NOISE ノイズ

Noise
NOISE ノイズ
公開年:
2007
製作国:
監督:
製作:
製作総指揮:
  • ダニエル・ダイアモンド
  • パウル・デ・ソウサ
脚本:
音楽:
  • フィリップ・ジョンストン
主演:
出演:

街の騒音が気に障って仕方がないデビッド(ティム・ロビンス)は、たまりかねて騒音の原因に対して破壊活動を行うのだった。

NOISE ノイズ

この映画はいろんなところで「コメディ」みたいに紹介されていますが、コメディとはとても思えません。ある偏執狂の男の行動と末路ですが、面白おかしくは描いていないし、むしろちょっと怖かったりします。
神経症的な男の狂気を描いた映画でもあるし、逆に、騒音問題に象徴される都市問題をあぶり出す映画とも言えます。二律背反ですがどちらかに偏ることなくドラマ化しているので厭味はありません。

面白いのか怖いのかよくわからない都市生活者の神経症的人間を描いた映画として、似てはいないけど共通すると思われる作品があります。「ケーブル・ガイ」(主演ジム・キャリー) です。ジャンル的には「ケーブル・ガイ」とこの「ノイズ」は同じと言っていいでしょう。
どちらも神経症的な男を役者の魅力でたっぷり描ききる作品です。

さて、デビッド(ティム・ロビンス)は街の騒音が気になって仕方ありません。イライラします。緊急自動車のサイレンや車の盗難防止ブザーや空調の音や低周波、至る所に存在するノイズに気も狂わんばかりです。いや、実際ちょっと狂ってます。
ついに彼は破壊活動を始めます。
こっそり続ける破壊活動はだんだんエスカレートし、地位も名誉も捨て去るほどの発展を遂げていくんですね。

ティム・ロビンスがとてもいい演技です。なんだか楽しそうですらあります。生き生きしてます。
この映画を見た時に最初に思ったのは「老けたなあ」でした。元々童顔だったので、ある程度の年齢まで若い役をやっており、そしてある瞬間を境に老け役をやり始めたんですね。上手いチェンジですね。
いい映画に沢山出演している上にこの方は「デッドマン・ウォーキング」を作った人ですから凄いです。尊敬できます。

2009.07.20

この映画の面白さは先に書いたように、まずこの神経症的な男の魅力です。まともなのか狂っているのか変人なのかヒーローなのか、いずれにしても彼に共感できる人も多くいるでしょう。

神経症的な彼は神経症たる現代人に十分受け入れられるのです。つまり騒音問題だけでなく、ありとあらゆる「気に障るもの」への攻撃に観客はスカッとするのです。もうお気づきの通り、騒音は全ての都市生活者の気に障るもののメタファーにすぎません。即ち、煙草の煙やパチンコ店の照明や酔っ払いや臭いファストフードや下品な牛丼屋やうざいコンビニや邪魔な自転車や危険な自動車や人目をはばからない携帯電話や人目をはばからないおしゃべりや似合わない服や化粧や短いスカートや不愉快な佇まいや犬や猫やおっさんやおばはんや小便臭い餓鬼どもです。
つまり、すべてのものは誰かにとっての不愉快なものであり、その誰かがもし徒党を組めば破壊活動への支持が一気に集まるという話に繋がるのです。
ファシズムの原動力にもなりかねません。

神経症的潔癖症は、肛門期における教育の失敗が招く心的固着であると言われています。つまりウンコの仕方を親から学ぶ時、怯えてしまうほど強く教育されたりすると将来過敏になったり神経質になったりするというフロイト先生の教えです。というようなことは「イン・マイ・スキン」でも書きましたが何度でも書きます。
「ノイズ」のこの男はこうした現代都市生活者の多くが発症していると思われる神経症を体現しており、不気味であると同時に共感を得るという案配になっています。

視点をぐるりと裏返すと違う見方が出来ます。
騒音問題に代表される、普段大きく気にとめないストレスの原因が都市には多く潜みます。都市生活者はそれらストレスに常時さらされており、あえて問題化することは即ち都市生活者失格と同義となり、気にとめないフリをすることが必要になります。
騒音はまさにそうだし、自動車が通る時歩行者が避けるといった行動、さらに言えば信号機に支配されることや高層ビルのエレベーター、家にカギをかけることまで様々なルールでさえ人間にとって本来強いストレスになるものです。
そのストレスが現代人を狂気に走らせているというふうにも言えます。
そこでこの映画ではストレスの原因を破壊し続けます。止められても警察に捕まってもひるまずに騒音を発するものを破壊するのです。
これによって社会問題が浮き彫りになり、ストレスの原因を解明されたこともあり観客はスカッとします。
そもそも物を壊す快感というのは格別です。それが特に自動車や建築物のような都市の象徴、貧富の富を象徴するのであれば尚更です。

この映画では上記ふたつの異なる視点を上手に使い分けて、見ていてだんだん気持ちよくなるように作っています。
ですがそこが怖いところです。

この映画を見たあなたは、ティム・ロビンスの気違いっぷりを不気味かつ面白く思うのか、あるいは騒音という「悪」を「破壊」する姿にうっとりするのか、どちらでしょう。
人によっては「騒音をやっつけろ。ついでにパチンコ屋を潰してしまえ。喫煙者は殺せ」と叫びたくなるかもしれません。もしあなたがそういう人間なら、ウンコのやり方から人生を学び直した方が良さそうですよ。

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