イット・フォローズ

It Follows
イット・フォローズ
公開年:
2014
製作国:
監督:
脚本:
撮影:
音楽:
  • ディザスターピース
美術:
  • マイケル・T・ペリー
主演:
出演:
  • キーア・ギルクリスト
  • ダニエル・ゾヴァット
  • ジェイク・ウィアリー
  • オリヴィア・ルッカルディ
  • リリー・セーペ

感染者にしか見えない「それ」がじわじわと追ってくるという悪夢っぽいホラー要素に性と青春要素を絡めた現代的なニュータイプ青春ホラー映画にて大ヒットの2014年「イット・フォローズ」で甘酸っぱい恋と恐怖をご堪能。

イット・フォローズ

冒頭は何かから逃げ惑い追い詰められる女性のシーンからです。一瞬あほみたいな女の子にも見えますが逃げたあげくにパパに電話して愛情を伝えまして、決してあほみたいな子ではないとわかりますし、この映画が恐怖の種類として単純なワーワーギャーギャー系ではないこともわかります。

「それ」につきまとわれ追われる系です。「それ」はいろんな人の姿で現れ追ってきます。で、感染系です。感染した者だけを追い、感染者にしか姿が見えません。どうやって感染するかというとセックスによるというユニークな設定となっております。
セックスして呪い(?)を「うつす」ことによって変身透明人間のターゲットが変更されます。もし逃げることに失敗したら惨殺され、「それ」は感染元に返ってきます。したがって、感染させたら「ちゃんと逃げて生き延びて、一刻も早く誰かとセックスしてうつすんだ」と伝える必要があります。
ほとんどギャグのような設定ですね。

しかしながら「イット・フォローズ」ではこのギャグめいた設定をちゃんとまじめに青春ホラー映画としてまとめ上げています。ここがまずやり遂げた感あります。

追ってくる「それ」はいろんな人の姿です。人以外の姿ではありません。全裸の不気味な人だったり感染者の知人にもなります。この「それ」は感染者にしか見えないという設定ですが、ここをもう少し突き詰めるとさらに面白い特徴が見て取れます。

まず怨霊や霊魂のたぐいではありません。感染者にしか見えないからついうっかり霊的な存在のように思いがちですがちゃんと実体を伴ってるんですね。だからこれ、じつは透明人間なんです。姿を変えますから変身する透明人間ですね。これが何かね、ちょっと個性的で面白いんです。さらにですね、この変身透明人間はですね、ゾンビのようにのろのろと歩くんですが、決して頭が悪いわけではないという設定が付加されています。ついうっかりね、アホに見えるんですよ。のろのろしてますから。でも賢いんです。ドアに鍵がかかっていたら石を投げて窓を割ってそこから侵入します。この賢さがクライマックスで効いてきますよ。なんせね、ポール君という登場人物が居るんですが、彼の思いついた作戦がね・・・おっと何も言うまい。

いろんな変身する「それ」ですが、その中で個人的に気に入ったのは背の高い男です。もうあの背の高い男がぬぼーっと現れるシーンは最高です。あのシーンすばらしいです。

青春映画の側面から観てみますと、20歳前くらいの子たちの物語です。親を含め、大人はあまり登場しません。性交によって感染するという設定が甘酸っぱい青春映画にぴったりはまります。ワーワー系のホラー映画と違い、この映画の若者たちはとてもまじめないい子たちです。性的にもあまり乱れていません。だからこそ性交によって感染する設定が効いてくるんです。

序盤、主人公の女の子が感染することになるシーンの直後にとても印象に残るシーンがあります。新しい彼氏と初めてセックスして楽しくてうきうきしている女の子です。車のドアから身を乗り出し地面の雑草を愛で「子供の頃から憧れだったことがあるんだ」などと少女語りを始めます。とってもかわいいシーンです。でも直後、この子に悪夢が降りかかります。もうほんとにね、そういう映画をわざわざ見に来てるのに「こらおんどれ、こんなかわいい子に何という酷いことをしてこましとんねんボケカス」と思わず怒りモード発動ですよ。思い出してもあのシーンの可哀想感は絶大です。

主人公が「それ」に追われて可哀想なので男友達が助けようとします。助ける方法はセックスすることです。これいいですね、この設定。ちょっとおとなしいポール君の淡い恋心で胸がきゅんとなりますよ。

青春映画にぴったりフィットのカメラワークも特徴的です。あともう一つ、音もいいです。音楽はやや古くさく懐かしい感じすら受けるシンセサイザーの安っぽいメロディ、そして時々効果的に発動する大音響のBGMは威力抜群です。こればかりは自宅では味わえません。きれいな映像は自宅でも味わえますが大音響だけは無理です。音は空気の振動、五臓六腑に染み渡る波ですわな。

今時の世相もよく現れています。家に簡易なプールがあったり、金持ちの子ばかり登場しますが金持ち感はあまりありません。これはたぶん「親がかつて金持ちだった」という設定かもしれません。映画の最後の方には住宅地から荒廃した町に移動します。この荒廃感はデトロイトっぽい、と思っていたらデトロイトでロケしたそうです。かつて繁栄した資本主義の終焉、滅んだ町のすぐ近くに住む未来の感じられない若者たちの状況が痛々しいのです。

クライマックスの格闘シーンだけはちょっとギャグ入ってます。若い子たちがスーツケースに秘密兵器を携えて挑むわけですが、鞄からいろんなものが次々に出てきて、挙げ句の果てにはテレビや電気スタンドやら四次元ポケットのような状況に笑えます。誰も笑ってなかったけど。

というわけでですね、「リング」の家族愛の部分を青春に置き換えたかのような、一歩間違えればギャグにしかならないような設定をきっちり消化させていい物語を作りました。

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は「アメリカン・スリープオーバー」(2010)という映画でデビューして受賞歴もあり「イット・フォローズ」ではカンヌで評価もされ一躍時の人、才能ありと注目されているそうです。

主人公ジェイを演じたのは「ザ・ゲスト」(アダム・ウィンガード/2014)でがんばりお姉ちゃんを熱演して印象的だったマイカ・モンローです。自然な女の子に見えるけど実は演技もしっかりできるしよく見たら美貌でもあるというなかなかの女優さんですね。「ザ・ゲスト」と「イット・フォローズ」は同じ2014年の映画で、良い仕事が出来た当たり年になったのではないでしょうか。

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