとミステリーでありまして、後半はどんどん面白くなってきます。観ているこちらもノリノリです。

じっとりじっとりと見せてきて、効果的にクライマックスへ繋げます。その恐怖の演出は確かなものがあります。特にラストは秀逸、背筋が凍り、映画を見終わっても恐怖を引きずります。このラストとラスト近辺の素晴らしい出来映えだけのためにこの映画の価値があると言っても過言・・・ちょっと過言ですね。

「マーサ、あるいはマーシー・メイ」に苦難があるとすれば、それはこの映画の要素自体が過度の何かを期待させてしまうものだったということでしょう。
カルト教団、洗脳、フラッシュバックなどと聞けば、誰だって何か特定のイメージを持ちます。例えば私はリアリズム系の苦難のお話かと思い込んでしまいましたし、別の人はもしかすると派手で気違いじみた物語を想像するかもしれませんし、異常な犯罪カルトを連想したり、主人公少女にホラー映画的人物造型を連想したりしたかもしれません。
そのいずれもが、映画全編のどこかで「何だか思ってたのと違うな、地味だな」と思ってしまう危うさを秘めています。

この映画の作り手がどのような意図を持って作ったのか、それを汲まないと楽しめない映画なのかもしれません。で、その意図が実は見終わってもよくわからなかったりするものだから、肩すかしとか中途半端とかそういうネガティブな感想を持たれがちなのかも。

基本、リアリズム系であるからこその面白さですが、そうすると中盤までのリアリズム描写のかったるさがどうしても仇になってしまいます。酷いことを言うとですね、この物語は長編映画としてはやや無理がある構成だなと、ちょっと思うわけです。ちょっとだけね。面白かったので自分的には全然問題を感じませんが。

というわけで中途半端な感想文でありますが、でもまあラストの素晴らしさと、それからなんと言っても主人公少女の頑張りで、どうしても私なんかは好意的に見てしまいます。

主人公少女を演じたエリザベス・オルセンですが「レッドライト」にもいい役で出ておりまして、好感度ばつぐんであります。がんばれー。
そのほか「サイレント・ハウス」という映画でも主演をやっておりまして、これ何かなと思ったら、あの見事な低予算ホラー「SHOT/ショット」のハリウッドリメイクなんだとか。低予算だからこそのインパクトがあった映画を、金かけてハリウッドでリメイクとか、これはちょっとどうかと思いますが。ただ、「SHOT/ショット」では全編ひとりで頑張った素晴らしい女優の力が大きくて、あの大変な役をエリザベス・オルセンならやり遂げることが出来るであろうことは想像に難くありません。

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