リダクテッド 真実の価値

Redacted
リダクテッド 真実の価値
公開年:
2007
製作国:
監督:
脚本:
主演:
  • パトリック・キャロル
出演:
  • ロブ・ドゥヴェニー
  • イジー・ディアス

イラク戦争のマフムーディーヤ虐殺事件を題材に、実際に存在するビデオ映像をリメイクするという思い切った技法を用いた問題作。

リダクテッド 真実の価値

ブライアン・デ・パルマ師匠が多分強い意志を持って撮り上げたイラク戦争の姿。
リダクテッドとは、不都合な情報を削除した「編集済み」の映像という意味。黒塗りや隠蔽ですね。アメリカのメディアで使われる言葉だそうです。
この報道の操作に対して強い反発の意志を示すと同時に、イラク戦争への批判を込めたデ・パルマ監督、普段知る娯楽作品やスリラー、サスペンスを撮る人とは思えない力の入れようです。

この作品、実話ベースどころか実際にインターネットに流れた映像をわざわざリメイクして演出の中に含ませ、ドキュメンタリー風味を強調します。これは事実ですよ、と。

ドラマは、カメラを構える兵士を中心に、事件、戦争、被害者、他の軍人たちと絡み、しつこく丁寧にあるいはお得意のサスペンスフル仕込みも時に交えながら進みます。カメラの兵士に十分感情移入できるドラマ性も健在なんですね。不安や恐怖を追体験できます。そして哀れで可哀想で辛いです。

デ・パルマにしては珍しく感情的な演出も見られ、同じ音楽で繰り返し盛り上げようとするシーンの多さに少し辟易するところもありますが、それは仕方のないことのような気もします。なんせ思い入れたっぷりということは十分に伝わります。

戦争の真実を暴き出す内容は戦争政策とその報道を批判することもあり、さすがに興行成績は振るわなかった模様。FOXをはじめナショナリストたちや報道からの批判も多かったらしいですし、多くのアメリカ庶民に受け入れられなかったであろう事は容易に想像できます。
皮肉なことに、実話や実映像をフィクション化した本編より、エンディングで流れる実際の映像(しかも黒塗りあり)に強い迫力を感じてしまうのもまた事実。

しかし監督にとって、この映画は作っておかねばならなかったのでしょう。その心意気に敬意を表したいと思います。

2007年ヴェネチア国際映画祭にて銀獅子賞を受賞。

2009.03.24

[マフムーディーヤ虐殺事件とは] 追記(2012.03.06)

マフムーディーヤ虐殺事件について調べると、この映画の記事ばかりがヒットします。そもそもはリダクテッドWikiに表記しているのをみんなが寄ってたかって引用した結果なんでしょうね。
「で、マフムーディーヤ虐殺事件って何?」という人もいるかもしれません。肝心のWikiがリンクしている事件の詳細が英語ページだからです。これ→ Mahmudiyah killings
映画を観た人ならわかりますが「リダクテッド」の中で描かれているまさにあの事件です。
2006年3月12日、5人の米兵たちがバグダッドのマフムーディーヤにある顔なじみの家に侵入し、その家族を殺し少女を輪姦して射殺した上に隠蔽のために遺体を焼いたとされる事件です。

意味のわからない「テロとの戦い」だの「イラクを解放する」だの「大量破壊兵器」だの戯言を言いながら、現場では残虐非道や拷問が常態となっていることが明るみに出て各所で話題になっていました。
この事件を映画化した「リダクテッド」には「反米的である」とか「言わなくてもいいことをわざわざ明るみに出すな」とか「まじめな兵隊さんもがんばっている」とか、そういう批判があったそうでありますが、そういう動きは原発事故後に安全安心教の念仏で満ちている現在の日本を見ればわかるとおり、心的防衛による矮小化願望の現れでありまして(心的防衛については「メランコリア」なんかも参照されたし)、それはナショナリストだからとか馬鹿だからというよりも、「心が弱いから」発現するということがわかります。
その弱さはもちろん現場の兵隊さんも同じで、恐怖と憂鬱が他者への攻撃と化すという点で完全に共通するわけです。
つまりこの映画を「反米的だ」と攻撃したり、原発事故に危機意識を持っている人間を攻撃するようなやつってのは、戦争や大災害時にこの事件のようなことを起こす側の人間であると断言できるのですよ。

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