ザ・ウォード/監禁病棟

The Ward
ジョン・カーペンター久々の監督作品は精神病院に収容される美少女のサスペンスホラー。 放火して呆然としている美少女クリステンが警官に捕獲され精神病院に入院させられるところから始まります。
ザ・ウォード/監禁病棟

名作映画の見過ぎで頭がぼーっとしていたので息抜きに怖いのでも観てみるかと手に取った「ザ・ウォード」は何とジョン・カーペンター師匠の久々の監督作品でした。

ジョン・カーペンターと言えば「遊星からの物体X」のリメイクがよく出来ていましたね。「ハロウィン」や「ザ・フォッグ」をはじめ適度に力の抜けたB級っぽいSFやホラーの監督でファンも多い方です。長い期間監督作品がありませんでしたが久しぶりのホラー作品をひっさげてやってまいりました。もともと私はジョン・カーペンターのファンというわけでもありませんでしたので、選んだこれが師匠の監督作品とは知らなかったんですが見ながら知りました。

さて少女というかうら若き美女クリステンが火災現場で取り押さえられて精神病棟に入れられてしまいます。
病棟には似た年頃の少女たちがいて、彼女たちとの交流もちょっとあったりして、で、お化けみたいのも出てきて、「こんなお化けの出る気違い病院から脱出よっ」と、脱走劇を繰り広げまして、そんでもってひとりまたひとりと殺されたりします。そういうお話です。

少女たちの精神病棟と言えば「17歳のカルテ」を思い出しますが、どっこい女性たちの揺れる精神に踏み込むようなそんなシーンはありません。なんだか説得力のまったくない精神病棟の患者たちですが、そんなことは気にしません。

監禁というには抵抗があるような比較的自由な精神病棟では少女たちは思い思いのお化粧をしてロリコンアイドルのように振る舞います。
これは邦題を付け間違いましたね。
「ザ・ウォード/監禁美少女学園」とすべきでした。

この美少女学園のお友達のひとりにエミリーというのがおりまして、美少女たちに混ざって唯一のちょっとした個性派キャラクターです。
この映画は設定がどういうわけか1966年となっていまして、もちろん1966年である必然性や1966年っぽい描写などはないのでありますが、このエミリーだけは違います。
「ははあ。1966年か。メリル・ストリープもまだ若いなあ」と、時空を超越した狂人的感慨にふけることができます。
そうです。エミリーはメリル・ストリープに瓜二つ。まさに若返ったメリル・ストリープなのです。いや若返ったというか、今のメリル・ストリープそのままで年齢だけ若いという、そういう感じです。若い頃のメリル・ストリープのほうがずっと(以下省略)
そしてそれもそのはず、演じたメイミー・ガマーはメリル・ストリープの娘でありました。
いやあ、娘さん、あんたおかあにそっくりでっせ。
まあ大根たちにまざっての、ちゃんと演技できる数少ない登場人物でした。がんばりました。

さて怪しい病院に監禁されると言えば「解体病棟」を思い出しますが、どっこいあんなに怖くありませんし病院も全然怪しくありません。序盤からいきなり婦長が「今度はクリステンね」と言ったり、ドクターがとてもいい人だったりする描写があるので、病院ではなくてこの女のほうを怪しむように作られています。

そういうわけで「監禁美少女学園」はお化けやら病院関係者から逃げだそうとする話ですが、肝心の病院が全然怪しくないし設定にのめり込めないしお化けは変だし逃亡劇に感情移入できないし、わりと「淡々とすでに見えかけているオチを待つ」という、そういう変な作りの映画です。ネタ的には「17歳のカルテ」と同じ監督作品の名作級サスペンスホラーと少し被るのですがネタが被ってるだけで中身は全然違います。そんなものよりやはり一番描きたかったのは単にロリコン美少女たちだけだったような気がします。

「ザ・ウォード」の見どころはそういうわけで特にありません。いや、女の子たちですね。これが見どころです。

特に面白いところもないし褒めるところもありませんが、かと言って貶したり怒ったりということも全然ありません。これはこういう映画です。そういう映画ですから問題ありません。まとめると「嫌われない映画」と言えるかも。これはこれで大したものだと思います。

ジョン・カーペンターはたくさんの実績もありファンも付いている大御所です。こういったどうでもいい映画を楽しく撮るのも見るのも結構なことなんじゃないかと思います。見終わった直後は「何とも中途半端などうでもいい映画を観てしまったな」とちょっとだけ思いましたが、そんなことは宇宙にとって些細なことです。

 

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