ナイトライト

Nightlight
「ナイトライト 死霊灯」という映画がありました。「ライト/オフ」とは関係ありません。志の高い映画であると強く感じます。感じますが志のところまで到達しているのかというと、それはどうでしょう。若者たちが夜の森で恐ろしい目に遭うというお話です。
ナイトライト

てっきり「ライト/オフ」の人気にあやかったパチモンの邦題を付けられた小品かと思ったんですがそうではなく原題も「NIGHTLIGHT」です。2015年のアメリカ映画で、「ライト/オフ」より先に作られた映画ですね。パチモン扱いしてすいませんでした。

DVDのカバーアートにはでかでかと「ソウ」だの「パラノーマル」だのと書かれています。こういうふうに煽る宣伝をよく目にしますが、それは大抵の場合ジェームズ・ワンとかジェイソン・ブラム関連の映画であることが多いんですね。もしそうなら面白さは保証付きです。

ですがこの映画は「スタッフが」とありますね。こういうのもよく見かけます。「のスタッフ」が悪いとは全然言いません。「のスタッフ」がんばりました。応援したいですね。

あらすじ

若者たちが夜の森で遊んでいて恐ろしい目に遭います。

見どころ

さてこの「ナイトライト」が素晴らしいところですが、ひとつあります。それはこの映画のアイデアです。

このアイデアを思いついたとき、監督・脚本のスコットとブライアンは「かつてないアイデアだ!」と勝ち誇ったかもしれません。勝ち誇ってもいいです。実際、このアイデアはかつてありません。

そのアイデアが何か。それをバラすとこの映画からいいところがなくなりますので避けたいところです。とはいえ、それはオチであるとか、クライマックスで明らかにされるとか、そういうのではなくて、映画開始7分以内に誰の目にも明らかになります。だから別に隠す必要はありません。ですので書きますか。

かつてない斬新なアイデアのP.O.V

この映画は POV です。所謂主観視点ですね。カメラで撮影したその映像とか防犯カメラの映像とか、そういう目線で描く技法です。それ自体は最早誰も驚かない手法ですが「ナイトライト」ではPOVの新しいアイデアを思いつきました。それは、カメラの視点ではない別の視点によるPOVです。別の視点とは何か。何と懐中電灯の目線です。

必然としての照明目線

3Dソフトを弄っていると、カメラの位置よりずっと苦労するものがあります。照明です。照明には点光源とスポットライトがあって、ソフトよってはスポットライトに専用編集画面があります。

カメラを設置したら「カメラ目線画面」というのがあるのと同じように「スポットライト目線」の画面ですね。そういうのがあります。スポットライト目線の編集画面でスポットライトを移動させると、カメラ画面と同じような見えかたをします。

こういう作業を日常的にやっていると、カメラと照明を同じようなものとして認識してしまいます。そしてやがて「カメラ目線の映画があるなら、照明目線の映画があってもいいじゃないか!」とアイデアが閃きます。

というようないきさつからアイデアが生まれたかどうかは全く知りませんが、どう閃いたかは関係なくて、閃いてから実際にその技法で一本映画を作っちゃいましたということが重要です。

高次を目指す志

一つのアイデアでホラー映画を撮りましたが、ただワンアイデアのつまらない映画ではありません。

監督たちが目指したのは映画全体を包む雰囲気です。この映画はかなりの低予算映画と見受けられますが、低予算を生かした優れた映画作りをしようとした形跡があります。

リアリズム系心に突き刺さるナチュラルドラマ

これを目指したと思われます。随所にそういう感じの演出が見られました。決定的にその傾向が見られるのはエンドクレジットです。

エンドクレジットが無音です。

エンドクレジットが無音と言えば、いくつかの優れた映画を思い出します。いずれもリアリティ系、辛い系、ナチュラルなドラマ系、尾を引く系、心に突き刺さる系の名作群ですね。無音のエンドクレジットを見つめながら胸騒ぎと衝撃で固まってしまうという名作群です。そういうのがあります。そんでもって「ナイトライト」はそれを目指しました。

上手く出来たかどうかはおなぐさみ

ということで、新しいアイデアと高い志で作られたことはビシビシ伝わる「ナイトライト」です。伝わりますが、上手く出来たかどうかは別の問題です。上手く出来たかどうか、この場で言及を避けておきます。大丈夫、上手くいかなくてもその志を買った。高見を目指すのはいいことだ。がんばれ。

と、そんな感じで、ちょっとだるい映画ではありますが若手のがんばりが好きなので問題ありません。よしとします。

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