ザ・イースト

The East
ザ・イースト

「アナザー・プラネット」で注目のブリット・マーリングの新作が環境テロと企業の話と聞いて大いにわくわくしていた「ザ・イースト」は悪くはないが期待しすぎは火傷の元。

ザ・イースト

綺麗で脚本書けて金を動かせるプロデューサーでもある才能豊かなブリット・マーリングは「アナザー・プラネット(アナザー・アース)」でとてもいい感じでありまして、大いに期待していたわけです。

「ザ・イースト」は日本では2013年から14年にかけてのお正月映画で大きく公開、観たい映画リストにも入れていたほどの期待作でしたが、実際の話、今ごろ書くのも何ですがまあ、その、まあ、その、えー、ではどのような映画かご紹介します。

環境テロリストのグループ「ザ・イースト」に潜入する調査会社のスパイが主人公です。美人ちゃんのブリット・マーリングです。環境テロリストはどんな活動をしているかというと、悪い企業にそれなりの制裁を加えるという、例えば冒頭ではペンキまみれにしてやったりします。

主人公女性が働くのは大企業をクライアントに持つセキュリティ会社で、顧客企業を守るためというよりに環境テロリストを調査して営業に利用しようとしています。主人公は社長さんからも信頼されておりまして、潜入スパイとしての腕前も確かです(多分そういう設定)
で、この会社なんですがグローバル大企業を顧客に持つすんごい会社って設定なんですが、その割には何だか小さくてですね、社長や主人公の器的なその、あれがですね、その、ま、その、

で、環境テログループですが、山奥に隠れ住む連中でして、ちょっとカルト教団っぽいノリです。さらにヒッピームーブメントのころのコミューンみたいな感じです。いろいろネタを混ぜています。環境テロリストをカルト教団と同一視すること自体には問題ありませんが、ヒッピーのコミューンがグローバル企業相手にテロ活動なんてのには脚本的な無理もやっぱりあります。
それにちょっとその、このグループの人たちがですね、あまりにもその、ま、その、ま、その、

冒頭のペンキまみれはとてもいいと思います。で、本編には他の環境テロが描かれます。ひとつは製薬会社のアレ、もうひとつは工場排水を垂れ流すアレです。
周到な準備を行って製薬会社のパーティで何をするかというと、これがあまりにも稚拙、あまりにも幼稚なアレでして、そしてさらにその顛末などもう観ておられないほど安っぽいのはどういうことでしょう。大量に売りさばいてる悪い薬はいいんですよ、その悪い薬の症状がですね、あんなに露骨に出るなんて、それってあまりにも、その、まあ、その、
もう一つはさらに小さいです。工場排水を垂れ流す社長さんと広報のおばちゃんという、もう「グローバル大企業」というネタはどこかの町工場のレベルに縮みましたか? いえ、大工場かもしれませんね、それはいいとして、あの社長さんですけど、あれしますか、結局、あれしますね、アレではわからんでしょうけど、まあ、その、さほどのものでは、その、ま、その、

さて我らがエレン・ペイジが出演していますのでこちらも期待に胸膨らみます。さすがに演技は抜きん出ています。でも役割的にやや一本調子なキャラクターでした。これも少し残念です。少しだけね。

グローバル企業の悪徳や環境テログループ、セキュリティ会社のスパイ、面白そうなネタは揃ってるんですがそれらがちょっと大きすぎて扱い損ねた感じです。なんせ話が小さいし、あまりにも印象だけで作られた感じが微笑ましいです。例えばときどき映画で金持ちや資産家やビジネスマンが出てきたりしますが、一部の作品ではこの「印象としての金持ち像」がものすごく想像力の足りない小粒な感じだったりします。本作もまさにその系統です。

話の大筋は決して悪くないですよ、念のため。実はこの映画の骨子、重要なストーリーというのは環境テロでも大企業でもなく、ヒッピーコミューンに入り込んだミイラ取りの恋のお話です。
青臭い社会正義の多くが恋とセットになっているのは60年代から何も変わりません。本作ではそこを外さずに、きちっと少女小説のように作っていますので、そこんところを正しく観ると他の設定の稚拙な部分など気にならなくなります。なりますか。

監督のザル・バトマングリッジはカルト教団をテーマにした映画で注目された方だそうです。「Sound of My Voice」がどのような映画か知りませんが、どうなんでしょうね。演出家としての腕前は確かですよ。全然悪くありません。

ブリット・マーリングは「アナザー・プラネット」でとても良い仕事しました。今回はちょっと気負いすぎましたか?
でもよくよく思い出すと「アナザー・プラネット」も乙女心のうじうじしたところをしつこく描いたり、恋のシーンで変なのこぎり演奏を持ってきたり、妙な部分がありました。あれ観たときはてっきり「そのあたりは失敗だったな」と反省していると思っていましたが実際は反省していなくて、まさにうじうじと恋のシーンを強調したかのような新作を引っさげてしましました。つまりブリットちゃんはそういうのが好きなのです。彼女の個性はそういう部分にあるのです。
うむ。納得してきた。

「ザ・イースト」は細部のすべてが幼稚ですが全体として悪くないです。オチのつけ方などは寧ろとてもよろしいです。個人的には好意を持って観るような作品ですのであまり貶したくはありません。決して貶しません(すでに十分貶してるような...)

「アナザー・プラネット」は未知の惑星が出現するSFですが、実際のところは交通事故を起こした女性の後悔の物語でした。
「ザ・イースト」は環境とかグローバル企業とか出てきますが、実際のところ妙なコミューンに嵌まり込んで恋に溺れる女性のチェンジ物語でした。
本稿の批判が如何に的外れなものだったか今自覚しました。
そんなわけで次作も引き続き期待。

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