アウトレイジ ビヨンド

アウトレイジ ビヨンド
有名キャストが全員ヤクザで悪者で罵声をたたきつける「アウトレイジ」のこちらはパート2。「アウトレイジ」から5年後だそうです。
アウトレイジ ビヨンド

最初からパート2の製作が公言されていて、すぐに撮影のための準備が行われていたそうなですね。ですがやっぱり間に大震災や原発事故やいろいろあってちょっと遅れて完成したそうです。

北野武映画は話題にもなり海外でも評価されたりしていますが日本では今一成績が振るわないのだそうで、そんななか「アウトレイジ」は国内でも大ヒットしたのだとか。パート2の本作も、動員はかなり多かったようですね。

さて最初の「アウトレイジ」、面白かったんですが芸能界のお祭りっぽい作品であまり強くは印象に残らなかったんです。ですのでパート2にもあまり興味がありませんでした。でも何となく行きがかり上観てみました。

そうするとですね、これ面白かったんです。てっきりパート2は、前作と同じようなノリで、さらに殺しや罵声がパワーアップして、そしてさらに馬鹿馬鹿しくなるという所謂パート2によくあるそんな作風を勝手に想像していたんですが、全く予想が外れました。いい意味で。

前作と大きく異なり、お祭り感やバラエティショー感はありません。最も異なるのは、死に方の工夫による面白さを追求していないところです。死に方はすべて渋くあるいは単純に決めています。そういう部分に注目するようには出来ていません。「アウトレイジ」という作品は、面白おかしく人を殺す作品でしたから、「アウトレイジ ビヨンド」ではまったくテイストが異なる映画となったんですね。それから、話の展開が急ぎ足ではなく、どっしり腰を据えた物語に仕上がっています。

何より個性的で面白かったのは、見た人は皆さんお思いでしょうが、ビートたけし演じる主人公の造型です。

わりと寡黙で無表情、でもやるときはビシッとやるという、一見、昔からあるゴルゴ13や健さん的なそういうキャラクターに見えます。でもぜんぜん違います。
主人公は、ほとんど本気でうんざりしているんです。年も取ってしんどいし、ヤクザを辞めたがっているし、面倒も起こしたくないし、復讐や抗争に興味ないし、ましてや手柄だとか自分の組を持って大きくするとか、そんなことは全く考えていません。
義理人情の男ですから、行きがかり上やるのはやるわけですが、この主人公のやる気のなさが映画をとても面白い物にしています。

悪いやつが彼を焚きつけて何とか大きな抗争事件を起こそうと画策するわけですが、主人公はそんなことを承知しつつ、しかたなしにいろいろやるんですね。
人生に疲れて激しいヤクザ物語に参加する気を失っていると同時に、もうひとつ、若い命を愛おしむ気持ちすら持つようになった表現が光っています。

普通のヤクザ映画なら単なる脇役である若者のチンピラが登場するんですが、主人公が彼らを大事に思っている素振りを見せるシーンがあって、まるで孫を慈しむように声をかけます。

こうした主人公のキャラクター、これはやっぱり震災の影響が少しくらいはあるんじゃないでしょうか。どうでしょうか。わかりませんけど。そういう風にも感じましたでござる。

義理と人情で動く主人公は、自身に関する感情が封印されていまして、それは格好をつけてるわけでも能ある鷹が爪を隠しているわけでもなく、普通に投げやりで無関心なわけです。
焚きつけられて画策に乗ってあげていても特に大きな心の動きなどはありません。
ですが、最後の最後に、ただ一度だけ彼が感情を露わにします。
そのシーンの見事さたるや凄まじい威力。
「戦場のメリークリスマス」のラストシーンで見せたビートたけしの顔演技の再来と言っていいかもしれません。「戦メリ」のあの笑顔とは真逆の、真に感情的なラストシーンの表情、あれは一瞬、映画の神様が舞い降りています。

ぜんぜん期待していなかったのに面白かったら、面白さ倍増ですね。「アウトレイジ ビヨンド」、いい映画でした。

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