グラン・トリノ

Gran Torino
グラン・トリノ

ひとり暮らしの頑固老人、少なくとも表面的には保守的で差別主義者で懐古の世界に生きています。クリント・イーストウッドが放つ老人ハードボイルド。

グラン・トリノ

ハードボイルドってのはうそですが、この作品、老人を描いた映画が陥りやすい類型的で自動化された単調で観念的な老人像からほど遠い説得力を作り上げています。クリント・イーストウッドの滲み出る懐深さといいましょうか、頑固で保守的な老人が隣家の友に信頼を寄せるというありきたりなテーマを見事に昇華させました。とてもいいです。
特に前半がいいです。それは観る者の年齢にもよるでしょう。ある程度大人だと、前半の微妙で絶妙な人間描写に圧倒され、涙するところすらあるはずです。
後半はドラマが盛り上がります。ラストにかけては映画的なカッコ良さも抜群の効果で披露します。後半のほうが好きな人もいることでしょう。
私はおっさんなので前半でやられた口です。老人の孤独や、若い友だちとの交流、隣家でのパーティシーンでコテンパンにやられて涙腺ルイルイでした。
ラストに向けてのドラマもいいのですが、そっちはまあ映画的盛り上がりというかお約束というか、こういう落としどころにもちろん文句などありませんが、名作映画の威厳すら感じまして、それは前半の心の動きとはまた違う部分で感心した次第です。つまり、自らのハードボイルド的映画作品への決着というか落とし前というか、覚悟みたいなものを感じましたのですね。お。やっぱり老人ハードボイルドであったか。

老人映画のテーマは常に孤独や郷愁がついて回ります。下手に描くと食傷気味の似非老人の映画に、上手く描くと心に響く良い映画が作れます。
この作品は、孤独の先に受け継ぐべき若い血が入ることにって再生への明るい道筋を示すと同時に、老人であるが故の知恵、ひとつには暴力に対する一つの解答なんかをきちんと再生の際に継承する形を取るというたいへんポジティブな映画となっております。老人は老人が描くに限るといういい見本ですね。
若い人は若い人なりに、老人は老人なりに、いろいろと感情移入しながら観ることが出来るでしょう。
大ヒットがうなずける良い映画でした。

2010.01.05

インビクタス」も、前半で大人向けの人間描写に力を入れ、後半に全年齢対象の映画的盛り上がりを持ってくるという同じ構成でした。こちらもやはり前半で泣かされ、後半で娯楽作品としてのカタルシスを普通に味わうという、そんな映画でした。

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