Ricky リッキー

Ricky
Ricky リッキー

わけもわからず内容の下調べもせずただ直感的にDVDのカバーアートだけ見て赤ちゃん物だなと合点してこれを観てください。

Ricky リッキー

いやこれは。いやはやこれは。まあ、なんとも。

大体においてちびっ子ものや赤ちゃん物はただ直感のまま情報皆無で見たりするものです。まあよほどのことがない限り可愛いと思えるでしょう。
もう世の中が厭になってしまったあなたや子供を諦めたあなたは、せめて猫を飼うとか映画で赤ちゃんを見るくらいしかすることがありません。

さてフランソワ・オゾン、やってくれました。こんなのはじめて。
赤ちゃん映画であると同時にちびっ子映画であると同時に家族のドラマと同時に愛のドラマ、同時に社会をも描くリアリティと心の在処を描く人間描写とぶっ飛びファンタジーの完全融合です。なんですかそれ。こりゃすごい。たまげた。

ストーリーに詳しく触れず、いつものように冒頭の紹介だけやってみます。

疲れはてた感じの若い母親がどこかで誰かに相談しているシーンからこの映画は始まります。貧乏で子育てに自信をなくし、我が子を施設に入れようかという公的機関への相談です。涙を流す母親に係員の声が「福祉の手当てを申請してみれば」みたいな助言を行います。

社会の底辺に暮らす貧困なる労働階級母子家庭のリアリティが開始数分で示されます。

きっと楽しそうな映画だろうと見始めたのにこの冒頭、ここでまずちょっと驚きます。でも我らちびっ子好きならこの驚きは寧ろ期待への伏線。ちびっ子映画の輝く星「ベルサイユの子」の冒頭を思い出させるじゃあーりませんか。

「ベルサイユの子」も序盤はリアリティ追求型貧困母子の物語を徹底的に描いておりました。人間と社会を隈無く描くフランス映画ならではの徹底描写。その後のちびっ子への感情移入度が俄然高まります。

さてこのとき相談している子供ってのが赤ちゃんリッキーかというとそうではなく、ちびっ子女の子リザです。リッキーはまだいません。

このリザって子が可愛くて。ほんとに可愛くて。わがままなところもあって甘えん坊でしっかりもしていてこまっしゃくれていて、この子を見るためだけに「リッキー」を見てもまったく問題ないくらいです。大注目子役です。

母親はリザを施設に入れることをなんとか回避して、今日も工場労働に出向いています。休憩には人生のオアシスであるところの煙草です。人生のオアシス文化の体現人間性への回帰、それが休憩と煙草です。で、煙草を吸っていると新入りのスペイン人労働者パコがたまたまやってきて「煙草を一本いただけますか」と所望、二人で黙って煙草を吸います。人と人の出会い、敵意のなさの表明、親密さの表現、それが煙草です。

煙草発祥の地には語り継がれている伝説があって、「煙草を分け与えよ、さもなくば争いごとが起こる」といいます。「煙草は怒りと敵意を沈め、戦争を防ぐ」と。まったくその通りです。

コロンブスという冒険家がインドと間違ってアメリカ大陸に上陸したとき、ネイティブの人たちは異国民に煙草をプレゼントしました。コロンブスたちも煙草の素晴らしさに触れて大感激、感激しすぎて煙草を献上してきた野蛮人どもの両手を切り落としました。そういう悪魔のような連中の末裔が「煙草は野蛮人の野蛮な風習」と差別的煙草批判に明け暮れ、そういう連中の下僕で奴隷のどこぞの島国の権威大好きファシストたちは「放射能は安全だが煙草は危険」と意味もわからず猿真似による煙草批判に明け暮れて常軌を逸した差別と攻撃に陶酔している今日この頃、あれ?話がいつのまにかすり替わってます。すいません。

えっと、そういうわけで母親カティとスペイン人労働者パコは休憩による一本の煙草によって出会い、即刻愛が発生します。フランスは愛の国、愛と言ってもゆるゆるふわふわの愛なんかじゃありません。愛と言えば性愛、生々しくも生き生きしている粘液と粘液のねちゃくり合いです。

こうしてカティとパコはくっつき、リザは不機嫌になります。妙な新しい家族の物語が始まります。リッキーはもう少ししてから登場です。カティは妊娠し、パコともども喜んじゃいます。リザは投げやりです。パコがわくわくしてリザに子供の名前は何としよう、と相談します。

てな感じの序盤を経て、いよいよリッキー登場です。まだまだリアリティたっぷりの労働階級家族のお話です。リッキーが生まれてからも生々しい展開が続き、ぎょっとするようなシーンも見せます。こちらはドキドキハラハラ。赤ん坊の背中のアザは果たしてパコによるDVなのか、どうなのか、どうなるんでしょう。あっ。血が。

カティ、パコ、リザ、そしてリッキーです。みんなたまらなく個性的で魅力ある面々。「Ricky」のあらすじ紹介なんかをすでに読んでしまっているひとにはその後の展開がネタバレ済みですし、「そういう」映画であると、これを観る人の多くが既知でありましょう。
しかし私は何も知らずに観ました。だからその後の展開の驚きたるや椅子から転げ落ちそうなほどでした。このお楽しみを出来る限り多くの人にも体験していただきたく、この作品のことを何も知らずにいる人にこそ、見ていただきたい映画であると本気で思う次第であります。

こうして予想を超えた大展開におののいた後も見どころ満載です。赤ちゃん映画のある意味極致。

そういえば赤ちゃん映画の金字塔と言えば「赤ちゃんの逆襲」ですが、あれも大概アホみたいな妙ちくりんな設定でありましたねえ。赤ちゃん映画ってのにはぶっ飛び系要素が必須なのかもしれません。

リアリティと荒唐無稽の完全融合。このラテン文学のような設定を生かし切った分類不能映画、「Ricky リッキー」を是非どうぞ。超おもろいです。

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“Ricky リッキー” への 4 件のフィードバック

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