白い花びら

Juha
アキ・カウリスマキが「浮き雲」の次に撮った台詞のない夫婦の悲喜劇「白い花びら」です。
白い花びら

「白い花びら」は台詞がない80分に満たない小品です。無音のサイレント映画ではありません。音楽はありますし。台詞がないだけです。
昔懐かしいサイレント映画の雰囲気を漂わせた表情と身振り手振りによって物語っていく作風です。

田舎で農業を営んでいるラブラブ夫婦に都会の伊達男が絡んできて奥さんを誘惑していくというお話です。オーソドックスなメロドラマ風でありますが、いつの時代に誰が見てもこういう展開は手に汗握るというかむかつくというか「そんなぁ」と泣けてくると言うか過去の傷を思い出すというか、人を引き込む力を持つ神話的典型の物語であります。

原作はフィンランドの国民的作家ユハニ・アホの、何度も映画化されている名作らしいです。もちろん私は知りません。受け売りです。数世紀前が舞台の夫婦の物語だそうで、障害を持つ夫と若い妻、そして絡んでくるロシア人伊達男の関係を描いた悲劇ということです。何度も言いますが受け売りです。私は全然知りません。
この原作をアキ・カウリスマキが映画化するにあたって、いろいろと構想を練ったそうですね。時代や設定を変え、最後あたりも象徴的な変更箇所があるそうです。でもこれ以上受け売りを書くのはやめときます。

アキ・カウリスマキ作品と言えば洒落た演出やとぼけた会話の可笑しさや絶妙な間など、まず面白さを連想するんですが、実はいろいろと文芸的試みを行っておられるのでして、人によってはこの文芸的試みを第一義とし、面白い部分を二の次に思う方もおられるかもしれません。そういった真面目な視点による解説や評論がネット上にもたくさんありまして、私なんぞは「へぇ」と関心ばかりしてますが、それでもどうしても「面白さ」を第一義に見てしまうでして、この「白い花びら」も面白さを感じる演出の宝庫であるという見方ばかりしています。冒頭からいきなりの洒落た演出に「すごい」とか「やったっ」とか「出た」とか「待ってました」とか、そんな風です。
というかですね、もう敢えてそういう姿勢を貫くしかありません。

アキ・カウリスマキは「白い花びら」の象徴についてこんなふうに語っているそうです。
「ルイス・ブニュエルにならってお答えしましょう。わたしの映画には象徴主義というものはありません。しかし、ブニュエルはとんでもない嘘つきでした」

これですよこれ。野暮なことを言わせんなよというこの姿勢がアキ・カウリスマキ作品の洒落っ気でありインテリ性でありスマートさであると、そういうわけなんですねえ。

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