ライフ・イズ・ミラクル

Живот је чудо
ライフ・イズ・ミラクル

セルビアとの国境近く、ボスニアの山間部に暮らす鉄道技師ルカの物語。オペラ歌手の妻とサッカー選手を夢見る息子、そして動物たちと暮らしています。時は1992年、ボスニア紛争勃発です。シリアスな時代背景におけるコミカルな恋の物語が始まります。

ライフ・イズ・ミラクル

エミール・クストリッツァ作品です。「パパは、出張中」「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」です。

「ライフ・イズ・ミラクル」はユーゴ内戦のシリアスな背景設定、舞台となった小さな村の素晴らしい景観、そしてシリアスな設定にもかかわらず楽天的でユーモラスな人物たちを描いた寓話的童話的コミカル映画です。

「ライフ・イズ・ミラクル」なんていう大袈裟なタイトルが付けられていますが、タイトルから連想する「悲惨な紛争に巻き込まれた人生の奇跡」みたいな大仰な感動大作ではありません。ボスニア紛争も全然ややこしくありませんし戦争の埃臭さもありませんし、ぜんぜん悲劇でもないし、軽妙です。リアリティ系の深刻な映画ではありません。

まずユーゴ内戦からいきます。まあこのあたりの歴史も大国の都合で揺さぶられ続ける幾多の国と同じく、ややこしい限りとなっています。
最初が何かなどはわかりませんが、とにかくユーゴスラビア解体の動きの中での独立運動を巡る紛争ですね。91年のクロアチア独立宣言がとりあえずのきっかけですか?でもクロアチア紛争の原因はもっと遡らなくてはなりません。きりがないのでクロアチア紛争についてはちょっと置いときます。
この独立宣言をきっかけにクロアチアとユーゴスラビアが武力衝突。そしてこれを機にボスニア・ヘルツェゴビナの独立を求める側(ボシュニャク人・クロアチア人)と独立に反対する側(セルビア人)で対立が起きたんですね。両者自治区を作ったりしたものの、独立側である政府が反対側のボイコットも気にせず住民投票を行って独立を宣言、ECがこれを認めて国連にも加盟したわけです。
これにむかついたセルビア人は大規模な軍事行動を開始、泥沼化します。
その後の詳しいことは譲るとして、そんなわけで内戦状態です。
この内戦の始まりが「ライフ・イズ・ミラクル」の背景にあります。
主人公ルカは楽天的で、友達の軍人も「大丈夫、戦争なんてないさ」などと暢気に構えていますがその直後紛争が起きます。

でも大丈夫。全然大丈夫。紛争が起きたという程度の認識があれば問題なく映画を楽しめます。
本当は内戦について言いたいことや描きたいことが山ほどあるはずですが、エミール・クストリッツァは巧みに軸をずらします。小さな村の人間中心、コミカルなやりとり中心なのです。悲壮感漂う世界で、童話のようなお話が展開します。紛争については人として知っていたほうがいいのですが、知らなくても映画を見る分には問題ありません。

さて次は映画の舞台になった村です。ボスニアの山間部の田舎です。牧歌的です。映画の冒頭は、おじいさんがひとりで重い荷物を担いで丘を歩いているシーンです。誰かの名を呼びますが来ないようです。「おーい」誰も来ません。
この冒頭の素晴らしい景観、これこそ「ライフ・イズ・ミラクル」を貫く重要な景観描写の始まりです。映画全体を通して、美しい景観が惜しみなく登場しますよ。ほんとにね、もうね、たまらなく美しい景色です。童話の挿絵の世界です。夢の景観です。くらくらします。景色だけで泣けてくるぐらいの威力です。
山間部の村に鉄道がやってくる話が絡みます。主人公ルカは鉄道技師です。
村人は汽車で移動するのかというとそうじゃなく、この線路をトロッコだったり、タイヤを改造した自動車だったりを使って移動するのです。移動手段はこれしかないのかというほどの線路脇のトロッコ世界です。牧歌的です。これもまた童話のような設定ですね。
冒頭のおじいさんが呼んでいた名前はロバの名前でした。荷物運びのロバが線路に立ちふさがって動きません。「このロバは絶望していて自殺を目論んでるんだ」

映画の舞台となったこの村ですが、エミール・クストリッツァが景観を気に入り、なんと村ごと買い取って Kustendorf という名の村を作りあげたのだそうです。どひゃー。驚きですね。でもそこまで監督を惚れ込ませた景観ですよ。気持ちはわかります。皆さん方もぜひ「ライフ・イズ・ミラクル」の景観を堪能してください。

Kustendorf は撮影のためだけに買い取ってその後ポイしたわけではありません。自腹で映画館や映画学校やレストランを建設し、2008年からは映画祭も開催しているそうです。セレモニーには著名人もあつまり、年々盛り上がりを見せているらしいですよ。Kustendorf映画祭です。

いいですね。文化・芸術は人間の最も重要な価値です。こういうことが出来て、羨ましすぎて泣けてきます。
芸術を軽視する国など滅びてしまえと私は常々思っております。もう滅びることが明白な文化劣等国の国民として絶望のあまり線路に立ち止まって自殺したい気分になってきますので次行きます。

シリアスな背景設定、美しい景観、その中で繰り広げられるドラマはどんなでしょう。
これがまあ、ユーモラスな童話のようなお話です。
主人公ルカにはオペラ歌手の奥さんとサッカー好きの息子がいます。牧歌的にある程度はしあわせに暮らしていますが、ある日奥さんは謎のハンガリー人と駆け落ちして消えてしまい、息子は徴兵されて軍に召され、しかも直後に戦争が勃発し敵側捕虜になってしまうというとんでもない状況になっていくんですが、そこに至るまでは村のコミカルで不思議な出来事がつらつら語られますので筋を追うことを急いではいけません。

「はてさてどんな映画なんだろう。シリアスもの?悲劇?感動ドラマ?」と何も知らずに観ていたら、まず景観に圧倒されその次は熊事件に超驚き、トロッコで楽しみ、素晴らしい音楽に触れ、そうやって先の読めないこの映画を徐々に堪能出来るという案配です。私はそうやって観ましたので何もかもが驚きで楽しくて、目一杯楽しめました。

息子が捕虜になった後は、敵側の令嬢が捕らえられてルカの元にやってきます。「捕虜交換の交渉に使おうぜ」というわけですが、この令嬢とやらがやたら可愛くて良い子で、だんだんとね、この娘とね、恋にね、ロメオとジュリエットみたいにね、まあ皆まで言うまい。
でも映画紹介ですでに触れられているので「ライフ・イズ・ミラクル」にちょっと興味のある人にはもう知れてしまっているでしょうから仕方ないですね。何も知らないまま観て物語を堪能できた人はおめでとう。知って観た人もそれなりに楽しめるはずですが。

ルカの人柄をはじめ、この女の子の人柄、それからおじいさんにロバに郵便局員、変なハンガリー人やいろんな人が楽しい魅力に満ちています。今回もMovieBooではこうやってだらだら長文を書いていますが、本来この映画は「おもしろかったです」の一言で感想が終わってしまいそうな作品です。ややこしい解説なんかいりません。

そして音楽です。音楽いいですね。エミール・クストリッツァがギターで参加しているノー・スモーキング・オーケストラです。今作も、このバンドの音楽がたっぷりすぎるほど堪能できます。凄く効果的な使われ方をしている驚愕の部分もあれば、音楽うるさすぎるやろと思ってしまうほどの使用過多部分まで、ノー・スモーキング・オーケストラの音楽大フィーチャー祭りです。メンバーも出演しています。

村人も音楽好きで、何かあれば演奏しています。これがまたいい。音楽は言葉で詩で感情で表現でコミュニケーションです。音楽がある村はそれだけで生き生きします。

演奏シーンは多いわBGMは多いわ、ミュージカルかと思うほどの音楽もたっぷり堪能してください。

*

というわけで、結論はサバーハ役のナターシャ・ソラックの可愛さに悶絶。

Natasa Solak-2 life is miracle

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「ライフ・イズ・ミラクル」への3件のフィードバック

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