ブリキの太鼓

Die Blechtrommel
じゃがいも畑での祖母の妊娠から自分の誕生、戦争の遍歴、少女とのエロティシズム、ドイツの作家ギュンダー・グラスの長編小説を映画化。
ブリキの太鼓

この世に「歴史的名作映画」はたくさんあります。文字通り映画史に特別な1ページを刻んだ作品たちですね。例えば、。。例えばはやめときましょ。野暮ですから。
それとは別に「個人的映画史」に名を残す名作映画というのもあります。個人史に特別な影響を与えた映画です。誰しもが何らかの映画に対してこういう特別な思い込みがあるものですよね。
そして、客観的な「映画史上に残る名作」と主観的な「個人史上に残る名作」の、両方のカテゴリに含まれる素晴らしい映画というものもあります。
ここまで来ればもはや冷静な判断が出来ないほどの大傑作映画ということになります。

そのひとつがこの「ブリキの太鼓」です。

ですからこの映画について何かを語るとか、そういう生意気なことはとても出来そうにありません。
1979年度カンヌでパルム・ドール、アカデミー外国語映画賞を受賞。しかし受賞などはこの映画の偉大さの前では何でもないこと。

何度目かの再見。初めて観たときの衝撃は少しも衰えず、何度観ても素晴らしいの一言。他に言うべき言葉も見当たらずです。失礼しました。

1998.07.28

なんとなく間抜けな感想文に追加してみますが。

ジャガイモ畑の祖母の妊娠に始まり、自分の生まれる前から、ナチスに呑み込まれるまでのポーランドでの半生を振り返り語るオスカルです。3歳の誕生日に自ら成長を止め、ブリキの太鼓を叩き奇声を発してガラスを割ります。
登場人物たちは時代が産み落とした不愉快で奇異なキャラクター、エロスとグロテスクに満ちていて、濁流のようにストーリーが進みます。

原作の小説は三部作の最初の作品だそうで、精神病院にいるオスカルが半生を振り返るというものだそうです。映画では精神病院のシーンを描かず、普通に特異な物語として突き進みます。精神病院シーンの割愛は見事な判断だと思います。精神病患者が振り返っていることを示してしまえば、単なるそういう話で終わってしまっていたことでしょう。
研ぎ澄まされた脚本は主に監督フォルカー・シュレンドルフと巨匠ジャン=クロード・カリエールによるもので、この人たちの仕事は神懸かっております。

この映画に多大な貢献をしたダーヴィット・ベネントは1966年スイス生まれで、「ブリキの太鼓」のオスカル役は11歳のときのようです。こんな特別な子役はかつてありません。今後もないでしょう。本当の年齢はいくつなのか、そもそも本当に実在するのか、なんて思ってしまうほどの怪演を見せます。
「ブリキの太鼓」以降はいくつかの映画やテレビに出演、2013年には「Michael Kohlhaas」なる映画にも出演します。よかった。ちゃんとした大人俳優になっておられます。

語り口といい出来事といい物語といい構成といい映像といい音楽や音響といい、何もかもがずば抜けた力に満ちています。人類が産み落とした奇跡の作品。生涯に出会える大絶賛大好物大傑作のうちのひとつでございます。

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