ジャーロ

Giallo
怪匠ダリオ・アルジェントが描くミラノで起きる連続殺人事件。美女ばかり狙う猟奇犯罪に、被害者の姉と専門警部が挑む。
ジャーロ

ダイオ・アルジェント大先生のサスペンス劇場です。いろんな部分で「サスペリア2」を彷彿とさせる設定にファンの心を鷲掴みするでしょうかどうでしょうか。

事件はイタリアのミラノで起こります。美女がさらわれ残虐な仕打ちを受けてしまうんですね。ダリオ・アルジェントと言えば美女です。
冒頭の最初の被害者は日本人です。いきなり日本語が出てくるのでちょっと驚きますが、彼女たちはミラノの劇場に入りまして、これがまあダリオ・アルジェントの象徴と言っていいんじゃないかと思えるモダンで美しい劇場です。見るからにダリオ風味、いいですね。「いいぞ!」なんて言ってしまいますが、ダリオ節を堪能できるのはここまで。
なぜか「ねえねえ、踊りに行っちゃいましょうよ」なんて言いながら そそくさと劇場を後にします。
一体何のために劇場のシーンがあったのかわかりません。劇場のショットがダリオ・アルジェント風味をびしっと表現したのは確かですから、きっとそのためだけのサービスシーンですね。
次の事件はファッションショーです。このモデルさんが罠にかかります。車と雨。ここにもかつてのダリオ映画を思い出させるサービスシーンがあります。おお、これもまた往年の巨匠風味。いいね。でもそこまでです。

たまたまミラノを訪れた被害者のお姉さんが妹のために動き始めます。なぜか警察の地下にひとりぼっちでいる猟奇専門警部とピザ屋の計らいで見事出会い、ふたりで捜査開始です。他の警察は何をやっとんねんとか、そういうことを言っちゃいけません。

この警部は変わり者です。サスペリア2的な意味で怪しい良い設定です。被害者のお姉さんもちょっと変なところがあります。
ここで理想ならば「警部もお姉さんも何か怪しい、そういや警察も怪しい、ピザ屋も怪しい、怪しい奴ばかりが蠢く怪しい映画」となってほしいところだったと思いますが、設定的にはそうあっても、見ていてそんなことは思えません。何だか馬鹿馬鹿しくなってきます。
「サスペリア2」であれほど成功した芸術的怪しさが「ジャーロ」に全然足りないのは何故でしょうか。わかりません。いやちょっとわかりますけど、まあ、ないものはないでしかたありません。

もう一つダリオ風味を特徴付ける「トラウマ」「フリークス」「差別」系のお話もまんべんなく入れつつ、しかしながら懐かしさ以外の特別な面白みを感じないままだらだらと進行する本作「ジャーロ」です。

ダリオ・アルジェントはとんでもない凄い作品ととんでもない駄作を両方創ることでも有名です。このムラこそ天才たる所以。か?
ダリオ・アルジェントに関しては、駄作を貶すことにとても抵抗があります。そういうことを言ってはいけないような気がするし、とても野暮だと思えるんですよね。「デス・サイト」もひどかったけど←貶してるやん

後半にさしかかると、それまでじっとり描いてきた犯人、何やら様子が変わってきます。あれ?この犯人、こんな性格だっけ?という、まあどうなるかは見てのお楽しみですね。
期待せずにどうぞ。

警部を演じるのは製作にも名を乗せる売れっ子エイドリアン・ブロディ。何やら報酬の件で裁判沙汰になったという噂を読みましたが詳細は知りません。エイドリアン・ブロディ、二役ですか?

被害者のお姉さんはエマニュエル・セニエです。「ゴダールの探偵」でデビュー、ロマン・ポランスキーの現在の奥さんなんですって。
「ニルヴァーナ」「潜水服は蝶の夢を見る」などに出ておられます。

「ジャーロ」は何だかんだ言って残念なタイプの映画ですが、ダリオ先生の軌跡を確認していたい人には必要な作品です。DVDで出してくれてありがとう。
でもこんなのより「4匹の蠅」のほうがずっと変で面白いです。

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