トゥルー・グリット

True Grit
コーエン兄弟による「勇気ある追跡」(1969)のリメイク、というよりチャールズ・ポーティスの原作を再映画化。 父親を殺された少女が酔いどれ保安官を雇い仇討ちを目指します。
トゥルー・グリット

強気な少女マティが脅しに近い交渉で手に入れたお金で本物の勇者(トゥルー・グリット)と見込んだ酔いどれ保安官コグバーンに父親殺しの捜索を依頼します。
少女と酔いどれ男の悪漢捜しの旅。オーソドックスにして定番、誰しもの心をぎゅっと掴むこと間違いなしの物語です。定番な物語ゆえ、キャスティングの重要さシナリオの絶妙さ演出の巧みさが要求されます。そしてさすがのコーエン兄弟、ストーリーテリングの妙技を見せてくれました。これはいい。

少女マティの魅力が半端じゃありません。15000人の候補者から選ばれただけあって、この最重要キャラクターは大物役者に怯むことなく映画の力を引き上げました。
アカデミー賞では10部門にノミネートされながら無冠に終わった「トゥルー・グリット」ですが、少女マティを演じたヘンリー・スタインフェルドは別格です。オースティン映画批評家協会賞助演女優賞、ヒューストン映画批評家協会賞助演女優賞、インディアナ映画批評家協会賞助演女優賞、サウスイースタン映画批評家協会賞助演女優賞、トロント映画批評家協会賞助演女優賞、シカゴ映画批評家協会賞助演女優賞、フェニックス映画批評家協会賞若手女優賞、ラスベガス映画批評家協会賞若手俳優賞と、まあ私は映画賞のことはよく知りませんがこのような受賞を果たしております。
ヘンリー・スタインフェルドはユダヤ系の父親とフィリピン家系の母親を持つ1996年生まれのお嬢ちゃん。とりあえずこの素敵なお嬢ちゃんを見るだけでも「トゥルー・グリット」の価値はあります。

酔いどれ保安官コグバーンを演じたのは、この手の人間を演じたら右に出る者はいないという「アメリカ酔いどれヤク中駄目親父実はかっこいいぜ」界の孤高の大物ジェフ・ブリッジスです。そうです。「フィッシャー・キング」で「ビッグ・リボウスキ」で「ローズ・イン・タイドランド」です。年取ってきてますます冴えわたるむさ苦しい親父。ある意味アメリカを代表する俳優と思ってたりします。

マット・デイモンが同じ犯人を追うレンジャーの役で登場します。
マット・デイモンといえば「チームアメリカ」のまっとでいも〜んのイメージしかねーよとか言っていたのも今は昔、この人の俳優としての伸び方に近ごろ尊敬すらしています。特に「インフォーマント!」といいこの「トゥルー・グリット」といい、昔の坊ちゃんみたいな頼りない風貌は全く姿を消し、作品ごとに力を入れる役者魂しか感じられません。

というような素晴らしい役者による「トゥルー・グリット」ですが、本来埃臭い西部劇のはずなのにコーエン兄弟による脚本と演出の力でもって、都会的で現代的な新たな魅力に満ちた今時の新作映画として完成されております。
基本的にオーソドックスを踏襲しながらも、決して暑苦しくなく(ていうか雪積もってるし)大袈裟でもなく、若干人を食ったような台詞回しや演出が小気味よく加味され、一般的にものすごく盛り上げそうなところをさらりと演出したり、かと思えば一般的にさらりと流れそうなところをビックリ演出で度肝を抜かせたりと、さすがストーリーテリングの妙技を知り尽くしたコーエン兄弟。一見「らしくない」部分も多いのですが、細かいところでファンを喜ばせるような小憎たらしい技巧を散りばめます。
たとえば先住民の子とコグバーンのあのちょっとした絡みとか、もうなんかすごすぎてずっこけますよ。

「暑苦しくて埃臭い」と、アメリカ西部劇を敬遠するような方、「定番で使い古されたネタなんかに興味ない」とオーソドックスを嫌う方、いえいえ、少女の魅力とシナリオ・演出の妙技できっと誰しも大満足ですよ。いい映画です。是非どうぞ。

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