私の中のあなた

My Sister's Keeper
難病の姉に臓器を提供するため生まれてきた妹が我が身を守るため両親を訴える。
私の中のあなた

と、いう冒頭です。登場人物それぞれの独白からスタートし、妹の理知的な独白の中で設定と物語のスタートが語られます。

 

まず最初に、臓器提供のために妹を作るという信じ難い行為をストーリーとして受け入れられるかどうかが最初の難関ですね。五臓六腑どころか髪や爪にまで魂が宿っていると考える日本人には難しいかもしれません。
ま、しかしそこは妹アナ役の抜群キャラクターで何とかカバー。

お姉ちゃんに臓器提供するために生まれてきた妹アナは、我が身を守るため、両親を相手取って裁判を起こします。思わず前のめりになるいい設定ですよね。このアイデアと、妹アナの可愛らしくもシャンとした姿に期待度たっぷりに見始めます。

で、どんな面白い裁判が展開するのかと思いきや、妹の起こす裁判は物語の中ではあまり大きなウエイトを占めません。ほとんどが姉ケイトと母親を中心とする家族と病気の物語です。キラキラする情感たっぷりシーンはMTVのようにしつこく、肝心の裁判シーンはナレーションでさっと流す という、そんな映画になっていきます。冒頭のわくわく感はいつの間にか置き去りですね。このベタな作りは、そうです、少女漫画にとても似ています。

「私の中のあなた」は、臓器移植の問題に奥深く切り込んだ社会派映画でもないし、ちびっ子が両親相手に裁判を起こす話がメインのコミカル斬新映画でもありません。情感たっぷりに描く病気と心、家族と思いやりの泣き泣きドラマでした。

ケイト役のソフィア・ヴァジリーヴァとアナ役のアビゲイル・ブレスリンの二人の少女による反則の泣かせ攻撃はヒットしまくり。どんなにベタだろうが、どんなにしつこかろうが、嫌らしいほどに感情的だろうが、そんなのわかっていてもですね、もう無理ってほど泣かされます。これは人として仕方ありません。

だから多分この映画はよく出来ています。泣かせる話は他にもよくありますが、それほど出来のよくない映画だとやっぱり馬鹿らしくて泣けてなんかきませんからね。悔しいけどちゃんと感情移入できました。なんだとムサいおっさんが少女に感情移入してキモすぎてひっくり返るだと。ごめんね。

しかしこの映画のエンディングはいけません。物語の終わりのあと、「その後」みたいな蛇足のエンディング が付いてくるんですが、あれがほんとに蛇足です。全てをぶち壊します。やや抑え気味だった少女漫画節もおおっぴらに全開で、どうにもばからしい後日談です。ああいうシーンはどうでしょうね。ああいうの、好きな人もいるのかなあ。私はだめでした。流れた涙も一瞬にして乾燥、今まで泣いてたのに急に映画の全てが馬鹿らしくなります。

そういえば豪邸に暮らして高額医療を受けまくりの少女漫画的金持ち一家とその取り巻きの善人どものつまらん映画だったよなっ、などとブラック部分がむくむくと起き上がってきて、あら探しというかいちゃもんをつけ始めたりしますが、これはもちろん私の性根が腐ってるからですので、心の優しいみなさまは決してそのようなことにはなりません。

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