エグザム

EXAM
大企業に就職しようと難関をくぐり抜けた8人が最終試験を受ける。採用試験サバイバルシチュエーションスリラー。
エグザム

国籍や年齢が異なる8人が1つの採用枠を巡ってサバイバルするという。ただの入社試験ではなくて、重役に近い位置にあるスペシャリストの枠らしい。
集まった8人はこれまでの数々の難関を突破してきた才人という設定で、決してそこいらの兄ちゃん姉ちゃんたちではありません。まずそこでほっと一息。就職試験スリラーと聞いていたので、今時ありがちな同世代の乳繰り合い映画ではないかと危惧していたんですね。心配は杞憂でした。
密室が舞台のシチュエーションスリラーと言えば最近では「実験室KR-13」をまず思い浮かべますし、最初のSAWも近いですね。集団の心理という点では「es[エス]」もありましたがあれはサバイバルではないしちょっと違いますか。

シチュエーションサバイバルスリラーであるからして、この映画を楽しむにはネタバレ厳禁となります。ヒントや他人の感想も仇になります。これからこの映画を観るつもりのひとは、ネタバレがないからと言ってレビューや感想をむやみに読むべきではありません。
私が観る前に感じていた杞憂は以下の通りで、それが杞憂であることだけ申し上げておきます。

・同世代の若者しか登場しない青臭い映画ではないか
・ 最初の設定からどんどん解離していってシチュエーションスリラーでなくなっていくのではないか
・だまし合い探り合い心理戦ではなくアクションやホラー映画の類になっていかないか

以上は杞憂でした。それだけでも映画としては当たりです。ちゃんとシチュエーションスリラーとして一本筋が通った大人の鑑賞に堪える映画でした。

この作品、試験会場だけが舞台で、登場人物は受験者8名、試験官とガードマン1名です。
就職試験のルールが示され、そのルールに抵触しない方法を探って答えを見つけ出すことが本筋です。主に会話とチャレンジだけでストーリーが進行するシチュエーションスリラーの王道。イギリス映画らしい言葉を中心としたやりとりがなされます。

シチュエーションに沿って、最後まで飽きることなく一気に見せますよ。

ということで紹介は以上です。

これから観る人は以下のもうちょっと詳しい感想文を読まないほうが懸命です。見終えての感想ですから、具体的に書かなくても明らかにネタバレを含んでしまいます。

ミスリードについて言及しています。読んでしまえばミスリードされませんからこれもネタバレと言えましょう。

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エグザム

この作品、SAWや実験室など他のシチュエーションスリラーたちと大きく異なる点がいくつかあります。その点に注目すれば、何やら面白く感じてくるんですよ。

まず設定が「就職試験」である点です。
この設定おもしろいんです。これを利用したミス・リードにまんまとひっかかりますね。
もうひとつ、話の途中で見えてくる試験を実施している企業についてです。そしてその企業がどういう社会において大企業になっているのか、つまり世界設定ですが、これがちょっと妙な設定で、ここでまた心配事が発生します。「運命のボタン」みたいになっていくんじゃなかろうな、という心配ですね。これもミス・リードのひとつです。
ちょっと気付きにくいこういったミス・リードを巧みに絡ませながら密室劇が進行します。これって、ちょっと捻くれているんですよ。この手の映画として安易に予想できるSF的あるいはホラー的荒唐無稽さを逆手に取っています。まことイギリス映画らしい脚本です。

密室だからと言って、閉じ込められたとか、殺し合いして生き残るとか、ルールを破れば死とか、そういうことはありません。就職できないだけなんです。 だってただの試験ですから。ここが非常に重要。
いよいよ緊迫していく状況の中で、肩透かし的に脱落する者が出てきたりして、そういう普通っぽいところをシニカルに演出します。「そういやただの就職試験だったわ」と見ているこちらも気付いてバツの悪い笑みが口元に現れてしまいます。
シニカルさといえば、ガードマンも重要です。
じっと耐えているガードマン。彼を見て面白がれる人はこの映画を二倍楽しめる人でしょう。

オチに関しては、悪くはないけどたいした爽快感は味わえません。エンディング近く、SAWのようなカタルシスを演出しようとしている節は見受けられますが、そこがイギリス人らしいところか、若干の照れのようなものすら感じます。

そういうのも全て含め、サスペンス的には始終ドキドキできるし、最初の設定とルールだけで最後まできっちり引っ張る脚本も偉いし、つまりちゃんと面白いです。

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