プロメテウス

Prometheus
こないだの夏に鳴り物入りで登場していたリドリー・スコットの「プロメテウス」です。「エイリアン」の前日譚のような案配ですがまあさほどのものではありません。
プロメテウス

ハリウッドでは企画が立ち上がったあとあっちに転びこっちに転び、なかなか決定されない経緯を持つ作品は残念な仕上がりになることが多いそうです。ビジネスに翻弄されて中身がいい加減になってしまうとかそういうところでしょうか。

この「プロメテウス」という作品、そもそもは「エイリアン5」として企画されてジェームス・キャメロンが監督する手筈だったのですが作品の内容に納得出来ず断ってしまいまして、その後「5」の内容を継承しつつ「エイリアン」の前日譚として仕切り直し、リドリー・スコットがプロデューサーとして事を進めていましたが、会社の希望で監督することになったそうです。

脚本も予算減のための手直しを施し、もうちょっと大人向けがいいなあと思っていたリドリー・スコットの希望に対してもうちょっと子供向けがいいなあと会社が要求、まあそんなこんなでいろいろあって、「エイリアン」の前日譚っていうネタも「そうとも言えるしそうでないようにも続けられる」なんていう中途半端なものに落ち着き、ドタバタのあげくにこのような姿で世界公開となったという、そういう経緯だそうです。へぇ。

最初にこの映画の噂を聞いたときは「撮影中の秘密厳守」とか「『エイリアン』に繋がる話」とか「リドリー・スコット本気」とか、期待に胸膨らむようなそんな話ばかりでしたので夏前にはわくわくしておりました。でも夏は他の映画や他の用事で忙しかったので観たかったけど仕方なしに見送ってたんです。で、公開後に情報遮断しようと耳と目をふさぎつつもちらほらと聞こえる芳しくない感想の数々にちょっとだけピンと来て、それで、ああそうなのか、そういう感じなのかと勝手に納得してその後はこの映画のことを忘れていました。

でも折角DVDも出たので、宇宙SF好きとしてはやっぱり自分の目で見ておかないと納得出来ないというわけで観ました。

「プロメテウス」が「エイリアン」の前日譚かどうかはどうでもいいとしても、「エイリアン」に繋がるっぽいそれっぽいシーンが目白押しで、だから久しぶりに最初の記念すべき「エイリアン」のことを思い出します。

懐かしや「エイリアン」の公開時には学校サボって京都スカラ座という映画館に出向き、冷房効き過ぎて寒い上に映画の内容も怖いもんだからガタガタ震えながらかぶりつきの席で堪能したものです。
「エイリアン」から遡ること3、4年、京都二条にあった妙なスポット「京都レザリアムセンター」というレーザーショーの小屋が大好きでここに通っておりまして、特にそのとき初めて聴いたELPというプレグレバンドがお気に入りでファンになり、後に買ったレコードのデザインがその時夢中だったH.G.ギーガーで、そのギーガーが宇宙人のデザインをしていると聞いて小躍りしていたってのもあります。「エイリアン」直後から近辺でもギーガーが大ブームとなり、画集やインタビューなんかにも気軽に触れられるようになって、ブームのおかげ、と歓迎していました。

そんなわけで、特に「エイリアン」という映画にのめり込んで思い入れたっぷりってこともないのですが、ちょっとしたそういう思い出が付属しているので懐かしさ得点がプラスされていて、数年後の「ブレードランナー」なんかよりは好きな映画でした。ところでギーガーの絵の色調、黒と白と茶色ですが、これは飼っている猫の色だったそうですよ。お茶目ですね。

というわけで個人の思い出などどうでもいいのですが、この「プロメテウス」に関しては言いたいこともないし、何か言うと貶しているように見えてもいけないのでなんとか他の話でまぎらそうかと。

さてシャーリーズ・セロンが出ています。美女と言えばこの人、この人と言えば美女、シャーリーズ・セロンです。この人、最初主役になりかけていたそうですがブッキングの都合でこの役になったそうですね。主役だったらよかったのにねえ。

大抜擢のノオミ・ラパスは「ミレニアム」で一躍スターになったラッキー女優で、この人自体は人の良さそうな好感度高そうな人ですが、実際ドラゴン・タトゥーも「プロメテウス」の主人公も、何かあまり合っている感じがしません。派手派手しい役より、もうちょっと地味な感じの役が向いているんではないかと思うんですが思うのは勝手。

みんなは「仕方がないからCGでも褒めておこう」って感じのようですが、私はというと劇場スクリーンで堪能していないせいもあって、他の優れたCGの作品と比較しても「プロメテウス」が特に良いという印象は皆無です。「バトルシップ」のほうがCGも内容も遥かに面白かったです。3Dで観たらちょっとはましだったんでしょうか。

おっと何か言い出すと貶しているように見えますが、貶す気は毛頭ありません。リドリー・スコットさんはそれなりに頑張ったはずだと思うし、弟さんのことも気の毒だったし、むしろ応援したい気持ちです。このおっちゃんを貶したり罵ったりするのだけは許しません。

ただまあ脚本はどうあがいても擁護のしようがなく、駄目な脚本が演出の力で何とかなるなんてあり得ませんで、リドリー・スコットはプロデューサーでもあるのですから、このような脚本で企画が進んでしまうことを阻止できなかったことだけが残念といえば残念です。

でもね、とはいえ、自分も含めてマニアのみんなは何かご大層な映画を望んでいたかもしれませんが、当の作った本人はもっと大人で、「エイリアン」も「プロメテウス」も、普通に少年少女向けの宇宙化け物映画を作ったに過ぎないのかもしれないんですよ。「ほらー。こんなの出来たよー。みんな観てねー。こわいよーっ」って感じで。勝手にファンがマニア化してどうってことのない作品を神格化するのは良くある話です。

そう思うと「プロメテウス」も実にほほえましい良い作品に思えてきま・・・・きませんけど、少なくとも文句を言おうなんて気持ちは全然沸きません。

こういうのもあっていいんじゃないでしょうか。少なくとも観ている間はまあまあ面白い。SF仕立ての昔映画風冒険活劇化け物映画「プロメテウス」でした。

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