ミラル

Miral
ミラル
公開年:
2010
製作国:
監督:
製作:
製作総指揮:
  • フランソワ=ザヴィエ・デクレーヌ
脚本:
原作:
撮影:
  • エリック・ゴーティエ
主演:
出演:

イスラエル出身の女性ジャーナリストの自伝的小説をジュリアン・シュナーベルが映画化。イスラエル占領下のパレスチナで孤児たちのための学校を設立し生涯を教育に捧げた偉大な女性ヒンドゥ・フセイニの人生を、主人公ミラルの目線で描きます。

ミラル

何か別の映画を観に行った時にチラシを見つけて「観たいなあ観たいなあ京都に来るかなあ」なんて思ってたら来なくて見損ねていた「ミラル」です。

潜水服は蝶の夢を見る」のジュリアン・シュナーベル監督。主演は可愛子ちゃんフリーダ・ピント。

チラシをチラ見したときはちょっと勘違いしていて、何か偉業を成し遂げた女性の半生を描いた映画で、その女性をフリーダ・ピントが演じていると思い込んでいたんですが、ちょっと違ってました。

これはどういうお話かというと、そもそもはイスラエル出身の女性ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの自伝的小説の映画化です。このルーラ・ジブリール自身は何か偉業を成し遂げたというひとではありません。波乱に満ちた半生ではありますが、この方自身よりもこの方が見聞きしてきたことのほうがドラマチックになっております。そしてルーラ・ジブリールの出身校の設立者こそが偉大な女性でして、ルーラの目線からこの偉大な設立者、ヒンドゥ・フセイニの一生が語られる物語となっております。

ルーラ・ジブリールは「ミラル」ではミラルです。生まれる前から波乱に満ちています。母親のことやその時代のヒンドゥ・フセイニについて語ります。

「潜水服は蝶の夢を見る」でも大胆で特殊な構成の演出を繰り出したジュリアン・シュナーベル監督、「ミラル」でもたいへん面白い構成を作り出しております。

最初に「ヒンドゥ」ってタイトルを出して、ヒンドゥ・フセイニが孤児のための学校を作る最初のステップが描かれます。この最初の「ヒンドゥ」パートは長くはないですが気合いを持って描かれます。この最初がとっても肝心、ヒンドゥ・フセイニの好印象が突き刺さります。

で、どうなってくんだろうと思ったら唐突に「ナディア」パートになります。誰これ。と思ってるとナディアがらみで「ファーティマ」パートにすっと移ります。

おお、これはおもろいぞ。と観ながらわくわくです。このように関連したりしなかったりする人名パートが現れては次に移り、本編主人公の「ミラル」が登場するのは中盤からなんですね。この構成のてきぱきとした面白さは格別です。

こうしていろんな人の人生と歴史を上手にダブらせながら、ミラルとヒンドゥは必然的に出会い、そして情勢に翻弄されていきます。

実は超面白いこの中盤までの展開の後、ミラルがフリーダ・ピントに成長したあたりから構成の面白さは影を潜め、ミラル目線の物語として掘り下げていく展開となります。

その中でとりわけ重要なのは、ユダヤ人女性との交流を描いた部分でしょう。

この女性ならではの友情の物語は、パレスチナ問題を新鮮な目線で見直すことが出来る点で斬新でありリアリティがある部分となっています。

私は性格的には若干原理主義的なところがありますので、やはりパレスチナ問題に関してはイスラエル=悪の図式で見てしまいがちです。しかし、歴史的経緯は悪にまみれていても、もうそこにはすでにイスラエルがあり、ユダヤ人がいて、パレスチナ人がいるわけです。暮らしがあり人間が育ち、混ざりあっている部分もあります。もはや単にパレスチナに返せと言っても分離すらすることが難しいという現実があります。この現実を生活者目線でびしっと描いたユダヤ人女性との交流シーンはお見事です。ちょっと考え方が柔軟になります。

さて、孤児のための学校を開いてずっと続けている知性と教養あふれるヒンドゥ・フセイニこそがこの映画の中心人物です。

博愛に満ちており、知性と教養こそが世界を救うのだと判っておられます。孤児の生活と教育に一生を捧げたこの偉大な女性と交流を持てたことが、ミラル(=ルーラ・ジブリール)の一生を決定づけたのは間違いありません。

で、この偉大なヒンドゥを演じきったのが我らがヒアム・アッバスです。そうです「扉をたたく人」のあの知性あふれるお母さん、「パラダイス・ナウ」の青年の母親役のあの方です。ジャームッシュ映画で変わった役でも出ておられます。

Miral: Hiam Abbass
IMDb

「ミラル」は、てきぱきした構成の展開を堪能する序盤中盤までと、ヒアム・アッバス演じるヒンドゥの生涯を通しての知性と教養の重要さを知る部分、そして少女ミラルが等身大で触れる情勢と人間の姿、そういった複数のテーマが混在する見応えある映画です。

唯一ちょっと残念だったのは、ミラル自身はあまり大したことをしていないのに、エンディング直前で「こうして彼女はその後世界を股にかけるジャーナリストになって大活躍した」という妙な説明が入って褒め称える部分が唐突に現れるところですかねー。まあ、どうでもいいちょっとしたことですが、あれでややガクッと来たのは正直なところです。

いえでもこれはとてもいい映画で、想像していたよりずっとよかったんですよ。社会派映画の女性目線、とてもいいです。
そして知性と教養に望みをかけます。

[広告]

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント