エデン

Eden
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公開年:
2012
製作国:
監督:
脚本:
撮影:
主演:
  • ジェイミー・チャン
  • マット・オリアリー
出演:
  • ボー・ブリッジス
  • スコット・ミシュロウィック

売春や人身売買の組織に拉致られる中国人移民韓国系アメリカ人の少女を描いた実話ベースの物語。
予告編を見ると「リアリズム系衝撃犯罪映画」または「痛快残虐女性奮起バイオレンス」と普通の人はだまされますがそういう映画ではなく、比較的淡々として人物表現に重きを置いたドラマチックな作品です。それを合点するといい映画です。

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ニューメキシコに住む韓国系家族の娘ヒョンジュはとても良い子ですが、うっかりバーに遊びに行って色気を出してしまったがために悪い男にだまされて連れ去られます。
ただ連れ去られたのではなくて、とんでもない悪の組織です。売春と人身売買を生業にしている大がかりな組織の末端組織です。誘拐した少女たちを隔離して住まわせています。

実話ベースというふれこみですので、ある程度、事実を元にした映画と思われます。誘拐、拉致、売春、人身売買を組織的に行っているアメリカの闇社会です。映画ではお馴染みですがこういうのが実際にあるというのは何とも恐ろしいことです。

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で、それですね、それはそれとして、この「エデン」という映画ですが、実話ベースという部分は映画的にはわりとどうでもいいです。配給会社や独占レンタルのツタヤでは何やら「衝撃」だの「監禁シチュエーションサスペンス」だの煽るだけ煽る宣伝をしていますが、完全に的外れです。予告編も見たんですが、予告編の編集は酷いの一言です。
多分、予告編を見て、それから「衝撃」とかそういうキャッチコピーを見て、この映画を観たくなる人の多くが、衝撃描写満載のリアリズム系犯罪映画、またあるいは、主人公少女が最後奮起して悪人をなぎ倒す痛快残虐バイオレンスアクション映画と思うはずです。
予告編だけを見たら必ずそのどちらかであろうと誰もが思います。私も最初はそう思いました。でも違います。

まずリアリズム系の衝撃シーンというものはありません。ほのめかしはしますが描きません。予告編にいくつか暴力的なシーンがありますが、あれが全てです。映画全編の中で、数少ない暴力的シーンを選りすぐって全て繋げたのがあの予告編です。シーン的にはオールネタバレです。しかもそういうシーンだけを繋げたものだから、とてつもないバイオレンス映画に見えてしまいます。
売春を扱いますが、エロティックなシーンもありません。ほのめかしはしますが描きません。
この映画、どちらかというと優等生的な作りです。きついシーン、エロシーン、目を背けたくなるシーンなどはほとんどありません。

ではどういう映画なのかというと、淡々とした映画です。インディーズ系とかサンダンス系とか言うと映画の雰囲気がだいたい伝わりますか。そっち系のが好きな私どもには好感触です。

旅の映画ではありませんが、旅する物語みたいな印象を受けます。昔からのオーソドックスの物語の派生といいますか、例えば冒険の物語があったとして、途中でトラブルに遭い奴隷商人に捕まって何年も脱出できないなんていうシチュエーションがありますが、そういうのと共通するものを感じます。
つまり若干の嘘くささを内包する少女の困難物語です。

主人公女性の困難な旅(旅はしませんが)を描くアイドル映画みたいなこの作品、で、それでぜんぜん面白くなかったのかというとこれがとても面白いのでした。

どういうところが面白かったのかというと、まさにオーソドックスの旅の物語としての面白さです。

例えば奴隷商人に捕まったら、奴隷仲間の友人が出来ます。はい、この映画でも友人が出来ます。でもその友人とのドラマはよくある映画のようには強く描きません。ちょっと適当です。

奴隷仲間でも厭なやつとかいたりします。はい、この映画でもいやな奴隷仲間がいます。でもどれほど厭なやつかと思ったら、全然厭なやつでなかったりして、可愛かったりします。わりと適当です。でもそこがいいんです。

巨大な悪の組織ですが登場する連中は末端の構成員だけで、数人しか出てきません。最初怖いのですが、ずっと一緒にいますからそれなりに個性が出てきたりします。はい、この映画の悪人たちには可愛げもあります。計算の出来ない兄ちゃんとか、いい感じです。

主人公が賢く立ち回り、悪人に一目置かれたりします。はい、この映画でも一目置かれます。
それが脱出へのチャンスを生み出します。そして信用してくれた悪人を裏切ったりします。はい、この映画でも信用してくれた悪人を裏切って、ちょっと「悪人の兄ちゃん可哀想」って思ったりします。

登場人物がみんなちょっとずつ味わい深いところが特によいです。悪の組織のあのおっさんだって、なんだか清潔感があって、部下を息子のように思っていたりします。
最後のほうに出てくるパワフルそうな強面兄ちゃんも「5分だけな」とか優しいし、監視役の下っ端も「おれに許可なくトイレに行くな」と頑張ってる姿が愛らしいし、怖いおばはんも仲良くなったら面白そうなひとです。みんな魅力的です。

監督の意図がどこにあるのかわかりませんし、もしかしたらほんとは怖くてリアルな物語を作りたかったのかもしれませんが、作った人達の人の良さや愛情深さが隠しきれなくて迸(ほとばし)り出た感じです。

この映画の良さをひとことでいうならば、繊細で優しいのです。はい。映画のテーマと裏腹に。

そこで気になって監督・脚本のミーガン・グリフィスって人を調べてみたら、75年生まれの女流監督でした。
ははあ。この繊細さ、優しさ、おとぼけ、愛情の迸りは女流監督ならではなのかもしれない、なんて思ったらジェンダー方面の人に叱られますか。でもお写真を見ると、やっぱり優しそうなひとですよ。

なんだか茶化したように見える褒め方をしてしまいましたが決して茶化していません。ドラマは面白いし、主人公頑張ってるし、青春映画みたいな側面もあるし、インディペンデント系だし、唐突なエンディングもいいし、エンディングのお歌もいいし、全体的にとても良い印象を持ちました。まあ、その、比較するのも何ですが有名作品なら「ウィンターズ・ボーン」とか好きな人なら悪くない印象を持つんじゃないでしょうか。
決してバイオレンス目線で貶さないでください。

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2012年 SXSW 観客賞、特別審査員賞、特別審査員女性監督賞受賞

SXSWって何?と思ったら、テキサス州オースティンで行われているインディペンデント映画祭とのことでした。

[追記]
中国人系と書いていましたが、韓国系の間違いでした。女優さんも韓国系アメリカ人の二世ということで、勝手に思い込んで間違ってました。
コメントにて情報頂き、ありがとうございました。訂正しておきます。

“エデン” への 2 件のフィードバック

  1. 少し気になったので訂正させていただきたいです。主人公は韓国系アメリカ人です。主演の女優さんも韓国系アメリカ人2世です。
    正しい情報を載せていただきたかったのでコメント致しました。
    このページ自体は参考になりました。ありがとうございます。

  2. あ、韓国系の人だったんですか。よく思い出せばぜんぜん中国人っぽくなかったですね。
    ご指摘ありがとうございます!

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