ナイロビの蜂

The Constant Gardener
ナイロビの英国外交官は暢気者。その妻は精力的な慈善活動家。冒頭、妻が死亡。外交官驚き嘆く。そして彼は妻の軌跡を追う。彼女は何をしていて何故に死んだのか。「シティ・オブ・ゴッド」のフェルナンド・メイレレス2005年の名作をご覧あれ。
ナイロビの蜂

ガーデニングが好きで暢気者の外交官ジャスティンはケニアのナイロビにおりまして、冒頭、不穏で衝撃的な妻の死を知ります。
妻テッサはなにやらアフリカの慈善活動を精力的に行っているようで、夫は妻のそういう面を全然知りません。何かやっていたそうだな、何をやってたんだろう。
外交官ジャスティンは初めて妻の活動に目を向けます。関係者に会い、話を聞き、知らなかった妻の生きた姿がだんだん浮かび上がってきます。

まず謎の死があって、ストーリー進行と共に妻の活動や人となりや周囲の関係が明確になっていくというミステリー進行です。最初は記号でしかない「妻テッサ」が、どんどん肉付けされていきます。ミスリードを含めたり怪しいところもあったり、四方八方に人間が膨らみ、同時に社会との関連、制度の問題点や核心に迫ります。
夫の妻に対する思いと観客の気持ちは常にシンクロします。立場的には同じなわけです。妻テッサを探る旅です。
この技法は、夫と同じように観客にも、妻テッサに対する愛情あるいは嫉妬や疑心暗鬼や制度との関係、果ては怒りや不条理感も含めて特別な感情が沸き上がってくる仕組みとして完璧に機能しています。これは見事。

「ナイロビの蜂」はジョン・ル・カレのベストセラーの映画化。
フェルナンド・メイレレスは「シティ・オブ・ゴッド」、後の「ブラインドネス」も原作付きの映画を撮っています。よい原作を素晴らしい映画に仕上げる才能がおありですね。私は上記三つしか観ていませんが、どれも素晴らしい作品です。名作映画とはこのことです。

「ナイロビの蜂」という邦題がどういう意味で付けられたのかわかりませんが、もしかしてナイロビにおける「蜂の一刺し」ですか?ちょっとそういう流行語を用いるのは残念ですね。この作品は時代と関係なく普遍的に名作ですからね。元の流行語を知らないと「なんで蜂やねん」と思われるかもしれませんよね。念のために申し上げておきますが、この映画は蜂の映画ではありません。

妻テッサをレイチェル・ワイズが演じ、2005年のアカデミー賞助演女優賞を受賞。
レイチェル・ワイズは「ハムナプトラ」で世界に名が知れ渡った美女で、未だに「あっ。ハムナプトラの人」なんてつい思ってしまいますが多方面に活躍中です。最近ではアレハンドロ・アメナバールの「AGORA」で主演。
おっと、待ちわびた「AGORA」はついに日本で紹介されました。邦題は「アレクサンドリア」ですって。全然知らなんだ。DVD出たみたいですね。

夫の外交官ジャスティンをレイフ・ファインズが好演です。
レイフ・ファインズっていう人は舞台や映画に大活躍のイギリス人俳優で、「嵐が丘」から「スパイダー」から「シンドラーのリスト」から「ヒットマンズ・レクイエム」から「ハリー・ポッター」まで、まあ何でもできる人ですね。

「ナイロビの蜂」は音楽も素晴らしいです。
エンドクレジットで流れる曲も含めて、まあなんともウエットで美しいアフリカ仕立ての名曲の数々。
いくつかの曲は忘れられない旋律で戦慄です。
素晴らしい音楽も含めて、たっぷりと味わえる名作映画です。

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コメント - “ナイロビの蜂” への2件の返信

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