パーフェクト・ホスト

The Perfect Host
指名手配中の男が咄嗟の嘘で逃げ込んだ住宅街の豪邸。家の主は親切にもてなしますが強盗が本性を現す頃、この家の主もまた本性を現し始め、不条理極まりない夜が始まります。
パーフェクト・ホスト

うおー。何じゃこりゃー。めっためたおもろいやんけー。

と、最後まで見終わって叫び出さずにおれないという抜群の何これ、こんなのいつやってた? 数年前にやってましたか。そんなの知りませんでしたが、まあいいです。結局観ることができましたから。

ころころ行きます。ころころ転がり、転がるだけじゃなくちゃんとその都度本気です。その都度本気なのにころころ転がります。何が転がるって、お話がです。

「師匠、面白い脚本できました」
「どれどれお貸し。ふんふん。ぎゃはー。採用っ」
というやりとりがあったかなかったか、監督・脚本のニック・トムネイやりました。スリラーファンを呑み込みおちょくったような、人を食ったような見事な脚本です。ありそうでなかったアイデアと展開に観る人全員大喜び間違いなし。

プロデューサーのステイシー・テストロは「ソウ」シリーズすべての制作総指揮をやってる人で、というか、ソウシリーズ以外は2008年の「The Tumbler」と本作「パーフェクトホスト」だけというキャリアの人ですね。テレビで女優をやってたこともあるようです。

ニック・トムネイは2001年に短編「The Host」を作っており、この短編をさらにブラッシュアップしたのが本作「パーフェクト・ホスト」なのですね。ただでさえよくできた脚本がますます練り込まれたという案配なのでしょう。

転がるストーリーはネチネチの恐怖から不条理サイコから小気味よいミステリーからこころ的犯罪者物語からクールなゲーム的駆け引きからコミカル事件簿まで、あらゆるスリラー展開の合わせ技です。
複数のネタの合わせ技は出鱈目に盛り込むのではなくて、たくさんのネタをきっちり組み立ててます。たくさんのネタを詰め込むと言えば複合スリラー、スリラーコンプレックスでありますが、他国のスリコンと違い、ワイルドアメリカ人のスリコンはさすがにめっちゃワイルドです。

何を言ってるのか観ていない人にはさっぱりわからないでしょうが、どう複合的なのかをネタバレするなんて、これから観る人の楽しみを奪うような真似はとてもできません。

the perfect host scene

でも冒頭をちょっとだけご紹介してみます。

最初は足を怪我した男ジョン・テイラーの逃走シーンからです。どうやら強盗をしてきた模様。この逃走劇の部分にすら、いろんなお楽しみを張り巡らせています。例えば足を怪我したのでお店に寄って消毒液を買おうとするとその店に強盗が現れてとばっちりを受けます。しかもその強盗は可愛子ちゃんです。しかも店主は中国人です。面白いやりとりが想像できるでしょう。

足の怪我のこともあり、どこかに潜り込んでしばらく隠れようと思い立ったのか、住宅地のおうちを訪ねます。時計仕掛けのアレックス君のようにインターフォン越しに良い青年を演じます。
「窓からエホバのステッカーが見えました。私もエホバです。強盗に遭って、どうか少しの間、家に入れてください」
「あらあなたもエホバなの。十字架をしていないわね」
「そうなんです。さっき強盗ともみあって千切れてしまい」

最初の家で失敗したジョン・テイラーは次の家に入り込む前に郵便受けのはがきを盗み見て嘘を思いつきます。
「ウォーウィックさんですね。ジュリアの友人です。さっきシドニーから来ました」
家の主ウォーウィックさんは「今夜は友人たちがディナーに来るのだが、ジュリアの友達を追い返すわけにもいかないな」と家に招き入れます。

ジュリアの友人のふりをするジョンと、ジュリアの話をしようとするウォーウィックとの駆け引きシーンでは見ているこちらのドキドキは「嘘がバレないか」という方向のドキドキです。

もう序盤のここまででも相当楽しんで観ておりますと、ついにだましきれなくなったジョン・テイラーは強盗の本性を現します「こらおっさん。命が惜しけりゃおとなしくしやがれ」
しかし同時にウォーウィックもサイコ野郎としての本性を現します。
あっという間に立場が逆転する強盗犯と家の主。さーさーここからは不条理系サイコ監禁スリラーとなってきますよ。

the perfect host scene

ホストを演じたデヴィッド・ハイド・ピアースの魅力が炸裂しています。ちょっと狙いすぎという感じの演出ではありますが、この人はとてもいい感じですね。みんなそう思いますよね。
この人は「フィッシャー・キング」のLou Rosen役だったり、「バグズ・ライフ」で声の出演したりしていたんですね。

青年を演じたのはクレイン・クロフォードで、それほど悪人顔をしていないがチンピラ的でもあって、この顔つきがストーリー的にもとても効いています。いいキャスティングです。

てなわけで冒頭だけネタバレしましたけど、そんなの気にならないくらい本編面白いので大丈夫ですよね。

全体に知的でクールなストーリー進行ですが、じっとりねっちょりサイコ監禁ホラースリラーのテイストもたっぷりあるし、主人公青年のドラマチック方面にも力を入れているし、人を突き放したようなタイプの映画ということもないのです。なにしろやることが多方向です。

ここまできたらスリコンというより多方コンです。お見事。

2011年に日本で公開してましたか。そうでしたか。

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