キック・アス

Kick-Ass
スーパーヒーローに憧れる少年がナンチャッテヒーローをやっていると、ひょんな事から本物のヒーロー親子と悪者に出会い、結果的に痛快ヒーロー映画になってしまうという大ヒット映画。
キック・アス

製作にブラッド・ピットも名を連ねニコラス・ケイジも出演していて誰もが楽しめる大ヒットヒーローアクション映画なのに日本ではミニ・シアターでの小さな公開にとどまり、そのせいで商機を失い客を取りこぼし、慌てて上映館を増やすもののDVDと大差ない劣化デジタル上映を交ぜてしまったために顰蹙を買って客を逃がし、その上劇場にも内緒でさっさとDVDを発売しレンタルまで始めてしまったものだから怒る人喜ぶ人嘆く劇場いろいろな喜怒哀楽を包み込んでしまった問題作、キック・アスをさっそく快適なホーム・シアターで堪能しました。

この映画は所謂スーパーヒーローモノでございまして、随所にパロディやギャグを含めながらも、決してヒーローを茶化しただけのコメディ映画というわけではありません。

主人公は近頃よくある駄目なオタク少年で、彼のモノローグが物語りを引っ張ります。「ゾンビランド」と同じです。そして彼の周りに悪人やヒーローなどヒーロー映画の定番たちが現れます。弱い主人公、強い周囲の人、理想の恋なんかがちりばめられていき、様々な映画のパロディを口にしながらヒーロー映画としての中心へと関わりを深めます。こういった流れも「ゾンビランド」と共通。ひ弱なオタク少年を包み込むのが、片やヒーロー映画、片やゾンビ映画という違いだけです。
しかし大きく違う点があります。「ゾンビランド」はゾンビ映画の体を成したコメディであるのに対し「キック・アス」はコメディの体を成した立派なヒーローアクション映画である点です。
この点が「キック・アス」に燃える強烈なファンを生み出したひとつの原因であると思っています。

様々な登場人物の細かい設定や小さなセリフや動きに、ヒーロー映画としてのツボを押さえまくった芸達者な脚本と演出の力を垣間見れます。
ヒット映画を作るためにアメリカではチーム制の脚本などがありまして、面白い作品を作るためにとことん会議したり突き詰めたりするんですね。たいていの場合、そのせいでパンチのないすかすかの脚本になる場合が多いのですが、本作の場合は原作者がしっかりした仕事をしていることやヒーロー映画のツボというテーマがはっきりしているせいか、チーム制のシナリオ作りが完成度の高さを引き上げており、システムが上手く機能しているんですね。チームワークによる優れた娯楽作品のいい見本かと思われます。

で、何と言ってもクロエ・グレース・モレッツ演じるヒット・ガールとニコラス・ケイジ演じるビッグ・ダディのこの親子のヒーローの魅力が凄まじいです。
11歳のヒット・ガール、マスクの下に童顔を覗かせ「おまんこ」連発で悪党を殺しまくる痛快アクションは必見。字幕はいつものようにおとなしい日本語ですがクロエ・グレース・モレッツが発する可愛い声の強烈なセリフを聞いていると「ようやった!」と盛り上がること間違いなしです。今までなかった新しいちびっ子ヒーローの出現、この要素が「キック・アス」の成功の大きな部分を占めているのは間違いありません。

クロエ・モレッツはこの映画がきっかけかどうなのか大ブレーク中、仕事のオファーも満載です。本作パート2に「ぼくのエリ」のアメリカリメイク、でもちびっ子って、すぐ大きくなるから大変ですね。今後どのように伸びるのか、どうなのか、注目ですね。

ニコラス・ケイジもいい役で、ちょっとくたびれてきた彼の魅力を存分に発揮します。娘に対する愛情も少ないセリフと態度でびしっと決めています。
ニコラス・ケイジとこまっしゃくれた女の子と言えば「マッチスティック・メン」を思い出しますね。

個人的にはレッド・ミストのあの変な顔の俳優に注目です。崩れたビートルズのような独特の風貌の彼を演じたのはクリストファー・ミンツ=プラッセという人で、青春コメディ「スーパーバッド」(2007)のオーディションで役を勝ち取ったやる気満々の若手俳優です。

この作品、大手配給会社と契約しようとしていましたが、ソニーを始め大手から「バイオレンス要素を弱めるように」とか「キャラクターの設定を変更するように」とか言われたため最終的に自主映画となった経緯があるそうです。
大手と契約して言うことを聞いていたら面白くも何ともないスカスカ映画になっていたことでしょう。製作者たちの決断に拍手。

実を申しますと個人的にはスーパーヒーローモノというのに愛着がないせいで、主人公を巡る序盤やラスト近くのヒーローモノとしての真っ当な展開に関してはまあ普通かなと言う程度の感想です。ヒーローに憧れた経験があったり、ヒーローモノのコミックや映画が好きな人なら間違いなく全編全てツボにハマるだろうと思います。そういう人は必見、私のようにそうでない人にも、ちびっ子映画として、親子の物語として、コメディとして、変な連中を観る映画として、いろんな見どころがあります。

軟弱な弱い若者、最後はヒーローに、可愛く抜きん出たちびっ子、かっこいい大人、可愛いヒロイン、極限の状況、スカッと娯楽、元になる映画へのパロディと愛情、そいういった括りでは「ゾンビランド」と「キック・アス」は2009〜2010年にかけての二台巨頭と言っていいでしょう。

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コメント - “キック・アス” への4件の返信

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