MAMA

Mama
精神状態の悪い父親が幼い姉妹を雪深い山小屋へ連れて行って放置、その後の娘たちがどう育ったか。新人アンディ・ムスキエティの短編をギレルモ・デル・トロが気に入り、製作総指揮で長編映画化したホラーファンタジー。
MAMA

アルゼンチンの新人アンディ・ムスキエティ監督の短編がギレルモ・デル・トロの目に止まりハリウッドで長編映画化されたというドリーマーな作品。きっと短編の出来が良かったんでしょうし才能も間違いないと思います。でもギレルモ・デル・トロ製作総指揮の元、プロのスタッフがよってたかって良い作品に仕立て上げたのもまた間違いないでしょう。熟練の完成度です。

さてお話ですが、冒頭がプロローグといいますか、精神状態の悪い父親が姉妹を連れて山奥に行くところからです。車の後部座敷で不安そうな娘たち。「パパ、スピード出しすぎよ」「うるさいっ」事故ります。
車から降り、山小屋を見つけて入り込む親子3人。父親に何があったのか分かりませんが相当良くない状態です。この男危なそう、姉妹が危なそう、と思っていると突然あわわ。

とてもよい冒頭プロローグです。映画が始まり、オープニングを終えるといきなり「5年後」。幼い姉妹の5年間の不憫を想像して泣きそうになっていると本編が始まります。
娘と共に姿を消した兄貴を探している冒頭父親の弟ルーカス(ニコライ・コスター=ワルドー)です。ロックミュージシャンの彼女アナベル(ジェシカ・チャスティン)と暮らしています。
5年間、親の財産か何か知りませんが金使って探し続けた結果、兄貴の娘二人が山小屋で発見されます。動物に育てられたのか、幼すぎた妹のほうはほとんど野生児。お姉ちゃんのほうは人間味を保っています。
娘たちを引き取る主人公カップル。娘たちの変な挙動と共に、怪奇現象に見舞われることになります。

というようなストーリー。山小屋に放置された幼い娘ふたりは自分たちだけで生き延びたのか、動物に育てられたのか、動物ではない何かに育てられたのか、姉は心にママの別人格を作り上げたのか、みたいな、そういう話です。

良く出来ているのはまず映画全体。映画そのもの、撮影とか編集とか尺とか演技とかそういうのですね、完成度がとても高いです。
幼い娘二人もとてもいいです。ややしっかりしたお姉ちゃんと野生児の妹。この映画は明確にちびっ子映画と言って良いほどです。
ロックミュージシャンアナベルの役柄と役割と演技してる女優さんも、これがまたいいです。この手のお話でこの手の役割を担っているのが家庭的で女性らしいヒロインではなくちょっと厳つい風貌のロックミュージシャンっていう、これが斬新です。ちょっと冷たいところもありますが心はホット。彼氏の兄貴の子供たちという、言ってみれば関係ない子供たちの面倒を見る羽目になって、さらに何だか恐ろしい目にも遭ってしまい、さらには姉妹に母性を感じていきますね。娘のほうも、だんだんアナベルが気に入ってきます。アナベルと娘二人が少しずつ心通わせ始める展開に陳腐さなんてありません。愛ですね、愛。

ホラー要素を含めながらも、本編はずっと地味なドラマが続きます。地味と言っては何ですが、大きな破綻もなくぶっ飛び馬鹿みたいな展開にもならず、大人の鑑賞に耐える優れた作品の形相を帯びています。ミステリー的な進行もあります。時々登場する幻想的なシーンがこれまた大変良く出来ていまして、かつての中田秀夫作品を彷彿とさせます。
そんなこんなでとてもいいんですね。レベル高いなーと感心しながら観ます。

最後のほうになるに従ってずばばーんとはじけてしまって、地味なドラマがファンタジー巨編へと大変貌。派手さも出てきます。クライマックスはあまりにも唐突な展開で、観た当時はこれに少々がっかりしました。同じテイストで終えてほしかったなーと。今思い出すと、この手の映画としてこれはこれでありかもしれません。

ダークファンタジーはお手の物、ギレルモ・デル・トロらしさがやっぱり全面に出ているように見受けられますし、安っぽいハッピーエンドじゃないところなど、とてもいいと思います。

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