デビル・インサイド

The Devil Inside
エクソシストものです。ドキュメントフィルム撮影中という設定のPOVです・・・。ありゃ。どこかで聞いたような設定ですね。でもいいんです。エクソシストものですから気にしない。
デビル・インサイド

ホラーにはいろんなジャンルがあって、追っかけものやサイコ野郎のスリラー系、幽霊ものに化け物系、B級上等アクション系、虫や動物の自然系、悪魔や宗教のオカルト系、宇宙人から地底人までSF系、ゾンビ系にヴァンパイア系、まあいろいろあります。これほどジャンルが多いのことの原因の一つは、亜流を許す寛容な文化だからです。亜流が生まれ満ち溢れればそれはジャンルになります。

そんな中で、わりと好きなのがエクソシスト系です。ホラーのジャンルは「系」によって特色があったりします。全部じゃありませんがなんとなくあります。ゾンビ系はB級アクションに、ヴァンパイア系はスタイリッシュでかっこよく、そしてエクソシスト系は真面目さやリアリズム寄りの技法と相性がよろしいようです。

最近のエクソシストものを無理矢理まとめると、「エクソシズム」「ゴースト・オブ・チャイルド」「ラスト・エクソシズム」があります。他にもあるかもしれませんがこれくらいしか観てないので知りません。いいの知ってたら教えてください。

エクソシストものと言えば、やはりオリジナル「エクソシスト」が名作で、これに文句ある人はいないでしょう。もう一本名作を上げるとすれば数年前の「エミリー・ローズ」です。これはよく出来ていました。エクソシストものとかオカルトとか、そういうジャンルを超えた、普通に映画としての名作でありました。

最近観たエクソシストものはまあ好きで観てるんで、上記の作品、どれも面白い作品ばかりでした。
今回ご紹介する「デビル・インサイド」は、エクソシスト+POVです。POVというのは一人称カメラの視点で表現する例のあれですね。だいたいが「〜を撮影している」という設定です。
・・・と、言えば「ラスト・エクソシズム」と同じです。

「ラスト・エクソシズム」は、いい加減なことばっかやってきた軽薄神父が、これまでの行いを反省するために自分自身の欺瞞を告発する映画を撮るという設定でした。

「デビル・インサイド」は、むかし悪魔払いの最中に殺人を犯した母親の事件を調査する映画を作るために、撮影クルーと行動を共にする女性のお話です。

まあ「もうPOVは飽きた」なんて声も聞こえてきそうですが、確かにやや飽きが来はじめております。例えば序盤の、とても説明的な「POV的演出」の過剰さがちょっとうざかったりします。
ですが許します。なぜかというとわりと好きだからです。

さて、最近観たエクソシストものと並べたりして、ではこの「デビル・インサイド」はどういうところが個性的なのか、どういうところがありきたりなのか、そもそも面白いのかつまんないのか、どうでしょう。感想文が始まります。

えーとですね、個性的なところはまず悪魔です。ちょっと普通のエクソシストものと違和感を感じるのは、悪魔が平気で人を殺したり、酷いときには宿主も殺してしまうというヤケクソじみた設定です。悪魔教科書というものがもしあれば「いや君、それはちょっと悪魔憑きの常識から外れてるよ」と言いたくなるかもしれません。ちょっとそんな風に感じます。

それから、悪魔に取り憑かれたのが少女ではないという点も変わり種です。主人公女性の母親ですから、昔若くても今はおばさんです。おばさんに悪魔が取り憑いているというのも変わってますね。大丈夫か。

そんな感じで、とても小さな意味で個性的です。でもこれが映画全体の個性へと繋がります。なかなかどうして、ネタバレ嫌いなので言いませんが、脚本の流れは意外さがあって個性的です。この意外さを私は評価します。ワン・アイデアで一本作っちゃった、とも言えますが、いいんです。作っちゃえ作っちゃえ。

映画のお約束な構成からちょっと逸脱したストーリーの流れは、POVの技法とも相まって、観ている間先が全然読めません。というか、時間の経過と映画的盛り上がりのお約束があまり一致していないので「ここ盛り上がるところだな」「このへんでそろそろクライマックスだな」という風に思わないのですよ。時間がどれくらい経ってるかもわからないほどです。そんなわけですから「さてそろそろ次の展開来るか」と待ち構え始めたとたんにエンドクレジットが流れるという、もうね、めちゃ大袈裟に褒めればハネケの映画みたいなそんな突き放した終わり方をします。ただし悪く言えば「ブレアウィッチ」の二番煎じです。

てなことで、やっちまったところもあります。ネタバレを嫌うMovie Booですが、時に例外もあります。今回これから落ちをネタバレしますから、万が一この映画を観るつもりの人は読まない方がいいかもしれません。でも読んどいてもいいと思います。最後の最後に「あほかいな」とばかばかしい気持ちになってしまうのを防ぐことになるかもしれないからです。

「デビル・インサイト」はなかなかそこそこ面白い映画ですが、やはり根底にある「ブレアウィッチ」の影が残念感を出してしまいます。すなわち、言いますよ、今から書きますよ。すなわち、エンドクレジットの最後にURLが出てきて「この事件の詳細はウェブで」と、やっちまうんですねえ。

この一文が出てきた瞬間、エンドクレジットまでじっくり見る派の我が家の映画部では、部員全員が椅子からずりっとずっこけて「続きはウェブで!こちらをクリック!かよっ」と、瞬時のツッコミが思わず出てしまうという状態でした。

もちろんURLをクリックなんていたしません。この映画、もしかして今更のメディアミックスを真面目にやっていたのでしょうか、それともおふざけでしょうか、URLを確認していないので真意のほどは不明です。その真意こそが、この映画の最大の謎なのであります。

Fernanda Andrade
Fernanda Andrade(リンク元消滅)

てなわけで悪魔憑きのおばはんの娘を演じたのはラテン系美女フェルナンダ・アンドラーデでありまして、ブラジルはサンパウロ生まれのお姉さん。主にテレビドラマで活躍しておられます。いえ、特に才能に秀でた女優というふうにも感じませんが、賑やかしにブロマイドをひとつ貼っときますね。

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