インブレッド

Inbred
インブレッド
公開年:
2011
製作国:
監督:
脚本:
音楽:
  • デヴィッド・アンドリューズ
特殊メイク:
主演:
  • ジョー・ハートリー
  • シーマス・オニール
出演:
  • ジェームズ・ドハティ
  • ジェームズ・バロウズ

人里離れた小さな田舎の村に訪れた強制奉仕活動の若者たちとその保護観察官。
予定通りこの田舎の村には頭のイカれた連中がおりまして、まんまと餌食にされます。イギリス発人体破壊狂人殺人系映画。

インブレッド

実にありがちです。田舎に訪れた若者と引率者が気違いの餌食になるというそれだけの映画ですが、ありがちなことに文句など全くありません。問題はこれがどういう手の映画であるかということですね。同じ殺戮映画でもいろいろあります。

シリアスで怖い追っかけ物なのか、残虐のぶっ飛びドシャメシャゴアなのか、狂気でアートなのか、無茶苦茶で大笑いなのか、青少年向けの娯楽系なのか、斬新ですごい傑作なのか、インディーズの洒落た一品なのか、どうでしょう。どんなんでしょう。

こんなんです。

えーと、前半はわりと真面目にやります。シリアスな映画かな、と思える真面目さです。シリアスな映画の場合、殺人や切り刻みがたいへん恐ろしく思えたりしますから、観ていても緊張感漂います。
で、その緊張感を後半まで一応引きずりますが、ややテンションが変化して、コメディ要素がふんだんに入ってきます。コメディ要素はややシニカルで「にんまり」系のものです。イギリスらしいといえばイギリスらしい気もします。
当然のことながらモンティ・パイソン風味が含まれます。イギリスにおけるモンティ・パイソンはもはや神話のレベルでDNAに組み込まれています。

この手の映画で、前半と後半がぱっきり別れていて、全然別の映画のような展開になるというのがよくあります。最初にそういうのに触れたときには小躍りして喜んだものですが、今の時代、そういう展開そのものが「よくある展開」となってしまいました。そういうの好きなんでよくあろうとどうだろうと気にしないんですが。
で、つぎにそういう展開の発展系として、前半と後半のテイストをさりげなく変えていくという映画も出てきます。
例えばタランティーノ映画のように、前半めちゃくちゃ本気で怖いものが、後半その怖さそのものが面白い物に変化するようなそういう高度な演出です。ホラー系では「ホステル」なんかもそういうテイストですね。

「インブレッド」も若干そっちに近いです。
前半はシリアスに怖いのですが、だんだん少しずつ印象が変わってきたりします。
例えばステージで殺される一人目は悲惨きわまりなくて、目を背けるような痛々しいやられ方をします。
「二人目はもっとすごくて恐ろしいぞ」と映画内で宣言されて、このままではどんな恐ろしいシーンが待ち受けているのかとドキドキしていたら、これがまあ、裏をかかれるというか、ここらあたりから映画そのものの様子が少し変わってきます。

残虐な映画ってのは、ただ残虐なだけでは映画としてあまり面白くありませんので、そこはいろいろな工夫がなされます。その中でも残虐にギャグを含ませることは定石でありまして、大抵のゴアファンは体が破裂したり目玉が飛び出るシーンを見て笑い転げたりします。これ、残虐描写に慣れていない健全な普通の人が見たら、映画の中の狂人と同じくらい見ている人も狂人に見えるんじゃないでしょうかね。

というわけで、ぐちゃぐちゃの残虐は、ふざけたものになっていったりしてそれなりに面白いです。
怖さのテイストがシニカルなにんまり笑い方面にシフトしていく構成と、残虐ギャグのモンティ・パイソン的な要素がお気に入りの要素となりました。親子の会話とかもいい感じです。そしてネタバレしたくないのでいいませんが、最後なんかはとてもよろしいです。気に入り成分が3箇所以上あるので、基本的に「あー面白かった」と褒める映画というのが結論です。

ですがつまらないところも多くあります。
まずやっぱりありきたりなところです。それから、前半のシリアスなドラマの出来映えがよくありません。
登場人物がちゃんと描けてませんし、脚本も適当すぎます。シリアスにやるのなら、人物紹介を兼ねる前半をちゃんと撮らなくてはいけません。
私が褒めるホラーやスリラーは、大抵まずこの部分がちゃんと出来ています。短い時間で人物を立たせ感情移入を促しドラマとしてのめり込ませる第一歩、映画技術の基本の部分です。

「インブレッド」の前半はここがかなりいい加減で、食事の件や廃電車のシーンは投げやりかつどうでもいいような脚本と演出と演技で、これはあきれます。イギリス風味もへったくれもないし、必然とかもないし、ただの「前半の退屈なシーンの羅列」にすぎません。飯を食う食わないだけのことでも、ちゃんとやってもらわないと気がかりでしかたありませんよまったく。
パブのシーンが良かっただけにちょっと残念。

あとはクライマックスあたりの例の地下のあのシーンもせっかくなのに残念な出来でした。あとほら、狂人どもの狂人ぶり不足とかも若干、弱さを感じるところです。ですがまあ、そういうのは十分許容範囲です。その後の最後のところもめちゃ良かったんで。はい。

まあそんなわけで、新しいブリティッシュホラーの幕開けとか、斬新とか、凄いとか、そういうのを期待してはいけません。大した作品じゃありません。でも悪くはないし、私はむしろ好きです、この映画。

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