生きる

生きる
黒澤明監督1952年の「生きる」です。名作すぎて何も言うことありません。
生きる

黒沢映画未経験で、とりあえず三本観てみましょうか、ってなったとき選ばれる作品はどれか。私的には「羅生門」「七人の侍」そして「生きる」の三本です。

「羅生門」は寓意に満ちた実験的藝術的叙情的映画の最高峰、「七人の侍」は娯楽アクション巨編の最高峰、そしてこの「生きる」は小粒ながらひとりの人間を描ききる泣けるドラマ部門の最高峰という個人的見解からです。
もうひとつ、私にとっての黒沢作品といえば、三船敏郎より志村喬なんです。志村喬を心ゆくまで堪能できる「生きる」です。

みなさんなら黒沢未体験者に3本薦めるとすればどれになりますか。

と、そんなわけで「生きる」は、コミカルな冒頭から徐々に深刻さが増していく所謂ヒューマニズムドラマで、役所勤めのひとりのおじさんを追います。

癌の宣告が死の宣告と等しかった時代です。また、患者に告知しないことが美徳とされていた時代でもあります。今では胃癌と宣告されても早期なら直ってしまったりします。そのため、設定部分については、今観るならば時代を考慮してあげる必要があります。

「最も泣いた映画は何ですか」と訊かれれば、未だに何をさておいてもダントツにこの映画が挙がります。

志村喬の威力が最高に発揮された一本、志村喬の全てをどうぞ存分に味わってください。

構成も挑戦的で斬新。前半からじわじわ進行させてあるタイミングでバッサリ「その後」に切り替わり、省略した部分を誰かが振り返るエピソードとして語られます。この後半の対話を中心とした展開、じわりじわりと語られる「彼がしたこと」に触れてハートを鷲掴みにされます。

では見終わった奥様にインタビューしてみましょう。

「うわーん」
「嗚咽が漏れるほど泣いた。うわーん」
「この人が今いないなんて耐えられへん。うわーん」
「今はじめて観てよかったかも。うわーん」
「後半の議論もよかった。うわーん」
「ブランコは反則や。うわーん」
「役所勤めのはたらくおじさんや。うわーん」
「あかん。いろいろ思い出しても泣けてくる。うわーん」
涙に暮れています。

私も志村喬が今いないという事実に大きな寂しさを感じます。左卜全ももうおられません。

「生きる」の脚本はトルストイの「イワン・イリイチの死」をベースに書かれ、作中にもそれを暗示するセリフが含まれているとのことです。ちょっと浮世離れした会話などがあって、独特の効果を上げているのはそういう理由によるところだったのでしょうか。

1953年度ベルリン国際映画祭にてベルリン市政府特別賞を受賞。

そんなわけで、超個人的黒沢映画必見3本をお送りしました。

2009.03.10

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