ビューティフル・ダイ

A Horrible Way To Die
ビューティフル・ダイ
公開年:
2010
製作国:
監督:
製作:
脚本:
撮影:
  • クリス・ヒレク
  • マーク・シェルホース
音楽:
  • ジャスパー・ジャスティス・リー
主演:
出演:

「ABC・オブ・デス」のアヒルの回の監督、若きアダム・ウィンガードによる2010年のスリラー。2011年の「サプライズ」高評価により2013年に日本で紹介された、事情を抱えるアル中治療中の女性サラを巡るドラマと殺人狂のバイオレンス。これはいい感じ。

ビューティフル・ダイ

随分久しぶりの更新でいきなりこんな映画でいいのか。と思わないでもないですが一番最近に見たんだから仕方ない。去年の夏から、下書き欄にタイトルだけ入れて感想文を書いていないのが50本くらいあるんですが果たして全部書けるのか、それはわかりません。最近、CDを出したので買ってください。

さて監督のアダム・ウィンガードは若くして才能を認められたある種の天才です。若い才能が発揮されるのはホラーやスリラーの場合が多く、この手のジャンルってのは懐が深く、いろんな可能性を秘めているんですね。

この「ビューティフル・ダイ」のあと、「サプライズ」を撮り、そしてその後は短編オムニバスの「ABC・オブ・デス」や「V/H/S」なんかに参加しています。
「ABC・オブ・デス」ではちょっとした捻りの「アヒル」を撮っていまして、この「アヒル」は26本の中でも一際光っていた作品の一つです。

「ビューティフル・ダイ」は実に好きな映画です。いい映画かどうかは知りません。私としては、たいへんに好みの一発。どういう映画かというとこういう映画です。

まず登場するのは殺人者です。殺人します。で、ちょっと個性的です。どう個性的かというと、メキシコ髭のとぼけた味わいと殺人鬼の両立です。これはなかなか新しい殺人鬼の造型です。

で、「ビューティフル・ダイ」の構成は中心人物や時間軸をちょいちょいいじります。だから序盤は何がどうなってるのか僅かに判りにくかったりします。が、すぐに合点できます。

つまりとっ捕まっていた殺人犯が逃げ出して、行く先々で殺人を繰り返す殺人狂の物語が一つあるのです。
そしてもうひとつの物語が同時に進行します。本編の主人公サラのお話です。彼女はアル中の治療セラピーに通っています。元アル中です。そして、このセラピーでひとりの青年と知り合い、少しずつ恋に落ちるのです。

このサラの物語は恋の物語として少し辛気くさい作り、つまりそれは私の好きなヨーロッパテイストの渋い系ドラマなわけですが、このサラの物語の出来はとても良いです。

殺人狂とサラの関係は物語が進行するとだんだん見えてきます。無関係じゃないのですね。何、そんなことわかりきっていたと。そうなのか。でもそうじゃない見方をしてたらもっと楽しめますよ。

脚本がたいそういいです。全体の流れ、特にクライマックスあたりなんか抜群だし、細部の細かい作りもハイセンス。恐怖とコミカルさがいい具合に融合されています。

恐怖とコミカルといえばやはりこの、殺人狂のキャラクターに尽きます。全体にはじっとりしたドラマで、怖くて大変なのですが随所に可笑しさが散りばめられています。
丁寧な口調でインテリにも見える顔も味があるし、殺人という性癖を仕方ないこととして受け止めているような素振りもあって、何とも不思議な感じです。
この殺人鬼にファンがたくさんいるというような件なども妙に面白い設定です。

この作品はたぶん金が掛かっていないはずで、そういう部分できついところもあります。例えばクローズアップとピンぼけを多様したカメラなんかは割と酔います。いいレンズやいろんなレンズが使えない中でアート臭を出そうとするとこうなります。必死です。でも嫌味はないので我慢します。

劇中使われている音楽もとてもいいです。不愉快で恐怖、かと思えばいい曲です。選曲も絶妙ですよ。

エンドクレジットでまたもやアート臭を感じます。でもちっとも青臭くありません。いい感じです。こういうの大好きです。J.T.ペティやファブリス・ドゥ・ヴェルツを彷彿とさせます。そしてただ彷彿とさせるだけじゃなく、もっとエンタメ系でメジャーに行ける底力も感じさせます。

というわけで好き好きテイスト満載の「ビューティフル・ダイ」でした。予告編がなかなか悪くないです。この映画がどんな雰囲気なのかも伝わりますし、ネタバレ的にもギリギリ押さえています。

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