エリジウム

Elysium
ニール・ブロムカンプが大傑作「第9地区」の次に撮ったSF作品。誰もが期待します。誰もがわくわくします。厭が応にも期待が膨らみます。
エリジウム

第9地区」は面白かったですよねー。あれはすんごいです。素晴らしい出来映えでした。あの名演を果たしたシャルト・コプリーも出演するし。ですので「エリジウム」をわくわくして待ちます。

しかし厭な予感もありました。いきなりマット・デイモン主演だし、製作国は今回アメリカオンリーで所謂ハリウッド大作です。

先に結論を書いておくと、厭な予感のほうが的中しました。決して悪い出来ではないのですが、「第9地区」にあった超絶個性というものがあまり感じられず、大作に埋没した感じです。この手の映画としてあまりにも当たり前な捻りのないストーリーも、登場人物のキャラ立ても、かなり若年層向けとなっておりました。

若年層向けの単純明快な娯楽SF自体はちっとも悪くないんですよ。「エリジウム」が出来の悪い映画とはまったく思いません。ちゃんとしていますし。でもどうしてもね。期待しすぎたほうが悪いんですが、「第9地区」のどういうところが気に入っていたかというのも人それぞれでしょうけど、ちょっと惜しかったかなあと。

いい描写もいろいろあるんですよ。荒廃してスラム化したL.Aとか、シャルト・コプリーの役柄的な個性とかディエゴ・ルナの役割とか。
描き方やストーリーによっては「第9地区」に近い面白さを作り出せた設定はあちらこちらに散りばめられています。でも散りばめた程度で遠慮してしまって、大筋のところでごく当たり前の娯楽大作にしてしまったんですねえ。
もちろんこれは製作の目的に沿った方針でしょうから、それ自体が気に入らないからといって評価を下げたりしてはいけません。でも好き嫌いでいうとあれです。もったいないなあ、と。個人の感想です。

この映画を気に入っている若い子たちの感想をいろいろ聞いてみると、決して筋が悪い作品でないことが判ります。
格差社会とか、放射線の恐ろしさとか、掘り下げがない描写であっても、ちゃんとそういうところを若い観客は汲み取っているように感じます。

とすれば、これはとてもよい映画であると言っていいのではないでしょうか。
「第9地区」には遠く及びませんが、対象年齢低めの娯楽活劇としてこれはこれでありです。

むさくるしいおっさんおばはんが「第9地区」の好印象を引きずったまま「エリジウム」に本気期待している場合「いやいや、たいしたことないですよ、これ」と言いますが、若い子が観ようとしてたとしたら「面白いから是非どうぞ」と言います。

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