ホースメン

Horsemen
予告編はおろか公式サイト、果てはキャッチコピーにさえネタバレを含めた悪意ある配給の元で公開された残念なサスペンス映画。
ホースメン

予告編でネタバレしてると噂を聞いていたから極力情報を遠ざけていたのに、別の場所で予告編をうっかり見てしまった。「あっ。これ観ようと思ってたホースメンじゃないの」気付いたときには既に遅し。ネタバレ全開されました。

そんなわけで本編を観ても全く楽しめなかったんですが、もともとそれほど出来の良い映画でなく、ネタバレを知らなくても面白かったとは言い難いのでした。ネタバレ全開の理由も見終わって納得。これは、普段映画をあまり観ない人、もしくは物語を追う訓練の出来ていない青少年向けのテレビドラマのような映画で、「事前にストーリーや見所を知っていないと観る気がしない」というような層を相手にした作品なのでしょう。

事前に予告編やストーリーの流れ、クライマックスはどういうシーンか、オチはどうなるのか、それらを全て知ってからでないと映画を観ないという不思議な層が存在するのは事実です。そんな馬鹿な!と叫ぶ前に、映画が好きになった幼い頃を思い出してみよう。あの頃は、そうだったそうだった、予告編を何度も何度も観まくり、映画紹介記事を読みあさり、大体どのような映画かを大いに確認してから、それでも楽しみにして映画館に足を運んだものです。よく見知っているシーンが本編に出てきては満足し、知らないシーンを観ては興奮したものじゃなかったか。あの幼さ、あれは年齢的に幼いからだけではなく、映画の観客としての幼さ故なのだ。ああいう時期は大事だ。ああいう時期に観るべき映画も大事だ。映画の全てが大人向けのマニア向けの素晴らしい作品であらねばならぬ理由などない。これでいいのだ!

ちょっと力みすぎました。

さて、内容は配給会社が自らネタバレしているように「羊たちの沈黙」と「セブン」の劣化した亜流で、2008年の作品なのに何ら新しい要素も捻った部分もない、それどころかシーンの一つ一つがやけに古くさく、あらゆるシーンが、誰でも見覚えがあるオーソドックスな撮り方の映画となっております。

この古くささは何であろうか。考えた。これは、監督が古くさく撮ることを目的にしたのではなく、効率よく撮っただけではないでしょうか。

ハリウッドの手慣れたベテランスタッフ達に囲まれ、その職人達にお任せしてスピーディーに撮ったのです。拳銃を構えてどこかへ乗り込むとか、忙しい父親と子供達のすれ違いなど、定番シーンには撮り方のノウハウがありましょう。全く以てノウハウ通りの撮り方で隙がないのはそれが職人仕事だからです。きっとそうだ。多分そうだと思う。

これらノウハウは新鮮味に欠け面白くも何ともない撮り方ですが、先人たちが培ってきた高度な技術の集大成でもあります。オーソドックスという域に達する技術を習得した職人たちの普通の仕事、職業としてのルーティン、業界にとっても世界にとっても必要なものです。

映画は大した出来ではないかもしれませんが、だからといって強く否定する気にはなりません。

2010.04.24

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