ファーストフード・ネイション

FAST FOOD NATION
ファーストフード・ネイション

ベストセラー「ファストフードが世界を食いつくす」のエリック・シュローサーが自書を原案に脚本化、アメリカの食のビジネスに潜む問題点を群像劇として描いたドラマ。

ファーストフード・ネイション

パッケージデザインといい、予告編の作りといい、マイケル・ムーアのドキュメントか「スーパーサイズ・ミー」みたいなコミカル系ノンフィクションの雰囲気を漂わせています。原案となった「ファストフードが世界を食いつくす」もノンフィクションだし、著者本人が製作総指揮と脚本を担当していますからノンフィクション的な映画かと思ってしまいますよね。しかしこれはきっちり物語を追う見応えのある群像劇ドラマでして、宣伝でイメージを固めてしまって見逃してはもったいない出来の良い映画です。

ファストフード業界に関するいくつかの物語が同時進行します。移民による食肉工場の労働、大手バーガー・チェーンの大腸菌混入問題の社内調査、大学の環境保護グループたちの青臭い正義感などです。
監督は「スクール・オブ・ロック」のリチャード・リンクレイター。おおっ。こんな渋めのドラマもきっちり撮るんですねえ。

とりわけ移民に関するドラマが見応えあります。メキシコから密入国の不法就労者たちがブローカーから精肉工場での違法労働を斡旋され、そこでの過酷な労働を描いた部分。「そして、ひと粒のひかり」のカタリーナ・サンディノ・モレノが熱演。素敵だよぅかわいいよぅカタリーナ。
工場内での出来事自体は、哀しい物語となっていまして、原作の「ファストフードが世界を食いつくす」で暴露されたえげつない事象はあまり描かれません。あれ描いたら精肉工場のロケなんか絶対に許されないだろうし、いろいろと譲歩した結果であろうと思われます。精肉工場もわりと綺麗に撮ってますしね。
それより密入国に関するシーンが丁寧に撮られています。序盤とラストも彼らを中心に描き、この問題を大きくクローズアップします。アメリカの食のビジネスに関して、移民問題抜きには何も語れないのです。そして映画的にも、メキシコから砂漠を通って密入国する映像は心を動かす強いシーンとなり、見応えがあります。

大腸菌混入の調査を進めるマーケティング部長が狂言回しの役割でファストフード業界の常識を観客に案内します。ここはややコミカルに描いているものの、調査という設定でもっていろいろと取材し、ビジネス的視点、現場の視点、モラルといったポイントを押さえています。そしてここでも、このマーケティング部長の心の動きをドラマチックに描きます。観客に最も近い立場です。事件を知って驚き、取材を重ねて事実を知って驚き、こんなのでいいのか、と自問し、揺れ動きます。その結果彼の決断はどうなるのか、そこも観客と同化できるポイントとなっていますね。唐突にブルース・ウィリスが出演しています。良い映画に端役で出てると、スターの印象もぐっと上がりますね。

環境保護グループの大学生たちのドラマが良い味付けです。こちらも、ある種の人々を代弁する設定のお話になっています。世間を何も知らずにバーガー・チェーンでアルバイトしていた女子学生が環境保護グループと知り合うことによって影響を受け、知識を身につけ正義感に目覚め行動に移します。青臭い環境正義に燃える若者の青春映画の部分です。イーサン・ホークが味わい深い役で出ています。彼らが行う行動のシーンはちょっとした盛り上がりとなっていまして、この映画がほんとに盛り沢山な映画だと実感できる部分です。

軽薄なバーガー店の様子、馬鹿なビジネスマン、大腸菌混入から始まるテンポの良い進行と一転メキシコ移民の辛い物語、一般市民目線の青春ドラマと盛り沢山で内容の濃い見応えのある作品です。音楽も軽妙な調子から深刻な旋律まで非常に豊かでこれもお気に入り。
思っていたのと違うタイプの映画で、いい意味で予想を裏切られた良作でした。

原作(というか原案ですな)の「ファストフードが世界を食いつくす」の中で印象深い記述がありました。ファストフード(実際にはマクドナルド)がアメリカを覆い尽くしてアメリカ人の食生活と労働環境がすっかり変わってしまった。アメリカでも昔は家の台所で煮炊きしたものを食べていたのに、という老人の郷愁です。
もうひとつ、フルタイムで労働しても生活するだけの賃金が得られない就労形態を発明したのもマクドナルドだったんですね。この発明は資本家にとって福音で、あっという間に世界に広がりました。
日本も同じにならないことを祈りながら読んだものですが、すっかり同じになってしまいました。

2009.11.05

エリック・シュローサーは2008年に食に関する新しい映画を製作しています。「フード・インク」です。こちらはドキュメンタリーで、工業化された生産システムを紹介する基礎知識的映画らしいです。
アメリカの食のビジネスを描いていますから「いのちの食べ方」より日本人には参考になるかもしれませんね。
日本では大いに遅れてやっと2011年1月に公開、ちょうど今時分全国で順次公開中ですか。
TPP問題と絡めるのも良しです。

2011.02.08

この問題に興味ある人はご覧になってはどうでしょう。

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