エレンディラ

Eréndira
エレンディラ
公開年:
1983
製作国:
監督:
脚本:
主演:
出演:
  • ミシェル・ロンズデール
  • オリヴァー・ウエイエ

おばあちゃんと豪邸に暮らして女中のような扱いを受けているエレンディラは、過労と睡眠不足でうっかり火事を出してしまい豪邸は丸焼け、「この損害は計り知れないよ」と、おばあちゃんはエレンディラに売春で金を稼がせます。
ガルシア・マルケスの短編を映画化。美しく儚く強い少女エレンディラの物語。マジックリアリズムの大傑作。

エレンディラ

DVD化もされずに世の中から忘れ去られようとしている名作「エレンディラ」です。
ロードショーで見たときはあまりの美しさに眩暈を起こしかけたこの名作、映画のすべてに惚れ込んで腰を抜かすほど感動したのも今は昔。
今見ようと思ったらビデオを探してくるしかないのでとても残念です。ビデオの画質はさすがに悪いです。
で、遅れてきたキャプチャマイブームに乗じて取り込んでデータ化しておきました。
違法とか著作権とかそういうのは知らん。悔しかったらDVDで出せ。
そんなわけでデータ化のついでに未見の映画部奥様にご覧いただくため上映会を執り行いまして、何度目かの再見です。画質の悪さは残念ですが、その内容のすばらしさはいつ見てもパーフェクト。
優れた芸術作品との出会いは奇跡的な出来事だと思っています。「エレンディラ」は自分にとってそうした奇跡の一つです。

原作は言わずと知れたガブリエル・ガルシア=マルケスの「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」で、ご本人が脚本を書いているため映画のシナリオも完璧です。字幕でしか読めないので細かなニュアンスはわからないにしてもその言葉の美しさに息をのみます。
例えば「また眠りながら歩いていたよ」とか、美少年が登場してその美しさが天使のようだと感じる祖母は開口一番「あんた、翼はどこへやったの?」とか、「ガラスに触ると色が変わってしまうようになった」と告白する息子に「恋をしている証拠だよ」と答える母とか。
言葉に物語と詩と命が宿っています。

ガルシア・マルケスがノーベル文学賞を受賞したおかげと、筒井康隆がラテン文学に惚れ込んであちらこちらに紹介しまくってくれたおかげで一時期ラテン文学大ブームとなり、貴重な作品がたくさん翻訳され出版されました。まことにありがたいブームだったのであり、あのときたくさんのラテン文学に触れられて本当にラッキーでした。ガルシア・マルケスは特に素晴らしい作品が多くて、彼の描く世界に私も滅茶苦茶傾倒したものです。

マジックリアリズムの文学は映画とも相性がいいです。リアリティの中に織り交ぜたファンタジー要素はクリエーターの心をくすぐりまくるはずです。近年の映画にはラテン文学から生じたマジックリアリズムの技法を一部利用した作風も、特にヨーロッパの映画に多いですよね。

そんなわけでこの「エレンディラ」は作家本人の完璧シナリオに沿って作られたラテン文学マジックリアリズム映画のナンバーワン正統映画です(Movie Booによる評価)

エレンディラ役のオハナちゃんは超スーパー可愛いし、イレーネ・パパスの演技たるや壮絶なまでに見事。
脇の登場人物も超個性的で印象に残るし、土地そのものも魅力だし、映像は芸術的に美しいし、物語は魅力的だし、音楽は最高だし、リアリティあれば幻想あり少女あり老女あり売春ありキャンプのバザーあり旅あり恋いありホラー要素あり残虐あり、もう映画のすべてがここにあります。特にラストシーンのモノローグの格好良さったら、一生忘れません。

迂闊には言えませんが、もしかしたらこの世で観た映画の中で一番好きな作品かもしれないとマジで思ったりしているんです。
お勧めしてもお勧めしてもし足りないぐらいですが、悲しいかなビデオを見つけるしか鑑賞の手段がないのですね。
残念すぎます。

2009.08.01

ガルシア・マルケス原作の映画は「エレンディラ」のあといくつも作られています。
「予告された殺人の記録」「大きな翼を持った老人」つい最近の「コレラの時代の愛」などですが、いずれも脚本は別の手による作品で、クレジットは「原作」にすぎません。
本人が脚本も担当した作品だと「ローマの奇蹟」(1988)があります。これは原案・脚本での参加で、ぜひ見たかったんですが叶わず。
「公園からの手紙」(1988)にもシナリオで参加しています。
いずれも今観ることは困難の極みですね。

1984年に「百年の孤独」を原案にしたらしい「さらば箱舟」という寺山修司の遺作があります。82年に作ってましたがクレームが入り(原作の許可を得ずに勝手に作ったらしい)公開が延期されたのだとか。寺山作品としてはどうかしりませんが、ガルシア・マルケスの映画化としてはお話になるレベルでなさそうです。未見ですが。

ヤケクソで動画貼ってやる。予告編というか、わしが作った抜粋というか。

Why no DVD?

しかしなぜ「エレンディラ」のような名画がDVD化されないのでしょう。VHSでは出てたのに。
権利の問題か、フィルムが失われたのか、どうなんでしょう。
もしかしたら、これは想像ですが、もしかしたら少女売春の話だから?少女ヌードが出てるから?芸術が世界レベルのキモい社会道徳に殺された例なのか。
いや、思い過ごしと思いたい。

[追記2014.04.18]
ガブリエル・ガルシア=マルケスが死去しました。87歳。3月に肺感染症などで入院、4月に自宅療養に切り替え、メキシコの自宅でなくなりました。

「エレンディラ」への11件のフィードバック

  1. 只今、「ERENDIRA」鑑賞休憩中。youtubeです。
    私がこの作品を観るのは、二度目。以前、ケーブルテレビでやっていました。悲惨ですが、美しさとノスタルジックさが解け合い、まか不思議な世界観がありますね。そういえば、スペインの映画に、母親が10才くらいの少女をこき使い、しまいには、家に帰らなければならず、走り出した貨物列車から仕方なく飛び降りて、頭を強打して亡くなる悲惨なのがありました。村の人々は、少女の亡がらに涙していたのを覚えています。その映画を今回、思い出しました。
    これから、続きを鑑賞します…….。

    1. 悲惨な話ですが童話っぽいのですね。最後のモノローグもカッコいいし。
      綺麗な大画面で見れればいいんですが、もう叶わぬことになったのかもしれませんねえ

  2. 私も「エレンディラ」を探し求めているひとりです。私の人生を変えた映画が「エレンディラ」とフェルナンド・E・ソラナスの「タンゴ ガルデルの亡命」でした。あとは「カラスの飼育」か。その中で「エレンディラ」だけがDVD化されていません。

    お願いがあるのですが、DVDを私にも観せていただけないでしょうか?
    改めて(ちょっとだけ)大きな画面で観たいと思っています。

    もしお願いできるのであれば、メアドにお返事下さい。

    よろしくお願いいたします。

    1. おかださま。コメントありがとうございます。メールします。@mac.comアドレスから送りますのでチェックしておいてください。

  3. はじめまして。
    『エレンディラ』の検索をしていてこちらのページに辿りついた者です。

    この映画はずいぶん昔に(たぶん20年ちかく前だと思います)TVの深夜放送で一度観ただけなのですが、そのときのなんとも言えない雰囲気が忘れられず、時折ふとしたことで思い出すような、そんな作品になっていました(それ以来、映画のほうは観ていないのですが、蜷川幸雄の舞台は8年前に観に行きました)。

    ずっと「そのうちDVD化されるだろう」と思って待っていたのですが、そうこうしているうちに、いつの間にか古いVHSすら高値で入手困難になっているわ、そもそもVHSの再生機器自体がもう既に手元にないわで、ほとんど諦めかけておりました。

    ちょっと曖昧な言い方になってしまい申し訳ございませんが、もし可能なら、私も上の方と同様のお願いができないかと思い、書き込みをさせていただきました。
    気が向かれましたらメールをいただけると嬉しいです。

    突然の不躾なお願い、失礼いたしました。

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