ジャンゴ 繋がれざる者

Django Unchained
ジャンゴ 繋がれざる者

クエンティン・タランティーノの西部劇。奴隷問題をテーマに映画を作りたかったそうですが、もちろん真面目に社会問題を扱うわけがなく、黒人賞金稼ぎのずびずば映画です。超面白いとしか言いようがないしわーわー言って楽しむ以外に術がない天下の娯楽超大作。

ジャンゴ 繋がれざる者

タランティーノが映画マニアで作品ごとにオマージュ満載っていうのは誰もが知るところです。あのシーンはあの映画、このシーンはこの映画、いろんな元ネタがあるらしく、タランティーノの映画が好きなマニアは隅々までオマージュを探し回り指摘し合い喜びにむせびます。
私はものを知らぬ人間ですのでなんとなく「何か風」だなーと思いながらも、具体的にはよくわかりません。

でも、いろんなオマージュの中で、つい最近観たものについてはよくわかったりします。例えば今年の正月に「殺しが静かにやってくる」っていう西部劇を観たんですが、それを思い出させてくれるシーンや雰囲気を感じ取る場所がありました。オマージュに興味が薄くても、自分が知ってたらやっぱり嬉しくなったりします。わーって喜びます。勝手なもんですね。

映画部の奥様なんかはこれまで西部劇自体を知らなかったそうなので、「ジャンゴ」に先駆けて「殺しが静かにやってくる」を観ておいて本当に良かったと言っておりました。ちなみにどうでもいい話ですが今年第一四半期で観た映画の中で「殺しが静かにやってくる」が今のところアモールやジャンゴを押さえてのナンバーワン面白かった映画だそうです。

というわけですので、きっと何もかもに詳しい映画達人の人にとっては、オマージュの元ネタ探しというか全編そういう面白さにも満ちているんでしょうね。そりゃいろいろ詳しければ楽しいでしょうきっと。

屁理屈をこねるような映画じゃないし、元ネタ探しや渋すぎる人選の解説などは達人たちに任せるとして、いろいろと気に入ったところなんかをいくつか羅列してIQ低そうな感想文でお茶を濁します。

まずはなんと言ってもドイツ人シュルツです。真の主人公と言っていいかもしれません。アメリカの常識に囚われず個人主義者で饒舌なこの男を演じるのはクリストフ・ヴァルツです。「イングロリアス・バスターズ」でも最高の演技をしていたし「おとなのけんか」も素晴らしかった最大注目の俳優ですね。
女優が好きで基本男はどうでもいいMovieBoo執筆者ですが、数少ない注目俳優のひとりです。
クリストフ・ヴァルツの魅力は悪人とか善人とかそういう半端な解釈を一切受け付けない不明瞭さにもあります。

シュルツは飄々としていて優しくユーモアがあり、冷酷であざとくて悪巧みもします。差別に興味がなく個人主義者で銭の亡者でそもそも賞金稼ぎです。一体この人はいい人なのか悪い人なのか、観客にとってもとても謎な人です。
後半にかけて、シュルツのある一面が強調されたりしてきます。それに触れて観客は惚れます。そして最後の一言、あの強烈な一言で観客は全員シュルツを愛してしまうでしょう。
素晴らしい脚本、素晴らしい演技、素晴らしい役者。

ディカプリオが最初出てきたときは正直がっかりしました。えー、何でディカプリオが出てくるのーって。でも杞憂です。
「ジャンゴ 繋がれざる者」のディカプリオは完璧です。人物の設定的にも脚本的にも、それを演じる演技的にもです。
ドイツ人シュルツに負けず劣らずの非常に複雑な人物造型が施されたキャラクターです。怖くてしっかりしている風ですが実はとってもピュアで素直な一面も持っています。
無邪気で楽しそうだったりもします。ある密告を受けたとき、心底びっくりするってシーンがあるんですが、今まで本気で信じてたんかいっと。それであんなに楽しそうに...。なんかね、可愛くって。でもその後は怖いですよー。

で、人物造形的にたいへん優れたこの二人のキャラクターがぶつかるクライマックスの盛り上がりは、もう半端じゃありません。この最重要なシーンは派手なアクションではありませんで、キャラクターの割と意外な一面同士のぶつかり合いとなります。意外ですが最重要な魂と魂の対峙です。

あとは強烈スティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)の破壊力もいいし、ディカプリオの姉役(ローラ・カユーテ)の扱いなんか強烈です。怖い一言を間接的にいうシーンなんか震え上がりましたね。そして最後は見事な見せ場も作ってもらってます。

てなわけで脚本の妙技です。他の登場人物たちもストーリーそのものも、何から何まで個性的。オーソドックスの仮面を被ってますが捻りまくって考え抜かれたものとなっています。

その中でとても単純化して描かれたキャラクターもあります。ヒロイン、ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)の役回りなんかそうですね。はっきりきっぱり、役割ごとに設定を使い分けます。ブルームヒルダは象徴的なヒロインとしての存在でして、だからこれでいいんです。マリオで言うとピーチですから。

同様に主人公ジャンゴ、彼の設定なんかも、他の登場人物に比べたら比較的わかりやすい単純化した人物像です。主人公ですから当然そうなります。それがいいんです。そこがかっこいいんです。個性的な脇が彼の良さをぐーっと持ち上げるというか。ねー。

最初、ジャンゴ役としてウィル・スミスが候補に挙がっていたそうなんですが、ウィル・スミスはこれを断り、ジェイミー・フォックスになりました。結果的にジェイミー・フォックスでよかったー、って思いますけど、ウィル・スミスが役を断った理由っていうのがニュースになってまして、それによると「ドイツ人シュルツのほうが主役のように思えた」からだそうです。
脚本を読んで、わりとステレオタイプの主人公より、シュルツのほうに深み成分が注入されているのを嗅ぎ取ったんでしょう。さすが、わかってらっしゃる。しかしジャンゴが主人公として一番の大活躍しない限りお断りだ、なんていう理由を聞くと、ちょっとがっかりしますねえ。まあ、いいんですけど、それでこそ大スターかもしれませんわなあ。

人物以外もたくさんの趣向が凝らされていてまったくもって面白いところだらけです。序盤の覆面の件とか、細かく好きなシーンをあげていったらきりがありません。

メタクソおもろい、観ないと損、凄すぎる、たまらない、そういった言葉しか出てこない痛快娯楽大作。
「尺が長すぎる」なんて言ってるやつもいますが何を言うか。もっと見たいのでさらに長くても歓迎しまくりですわ。

という感じで「ジャンゴ 繋がれざる者」でした。

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