ピザボーイ 史上最凶のご注文

30 Minutes or Less
ルーベン・フライシャー監督ジェシー・アイゼンバーグ主演の「ゾンビランド」チームがお送りするクライムコメディ。 ピザ配達員とその親友、遺産欲しがるどら息子とその相棒、ふたつのコンビが事件を起こします。今時感覚がいい感じ。
ピザボーイ 史上最凶のご注文

超面白かった「ゾンビランド」のルーベン・フライシャー監督第二弾です。同じく「ゾンビランド」の主演ジェシー・アイゼンバーグとのコンビということで、どんなドタバタ騒動が起きるのかと期待しましょう。

「ゾンビランド」に比べて、こちら「ピザボーイ」はぶっ飛びハチャメチャ感は押さえられています。どんな派手な映画なのかと思ってたら実に淡泊なドラマで、結論から言うとそれが大層よろしかったですよ。

ほどよく力の抜けた普通っぽいドラマで、二組のルーザー親友コンビが主な登場人物なんですが、このそれぞれコンビのすっとぼけた会話や珍妙な関係が面白くてですね、そういった細かな部分が見どころの作品となっております。

一昔前までのハリウッド的なクライム・コメディで男二人のコンビ物と言えばいろいろと思い浮かぶ有名作品などあります。例えば白人同士、あるいは白人と黒人、あるいは白人と中国人などのデコボココンビの刑事ドラマや宇宙人退治やアクション映画など、たくさんありましたよね。ハリウッド的ギャグや格好つけや定番展開に満ちていまして、個人的にあの手の映画は苦手でしたが確かに面白くはありました。一時のハリウッドを代表する作風だったと思います。

「ピザボーイ史上最凶のご注文」は、ああいったハリウッド的コンビ物のテイストとは全く異なる作りとなっているところが興味深いです。何しろ笑いどころが細かく小さいしせこいし、変な間やとぼけた会話に脚本のリキが入っているし、ストーリー展開を中断させる食い下がり方や会話の妙技はヨーロッパのギャグセンスに近いです。

そういえば最近のアメリカ娯楽映画では、登場人物が優しかったり無表情だったり気が弱かったりするパターンも多く見られ、昔のような「嘘くさい夢の作りの憧れ人物」から、「より身の丈世界の人物」を描くようになってきているように感じます。その流れからするとコメディ映画が会話の妙技化するのも時代の流れ、今風なのであると思わないでおれません。

とはいえ、それなりに最後はクライムエンターテインメントとして盛り上がってくれます。上手い具合にいいところでちょっと外してくれたり、脚本・演出的には絶妙です。

ジェシー・アイゼンバーグとコンビを組むインド人アジズ・アンサリも面白すぎるし、ダニー・マクブライドとその相棒、太ったエリック・アイドルみたいなニック・スヲードソンの掛け合いもいいし、マイケル・ペーニャの絡み方も渋いし、昭和ハリウッド的ハチャメチャ大騒動を期待してみる人には「なんだこりゃ」と思われかねないハイセンス路線で大満足。
ジェシー・アイゼンバーグは「ソーシャル・ネットワーク」で大スターになってるのに、この後しれーっと「ピザボーイ」みたいな地味な映画に出演するとか、なんか気が抜けてていい味わいです。

さて、物語はクライムもので、何年か前にアメリカで起きたピザ配達員の惨劇をなぞっています。爆弾を体に括り付けられて銀行強盗して爆死というおぞましい事件でした。テレビやネットでも中継され、世界中に衝撃が走りまして、あの事件をきっかけに「メイクユアチョイス」などとゲーム感覚の残虐事件を起こす映画も多く作られました。

この事件の映画化でしかもコメディ?冗談にしても強烈すぎると思ってWiki見てみましたら、

製作側は事件のことは念頭になかったとしている。[オリジナル記事]

とのことで、ほんまかいなと思いますが念頭にあったらとてもコメディ映画には出来なかったんじゃないかと思うので本当かもしれません。でもあれほど有名な事件を知らないわけないし、実際どうなのでしょうね。
この件に関して否定的意見があるのはわかります。あの事件が頭の片隅にあれば、やはりコメディ映画としては楽しめないでしょう。
この映画、面白いので観るときはやはり事件のことは脇に置いておくしかありません。

というわけで「ゾンビランド」とはまたちょっと違ったハイセンスコメディ「ピザボーイ史上最凶のご注文」でした。

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