イタリアは呼んでいる

The Trip to Italy
だらだらした会話、おっさんの冗談、しつこい物真似に乗せて美味しい料理と素敵なホテル、美しい景色を堪能する男二人のイタリアグルメ旅行「イタリアは呼んでいる」はマイケル・ウィンターボトム監督の虚実入り交じったコミカル奇妙な作品。
イタリアは呼んでいる

役者とレポーターであるスティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンのふたりはグルメ旅行のレポートという仕事を依頼され、二人してイタリアの旅を行います。役者とレポーターというのは映画の設定で、実際はこの二人はイギリスの人気コメディアンです。でも実名で登場して役を演じます。ドライブしながらレストランやホテルを訪ねて、その間いろいろな会話を行います。お芝居を演じてるのか素でやっているのか観ていてもよくわからない状態でのグルメレポートです。

マイケル・ウィンターボトム監督はいろいろな実験的作風を駆使するアーティスティックな監督かと思いきや、実はあっちこっちに手を出すポップな監督でもあるようで、この「イタリアが呼んでいる」もテレビのレポート番組のような、レポート番組のパロディのような、そういう変な作風ですが決して実験的というようなテイストでもなく極めて気軽な力の抜けた作風です。

おっさん二人の悪のりした饒舌が面白くて、いい意味でだらだらした旅行を堪能できます。やたらいいホテルに泊まったり、景色の美しいところを通ったり、おいしそうな料理を食べたりしますが、ことさらそれらを強調した演出なわけでもなく、寧ろグルメレポートにしては全然グルメをレポートしなかったりして「何ですのん、この映画は、いったい何ですのん?」とちょっと不思議な感覚に捕らわれたりします。

くどくどと料理を撮ったり解説したりはしないんですが、とても短く料理のシーンが随所に挟まれます。これがたいへん鋭い描写なんです。こういうところに監督の実力が垣間見れます。ほんのわずかな厨房シーン、盛りつけシーンが出てきて、そのあまりにも鋭いショットに「うおっ」って身を乗り出す羽目になります。こうしたシーンのビシっとしたハマり方がメリハリとなります。

イタリアを南下する旅のようです。最初は庶民とは無縁なゴージャスなレストランが出てきますが、南下するに従って庶民的なレストランに変化していったりしますね。南下するに従い、観ているこちらが何だかちょっと嬉しくなったりするのは体に染みついた庶民感覚のなせる技です。

「イタリアは呼んでいる」は、「スティーヴとロブのグルメトリップ」(2010)の続編というか第二弾で、「グルメトリップ」のほうはスティーヴとロブがイギリスのグルメ旅行をする映画なんですって。ふたりの役柄も今作と同じなんでしょうか。

だらだらした会話、スターの物真似、映画ネタ、レストランにホテル、ミニクーパーのドライブ、そして景色、気軽に楽しめる一本です。気軽に楽しみながら、いつしかスティーヴとロブの魅力にも惹かれ、旅に心を満たされます。
このような映画も作るマイケル・ウィンターボトムはすでに巨匠に近い存在。不思議な監督ですね。

ということでここで感想終わりなんですが、ですがこの話には続きがあるんです。
イタリア旅行のこの映画、テラスから風景を見下ろすレストラン、丘を走るドライブ、いろんなシーンが詰まっています。印象にも残りますね。この「イタリアは呼んでいる」の後、マイケル・ウィンターボトム新作!と銘打って一本の映画が日本で公開されました。「天使が消えた街」です。へえ。続けざまに撮ってるのか、監督精力的だな、と思ってたんですが、「イタリアは呼んでいる」も「天使が消えた街」も両方2014年の同じ年に公開されています。で、「天使が消えた街」っていうのは、イタリアで起きた殺人事件に関する映画でして、そうです、イタリアロケです。

イタリアロケ・・・!

情報を漁ったわけではありませんが、多分イタリアロケのこの二本は関係がありますよね。ロケハンを兼ねていたのかもしれないし、もしかしたら同時期に撮影したのかもしれません。

ただでさえ「天使が消えた街」は観るつもりでしたが、このロケ関連ネタに気づいてしまってはもうどうにもなりません。楽しみでわくわくします。

・・・「天使が消えた街」に続く

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