ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

The Life of David Gale
ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

強姦殺人で死刑判決を受けた大学教授(ケヴィン・スペイシー)にインタビューをした女性記者(ケイト・ウィンスレット)が、冤罪を確信し調査に乗り出すことに。

ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

死刑になる人が冤罪だったらそりゃ問題あるに決まってるんで、冤罪の可能性を想像したこともないようなテキサス的人間には社会派に映るかもしれませんが、別段この映画は死刑制度に真っ向対峙したというような硬派の社会派ドラマではありません。では何かというと、もちろんミステリ&サスペンスです。

すでに起きてしまった事件を後追いで調べていく課程でころころと転がる物語や人物の印象、犯人なのか冤罪なのか、そのあたりが本編の中心です。ミステリー的に進行します。

ケヴィン・スペイシーの「犯人か、冤罪か」簡単に判断出来ない怪しいキャラクターはもはや安心印と言っていいほどの定番の味わいだし、刻々と迫る死刑執行を前にドキドキするサスペンスは王道中の王道です。

この映画、貶すようなところは何一つないし、面白く拝見したのですが、どうも消化不良で困ったことになりました。失礼ながら、観たあと何の印象も残らないというか。何が合わなかったんだろう。

監督のアラン・パーカー、は名作「ダウンタウン物語」、トラウマ級の個人史的傑作「ミッドナイト・エクスプレス」、大好きな「エンゼル・ハート」や「ザ・ウォール」、面白かった「フェーム」や「ミシシッピー・バーニング」の監督でして、基本的に好きな映画を作ってきた監督なんですよね。だから期待しすぎてたのかもしれません。

ケヴィン・スペイシーには罪はありませんが、「セブン」と「ユージュアル・サスペクツ」でそっち系のピークを迎え、もう怪しい役は見る前から見えているという、そういう状況に陥っています。だから新鮮味がなかったのです。こういう役でケヴィン・スペイシーを起用するっていうのは安直すぎないかと思ってしまったんですねえ。だから本作の落ちもまことケヴィン・スペイシーっぽいのでして、そこには驚きがあまりない。というか彼がそっち系っぽい役割で登場している以上、何が起ころうともはやそこに驚きはないのです。という感想も酷い話でして、失礼しちゃいますねえ。誰も悪くないのに。

死刑問題を問いかけるのであれば「デッドマン・ウォーキング」という巨頭があります。この「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」は死刑問題なんか問いかけていません。冤罪というものがありますよーとお知らせする意図は強そうですが、死刑問題死刑問題と言われすぎたんじゃなかろうかと思えます。これも作った人に罪はありません。最初から冤罪をテーマにしているんだから冤罪を知ってショックを受ける程度の客層にそれが伝われば十分なのです。
そういう意味ではわかりやすいケヴィン・スペイシーの起用もうなずけます。

つまりこの映画は、庶民に向けたサービス精神たっぷりのサスペンス、それでいて社会問題もそっと忍ばせるという、そういう映画だったのです。それを知らずに見ると、私のように肩すかしを食らった気になってしまう観客もいたことでしょう。
あるいは、幸運なことに「セブン」も「ユージュアル・サスペクツ」もケヴィン・スペイシーも知らない人ならば、これは絶対に面白いミステリ&サスペンスとして大いに楽しめると思います。

そんなわけで「死刑執行まであと何時間、走る,走る」っていう、これギャグかと思うような古典的なシークエンスで盛り上げるクライマックスもあれでいいのです。
まさに「ザ・プレイヤー」のブルース・ウィリスです。あそこで笑うような観客は映画慣れしすぎていて斜に構えていてひねくれ者でそんなやつは鬱陶しいから無視していいのです。

ほらほら。安易に批判とかし出すから己の駄目さがまた浮き彫りになってしまった。

2009.05.26

自己嫌悪に駆られたので気を取り直してケイト・ウィンスレットについて。

この人、ポール・デルヴォーか金子国義の描く女性のようなお顔だと思ってるのは私だけでしょうか。
それが如実に表れているのがデビュー作にして奇っ怪なる「乙女の祈り」でして、メラニー・ リンスキーとケイト・ウィンスレットのこの二人の女の子が存在感ぶりぶりで迫り来る大変な映画です。あれを見たときも「金子国義みたいやなあ」と誰にも賛同されないままつぶやき続けたわけなんですが、女優たるもの個性がすべてですね。ただ綺麗なだけではだめで、この方みたいに癖のある美人っていうのは独特のオーラを放ってると実感します。

しかしあれですね、自己嫌悪というか、辛いガムが好きな人がブラックガムにすら慣れてしまうように、辛いおやつが好きな人がカラムーチョですら頼りないと思うように(←例えが古すぎるぜ)映画も見すぎると刺激に慣れてしまって、このような普通の映画では満足出来ない体になってしまうんでしょうかねえ。そんな自覚はないんですけどねえ。いつもピュアな心で色んな映画を楽しんでるんだけどなあ。

2011.01.19

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