ぼくたちのムッシュ・ラザール

Monsieur Lazhar
ぼくたちのムッシュ・ラザール
公開年:
2011
製作国:
監督:
製作:
  • リュック・デリー
  • キム・マクロー
脚本:
原作:
音楽:
  • マルタン・レオン
主演:
  • モハメッド・フェラグ
出演:
  • ソフィー・ネリッセ
  • エミリアン・ネロン
  • ブリジット・プパール
  • ダニエル・プルール
  • ルイ・シャンパーニュ
  • ジュール・フィリップ

担任を失ったクラスに新たにやってきた先生はアルジェリア出身のバシール・ラザール。至って真面目な男です。小学校を舞台に、それぞれが孤独と不安を抱える生徒と教師を描きます。

ぼくたちのムッシュ・ラザール

アルジェリアからやってきたという教師を前に、子供たちは最初珍しそうにしています。はて。移民にはみんな慣れているのでは?と一瞬思いましたが、この映画はフランスではなくカナダの映画でした。

小学校を舞台にしています。初っ端から超かわいらしい女の子と男の子が登場して、一部で変態扱いされているちびっ子映画好きのMovieBoo執筆者としてはもうすでにわくわくです。冒頭のこの二人が子供たちの中での最重要人物、この起用だけで「ぼくたちのムッシュ・ラザール」の成功は約束されたも同然の威力です。

衝撃のエンディングってのはよくありますが、この映画は衝撃のオープニングです。声を上げそうになります。

で、そんなこんなで新しくやってきた担任教師はアルジェリア人のラザールです。

この主人公ラザール氏役のモハメッド・フェラグ、今回クレジットではモハメッドを外したFellagだけですが、この俳優さんの顔や佇まいのなんという穏やかさに味わい深さ。優しそうで知的で何となくユーモラスでそしてちょっともの悲しくもあります。
この俳優の顔だけで「ぼくたちのムッシュ・ラザール」の成功は約束されたも同然の威力です。

原題「ムッシュ・ラザール」には「ぼくたちの」という言葉が邦題に付け加えられていまして、その印象のためコミカルな映画だと思い込む人がいるかもしれません。コミカルなシーンもありますが、基本的に重いテーマを扱った作品です。

それは死です。

そして死から派生する生きている側の人間の苦悩、罪悪感や喪失感や孤独を描きます。

それからラザールはアルジェリア人ですから差別の問題や国際的な問題とも無関係ではありません。これらはさらりと描くに留めていますが、個人の苦悩を描くときに、その背景の社会を感じさせることは大事です。これによって、孤独や死のテーマが、単なる個人の心から、社会に生きる個人としての精神に広がります。

映画全体を占める雰囲気は若干リアリズム寄りの技法です。大袈裟で安っぽいドラマに陥ることなく、必要以上に感情的になることもなく、冷静に描きます。

学校を舞台にした名作には「パリ20区 僕たちのクラス」がありますが、ほんのちょっぴりあれに近いナチュラルな演出が多く見られます。「パリ20区」ほど徹底的なリアリズム描写ではありませんし、「ラザール先生」のほうには非常にドラマチックな盛り上がりを見せる部分も用意されています。きわめて冷静に、淡々とドラマを描いていき、最後の最後に一気に昂ぶりを感じさせてくれます。これは効果的でした。多分ほとんどの人がやられてしまうでしょう。私もやられました。もうね、すごいです。さいごのほう。

ちびっ子映画ではちびっ子が演技をしますが、いつも上手に演技できるとは限らないし、子供ならではの自然な姿をフィルムに収めることの難しさを想像できます。
演技だけではない子供が見せる一瞬の神懸かった表情を捉えることができれば、監督としては冥利に尽きるのではないでしょうか。

この映画の最後のほうはまさに神懸かった子供の表情が観客を打ちのめします。あれでおっさんの目にも涙です。

ほとんど誰にでも学生時代があります。だから学校を舞台にした映画はほとんどの人が何らかの感情移入ができると思います。感情移入する対象は先生でもいいし、若返って生徒でもいいんです。両方にだっていいでしょう。それが出来る人ほど小学校を舞台にした映画をたっぷり堪能できます。外国のちょっと習慣の違うところなんか、普遍性に比べれば些細な違いです。だからこの映画も世界中の多くの人が堪能できたはずです。

監督・脚本のフィリップ・ファラルドーはとてもセンスのいい仕事をしています。
演出も効果的だし、端折るところと捉えきるところの描き方のバランスもいいです。
衝撃の描き方もいいし、感動して臭くなりがちなところをバッサリ切って客に余韻を感じさせたり、じっとり撮りつつくどさを廃したり、クールです。昔の監督ならもうちょっと「やっちまう」だろうところの端折り方が現代的で若々しいです。こういうの好きです。

アカデミー賞外国語賞では「ぼくたちのムッシュ・ラザール」と「別離」が最後まで争って「別離」が受賞したそうです。いい映画が競ったんですね。

余興ですが、学校を舞台にしたいい映画も出そろいましたのでおさらいしておきましょね。
幼稚園なら「小さな哲学者たち」、小学校なら「ぼくたちのムッシュ・ラザール」、中学校なら「パリ20区 僕たちのクラス」、高校なら「明日、君はいない」ですね。異論ありましたら教えてください(←最後のはちょっと...)

あ、今公式サイトにリンクしておこうかと思ったら、予告編の編集がひどいのでやっぱやめときます。予告編は重要なシーンの羅列がホイホイされていてネタバレ全開系ですので、この映画をこれから観る予定の人は見ないほうがいいです。

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