ビザンチウム

Byzantium
ビザンチウム

美女ヴァンパイアの二人組です。少女エレノアは秘密と良心に悩む思春期的鬱々状態、エレノアの保護者クララは大人の商売をやり強気です。さてどういう切り口のヴァンパイア映画でしょうか。

ビザンチウム

映画界ではときどき、近い時期に似たようなテーマの映画が作られることがあります。ヴァンパイアものも割と近い時期にいくつか作られました。「ビザンチウム」には多少興味ありましたが、日本ではそのちょっと前に「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」をやっていたせいもあり、なんとなく「吸血鬼ものは決定打の史上最高傑作を観たからもういいや」ってな気持ちになってある程度以上の興味を持てませんでした。全然関係のない全く違う映画なのに。失礼なことですね。

「ビザンチウム」は映画でも脚本を書いたモイラ・バフィーニの舞台劇の映画化なんだそうです。なるほど、それで会話シーンがやたら面白かったわけですね。英国映画と会話劇というのは相性もよろしいので好きです。

母娘の吸血鬼です。200年以上生きてます。少女エレノアは心身ともに16歳くらいに見えます。ぼくのエレノア、200歳の少女って感じです。思春期らしく鬱々と悩んでいます。もうひとりの女性クララは大人です。エレノアの保護者で姉とか言ってます。姉と言っても通用する年齢のまま200年生きた女性吸血鬼です。水商売していますし、後には娼館を経営します。ふたりはもちろん正体を隠して生きています。タイプの全然違うこの二人の女性吸血鬼のお話で、これね、わりと面白いんです。

映画の序盤は悩むエレノアと派手なクララの両者がそれぞれ描かれます。エレノアは「秘密を打ち明けたい」みたいな気持ちを持っているようです。それに吸血鬼の仕事と生活(殺して血を吸う)に対して良心の葛藤のようなものも少し持っています。鬱々としているときにやさしく声を掛けてくれた年寄りを殺して血を吸ったりします。若さゆえ、良心の呵責とそのケリの付け方が稚拙なんですが本人は大真面目です。
映画の序盤では、あまりにもエレノアの思春期少女思考が強調されるので「うざい映画かな」と思いましたがそれは杞憂でした。このあとどんどん面白くなります。
序盤の少女小説的とろんとろん映画の雰囲気を保ったまま、ときにはそのとろんとろん感を逆手に取った面白いシーンを紛れ込ませたりします。ネタバレ気味で御免ですが、惚れた男の子に秘密を打ち明けるんですよ。そしたらね、当然普通の人間ですから信じません。「あたしの真の姿は200年生きた吸血少女なの」やばい。ムーだ。自称1000年前のお姫様の生まれ変わりとかいうああいうやつだったのかと、彼が思ったかどうか、一瞬ドン引きするわけですが、ちょっとこのシーンいい感じです。この彼、十分に病気の変わり者に見えまして、こいつこそ吸血鬼と言ってもおかしくない風貌の変なやつです(なんせ「アンチヴァイラル」のケイレブ・ランドリー・ジョーンズですから)そんな彼がドン引きするのだから笑えます。個性的な不良っぽい風貌の彼ですが、じつは真面目な子なんですよね、先生を信用していたりもします。その設定も面白いです。不良のへんなやつと思ったからこそエレノアは打ち明けたのに、このあたりのシーンでは彼女の残念感がよく伝わりました。

一方、大人吸血鬼クララはエレノアを遊園地で遊ばせている間に男捕まえて稼いだり、乗っ取り同様の手口で廃ホテルを手に入れ娼館として蘇らせテキパキとやる姿を描きまして、面白さが詰まってます。娼婦やエレノアに対する態度とかも、原作が舞台劇ならではの言葉の面白さが充満していますね。

てなわけで特に凄い話というわけではないのですが小気味のよい展開でずっと面白く見れます。男だけの怪しい秘密結社の件や学校の先生との件も面白いし、中盤、ときどき現れる「事件を捜査している刑事たち」のシーンの唐突感も「モンティパイソン ホーリーグレイル」みたいでとてもよろしいです。

冒頭は少女小説的とろんとろんの鬱々映画かと一瞬思いましたが、最後まで見たら軽妙さやサービス精神に喝采を送りたくなるというタイプのなかなかよろしい映画でした。そして、とろんとろんではありませんが、結局のところ母と娘、そして恋人との愛とロマンスのやっぱり少女小説的吸血鬼物語であったという、そういう感想でめでたく〆ることになりました。面白かったですよ。

少女エレノアを演じたシアーシャ・ローナンは最近「グランド・ブダペスト・ホテル」で好印象を残した彼女ですね。
ホテルビザンチウムの持ち主を演じたのは「ヴェラ・ドレイク」の息子役が印象深いぽっちゃり顔のダニエル・メイズ。
真珠をプレゼントするのはサム・ライリーで、ディカプリオに似た人だなあと思ってたら「ロシアン・ルーレット」の彼でした。ちょっと驚いた。
他はトゥーレ・リントハートが出演してますね。そういや「誰がため」の二人のうち、マッツ・ミケルセンはよくお目にかかりますがトゥーレ・リントハートはほとんど見かけないなあと。

ニール・ジョーダン監督と言えば昔「狼の血族」という映画をやっていまして、あれ好きでした。「狼の血族」が出世作だったんですね、さっき初めて知りました。

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