黄金時代

L'Âge d'or
ルイス・ブニュエルが「アンダルシアの犬」の次に監督した二作目。若干のストーリー性もある1930年の前衛的映画。
黄金時代

公開当時、右翼がスクリーンに爆弾を投げつける騒ぎも起き、その後50年間にわたり公開禁止となったという曰く作品だそうです。

ダリと共同で製作し衝撃を与えた「アンダルシアの犬」に次いで作られた「黄金時代」ですが、実はこのときすでにブニュエルとダリの蜜月時代は過ぎており、脚本のほんの一部だけがダリのアイデアによるもので、実質ブニュエルの単独作品であると言ってもいいほどなのだとか。

「黄金時代」は「アンダルシアの犬」と違って物語性もあります。もちろんストーリーと呼べるほどの緻密な物語ではありませんが、ガストン・モドーが演じる訳の分からぬ男のさまざまな行動を始め、場面場面にはプロットとシナリオが存在するように見えます。
奔放で攻撃的な映像は相変わらずで、ともすればコミカルに見えるシュルレアリスム的イメージの連続が大変ここちよいです。そして古さを全く感じない人を食ったような展開にお口あんぐり。
冒頭のさそりの話からラストの宗教への冒涜まで一気に雪崩れる60分間に、ブニュエルのその後の商業映画的才能も見て取れるでしょう。

「アンダルシアの犬」を初めて知ったのはお気に入りの画集の巻末に載った小さなスクリーンショットで、今やお馴染みあの目のアップや手から蟻が出てくるシーンでした。そして「アンダルシアの犬」の記事のついでのように「黄金時代」についても触れられていて、冒頭近くのあの美しい海岸に立つ元司祭のガイコツの写真が載せられておりました。
ベックリンが描くような幻想的な海岸と司祭の冠とガイコツが何とも言えぬ美しさを感じさせまして、純粋無垢な子供の私に強烈な印象を残し、人格形成に影響を与えました。

その後に「アンダルシアの犬」は何度も観る機会がありましたが「黄金時代」は上映されることなく、決してみることが出来ない映画の一つでした。
wikiによれば「50年上映禁止」だったそうで、日本での上映もその影響下にあるとすれば、80年以降に解禁になったのでしょうか。
70年代のダダ・シュルレアリスム・アングラ映画の上映会に足繁く通ってもどこでも公開されなかったはずです(どこかの場所では鑑賞できたのかもしれませんが事情も知らないしよくわかりません)

そんなわけで個人的に「決してみることが出来ない映画」のひとつであったこの「黄金時代」ですが、ふと気がつくとDVDは出ているわレンタルはしているわ、なんと普通に鑑賞できるではありませんか。そんな可能性考えたこともなかった。驚くべき時代なんですねえ。

さて1930年のこの作品、冒頭はまるで記録映画のようなさそりのお話からです。イメージの合間合間にはガストン・モドーとリア・リスの愛の物語が絡みつつ、戦争や宗教、糞尿から差別から暴力まで、道徳と倫理観に挑戦する攻撃性豊かな若々しい作品になっております。

昔々の大昔、画集の片隅でこの映画のスクリーンショットを見た時、まさかこんなに面白い映画だとは想像もしませんでした。

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