ドライヴ

Drive
ドライヴ
公開年:
2011
製作国:
監督:
脚本:
音楽:
  • クリフ・マルティネス
主演:
出演:

昼は整備工と映画のカースタントマン、夜は強盗の逃走を手助けするドライバー。孤独な男がお隣さんの人妻に一目惚れ。よっしゃ彼女のために一肌脱いでやろうじゃないの。という任侠系映画。

ドライヴ

噂の「ドライヴ」です。どういうわけか世界中で受賞の嵐。批評家に受けまくり。カンヌで監督賞まで受賞しています。いわゆる「カンヌっぽい」映画ではない作品ですが、この年のカンヌは並み居る傑作名作を押さえて何故か「ツリー・オブ・ライフ」なんかがパルムドールだし、ちょっと変わり種です。審査委員長がロバート・デ・ニーロやミシェル・ゴンドリーやポン・ジュノってんだから、カンヌらしからぬ選択も個性のうちでしょうか。しかし11年のカンヌはなんとなく腑に落ちません。

というわけで「ドライヴ」ですが、二重生活を送る裏ヒーローの物語です。惚れた人妻のために一肌脱いである事件に関与するお話ですが、この男が、健さんのヤクザ映画なんかを彷彿とさせる寡黙で孤独なやつでして、それでいて優男で、惚れっぽくかつ弱い部分も持っていたりします。ふらりとやってきた街で地味に働く振りをしつつ裏ヒーローとして暗躍しているという設定です。

冒頭は夜の活躍を描きます。これは、この男の裏の職業を説明するシーンになります。カーチェイスの表現は良い出来で、ただ激しいだけでなく、緩急とりまぜた知恵のある逃走劇で見応えもあります。掴みはばっちりです。主人公の才能を描く目的のオープニングとして正しいあり方ですが、正しすぎて当たり前の演出であります。

人妻に惚れて仲良くなるシーンは、なんと「モンタージュ」による演出です。音楽が流れ、母子と楽しく過ごすシーンの断片が映し出されるという技法です。これも正しい技法の採用と言えなくはないですが、正しすぎて陳腐です。こうした「お約束」シーンは、完全に省略するか、別の方法で仲良しになる課程を描ければ良かったのかもしれませんが、ひょっとしたら監督は「面倒だから」と王道の撮り方でさらっと逃げたかっただけかもしれません。

この「ドライヴ」という作品はどう見てもB級テイストの娯楽活劇ですから、その内容のほとんどが陳腐でありきたり、格好付けと雰囲気で出来ています。いわゆる関西弁で言うところの「ええ格好しい」の「いちびり」映画です。そしてそれがこの映画の良さでもあります。任侠映画としてのお約束をしっかり踏襲して、その中でぴりりと個性を出せればそれは成功です。

序盤を観ているあいだはクール系の映画と思いがちですが、話が急展開するころには俄然面白くなってきます。暴力です。
今時の映画では暴力シーンへのこだわりが重要なポイントとなります。「ドライヴ」の暴力シーンはとてもいいです。どのくらいいいかというと、暴力シーンを観ながら思わず頭に浮かぶ「エスクレメントーっ」のイメージです。「エスクレメント」ご存じない? そうですね。「おれの血は他人の血」という筒井康隆氏の小説です。普段はおとなしいサラリーマンにスイッチが入るとバイオレンス・マシーンと化し、「エスクレメント!」と叫びながら発作的残虐行為を繰り出すというアイデアです。あの頃、一時期ヤクザ小説みたいなのをたくさん書いておられまして「男たちのかいた絵」なんかもそうですが、暴力や拷問シーンの強烈さで受けまくっておりました。土下座する男の頭を踏みつぶすとか、そういった表現は筒井ファンにはお馴染みです。
21世紀になって、ああいったハチャメチャ暴力の映像化が実現したという、そんな喜びを感じます。

というわけで突如面白くなってきて「行けー」とか「やれー」と思ってわくわくしていたら、これが不思議なことに後半しゅんとしぼみます。ネタバレごめんですが、後半からラストにかけてはそういった面白さが持続しません。おとなしくなってしまいます。しかもちょっと不満が残るタイプの思わせぶりな演出が鼻についたりします。これは一種のクールダウンでしょうかね。そうだとすれば、ちょっと演出が優等生すぎるような気もします。

さてこの物語はロサンゼルスの都会が舞台ですが、どう見てもロサンゼルスでない変な場所に見えます。ここどこですかという感じです。登場人物相関図の狭さといい、チンピラヤクザの勢力図といい、整備工場や質店のロケーションといい、走ってる車の少なさといい、田舎の小さな村で起きた事件に思えます。その割には主人公と人妻のアパートはゴージャスでトレンディドラマみたいな高層ビルだし、ときどき取って付けたようなL.A.の夜景が映るし、摩訶不思議空間の違和感を強く感じます。
こういうのは悪いことではなく、むしろ好きです。嘘くささが充満していて、B級任侠映画の世界観と合致していると個人的には思っています。
映画のストーリー全体の妙な雰囲気もそうですが、この違和感がどこからくるのだろうと思っていたら、「マシニスト」という映画の違和感とよく似ていることを思いつきました。
「マシニスト」ではロサンゼルスであるべき街を改造したバルセロナで撮影したために不思議な効果を生んでいました。
それと似た感じです。とすれば、デンマーク出身という監督の魂から滲み出た違和感なのかもしれませんがどうだかわかりません。

というわけで、面白いところや残念なところが渾然一体となった「ドライヴ」でした。残念なところは敢えて書きませんがそういった部分のほとんどに「演出がなぁ...」と思わせられたので、なぜ監督賞を獲ったのかぜんぜんわかりませんでした。

見終わったあと、面白さを見いだそうと映画部で話が盛り上がります。
「よし。さっそくパート2を作ろうやないの。次の街でも大活躍」
「監督はロバート・ロドリゲスでお願いします」
「それええな。でもどんな映画になるかもう頭に浮かんだから作る必要ないわ」
「それやったらパート2は『ドライヴ 0』や」
「お。いきなり0来たか」
「ナルシーで気が弱い兄ちゃんが事故で瀕死、輸血した血がマフィアの血」
「それ以来ぶち切れて大暴れするタイプに変身。前の街を滅ぼしたあとロスまで逃げてくる話やな」
「丸パクリやがな」
「整備工のおっちゃんとの人情話もフィーチャーしてあげんとな」

くだらないことを言ってないでここらで終わっときます。

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