ヴィジット

The Visit
ヴィジット
公開年:
2015
製作国:
監督:
製作:
脚本:
撮影:
音楽:
  • スーザン・ジェイコブス
主演:
出演:

インディーズに近い製作で原点回帰というか初心に帰ってというか久々のM・ナイト・シャマランによるオリジナルスリラー映画が突然公開されるってことで、取りいそぎもちろん観に出かけます。会ったことのない祖父母のおうちに遊びに行く姉弟のお話。これ最高っ。

ヴィジット

M・ナイト・シャマランは好きな映画を撮る好きな監督です。ですが特撮ファンタジーアクションとキモい父子のナルシープロモーションSFみたいな直近の二本は観ることも興味を持つこともありませんでした。なぜあんな映画を撮ったんだろうなーと不思議に思ってたんですが、どうも業界を干されていたような状況にあったそうなんですね。不評やレッテル貼りに本人相当にヘコんでいたんではないでしょうか。

世間や評論家は「アンブレイカブル」や「サイン」の後くらいから酷い扱いだったそうな。評論家はボロクソ、観客もボロクソ、ラジー賞とか言われて散々だったようです。
あのね、言っときますけど「ヴィレッジ」とかめちゃ傑作ですよ。私は大好物です。「レディ・イン・ザ・ウォーター」も「ハプニング」も目のつけどころが独特で、シャマランらしいぶっ飛び設定とドメスティックや愛の融合が面白い良い作品です。たとえみんなの好みでない映画だったとしても、映画作品としてちゃんとしてるし何も悪いところなどありません。
アホの客や評論家が「どんでん返し」「どんでん返し」の大合唱を続けて作品の良さに気づかずみんなしてリンチ状態にするなど劣悪です。
シャマラン作品でそこまで攻撃するかとマジ不思議でした。あのなー。そんなんだったらダリオ・アルジェントとか全作品見てみろと。おもわず暴言出そうですがぐっとこらえます。
でも脚光浴びまくってる頃、ちょっと天狗になっていたシャマランのことも知ってます。ほんと、何を偉そうにと私も思ったりした監督の戯言がいくつかあったりしました。この天狗態度が業界内でよく思われなかったり評論家受けが悪くなる原因のひとつである可能性もあります。ですが若くして歴史的大傑作を作ってしまったもんだからある程度天狗になって当然のことで、仕方ないことでもあります。若さ故です。そして「シックスセンス」を自らが越えられないジレンマもあり、外からの総攻撃と内からの重圧に、精神が参ってしまいそうになることは容易に想像出来ます。
そんなこんなで、最近は自身で撮らず若手監督に自分のアイデアを撮らせて「デビル」みたいな良品を作ったりしてましたが、あの若手シリーズの新作とかやってないんですかねえ。

さて「ヴィジット」ですが、何があったかほとんど自主製作のような予算と作法で作り上げたシャマラン気合いの一本、いや、力を抜いた垢抜けた一本か、気合いを入れて力を抜いた最高バランスの一本か、とにかくインディーズに近い技法で面白映画を引っさげてやってまいりました。
久々のスリラーテイスト、ホラーテイスト、そしてなななんとPOVです。まさかのPOV。マジすか。知らなかったのでまずこれで驚きました。冒頭しばらくだけかと思ったらずっとですもん。いまさらのPOVでいいアイデアありますか。あるんでしょうね。あるでしょう。その証拠に、確かにありました。やってくれたぜ僕らのナイト・シャマラン。

本作は観客にも評論家にも受けがよろしく、評判高いそうです。以前の作品をくそみそに貶していても、面白いの撮ったら素直に誉める、それもまた大事。
「おかえり、シャマラン」などと言ってるそうですが、私なんかは直近二本以外は全部大好物なのでおかえりもクソもありません。ただ、本作は製作方法にしてもその内容にしてもちょっとシャマラン何があったと思うほど何か先へ進んでいます。脱皮した感じすら受けます。かなり天晴れ作品です。

フランシス・F・コッポラやウィリアム・フリードキンのような世界に名だたる巨匠が、何かの弾みに低予算映画を自分の好きなように作ったことがありました。それら作品ものびのびしていて、ビジネスに囚われず、最高の作品でした。シャマランの初心回帰作品とも言える「ヴィレッジ」も似た香りがします。個人的にインディーズ好きってのもあって、とても好感持ちます。

とても面白い「ヴィジット」の面白さについて何か書く前に、関係ないところでまずぐちぐち書きます。

まず公式サイトや映画会社が用意したキャッチコピーにケチつけます。「三つの約束」とか言って何かぐだぐだ書いていますが、これ映画の内容とは直接関係ありません。ただの宣伝文句です。「けして一人では見ないでください」の類いです。もちろん映画内で「三つの約束よ」とかそんなシーンはありません。一つだけは出てきますが。
でもまるでストーリーの中に三つの約束が出てくるかのような書き方をイントロダクションでしていまして、これちょっと意地悪です。
というのも、映画を観ずに文章を書く評論家なんかは、ストーリー紹介として三つの約束をあげていたりするわけです。「こんなお話です」とか言いながら。
これはきっと映画会社が仕掛けた衝撃のトリックです。「わはは。こいつ、観もせず評論書いてるのバレバレー」とか言って笑ってるはずです。

国内のプロモーションで言えば「結末を当てようキャンペーン」とか極悪です。あれほど「どんでん返し」の呪縛で苦しんだ監督に、まだ「結末が」と煽り続けるとは、悪意としか言いようがありません。
でも監督も監督で、わざわざ「あなたは騙されてる」とか指さした映像に出演してプロモーションしています。あー。何という哀れ。でもお客さんに来て貰うためなら何だってやってやるよ!どんでん監督の役割が必要ならやってる!っていう心意気も感じます。落ち込むだけ落ち込んだ後の人間の強さすら感じます。私もCD売るためにあそこまでやらねばならなかったのです。その恥を捨てる強さを分けてください。

というわけでそろそろやっと本編のお話ですが、まあみなさん。これはおもろいですよ。芸の細かいよい映画です。怖くてこわくて、そんでもって面白くて笑えて、そんでもって出てくる人間全員がいい感じです。細かいシーンのひとつひとつがとても丁寧で味わいに満ちています。
冒頭近くから「お。映画撮ってんの?ぼくも学生の頃演劇やっててねえ」って出てくる人(しかも同じような人がふたりも!)とか、お母ちゃんも少ししか出てきませんがすごく肉付けされて設定がしっかりあるキャラクターとなっています。

もちろん主人公の姉弟、このふたりの魅力たるやかなりのもので、ちびっ子映画大好きMovieBoo的にも、相当な上位ランクのちびっ子(というほどチビではなくて思春期近い設定ですけど)です。
弟のTダイヤモンドの魅力なんかは、まあ、いまさら言うまでもなく最強で、「感嘆詞のところで歌手の名前を言う」件や「子供はこうするんだろ」の件、いやもう言い出したらキリがないですけど、全部いいです。
特に好きなのはお姉ちゃんを撮影してインタビューするシーンです。ここはお姉ちゃんの苦悩を取り上げ、しんみりするシーンです。しんみりさせつつ、ズームしていくあのシーンは「悲しみと怖さとギャグの完全な融合」と言えるでしょう。私はズームシーンがあまりにも素晴らしくてのけぞりました。
それからまだあります。散歩しながら「おばあちゃんの物真似」をするあそことか、どうですか、これ、どうですか。あれもね、怖さと爆裂ギャグの完全融合ですよ。シャマラン監督、いつの間にこのような凄い技を身につけましたか。
それからもちろんラストシーンの
「キリがないので」と言いながらどんどん書いていきそうなのでいい加減自粛しますね。

というわけでですね、いきなり本編をまとめるとですね、ホラーとコメディの超絶バランスです。怖さはきっちりあるし、コメディもきっちりあります。怖すぎると笑うところで笑えないし、笑いすぎると怖くなくなりますが、どういう微調整をすればここまで完璧に両立できるのかというほど、そのバランスはパーフェクト。この調整に監督は命を注いでいます。そしてやはり、並みの才能ではないなと改めて思う次第です。

予想外の展開の裏をかく予想外の展開にも注目です。最早セルフパロディですかと言いたくなるような小ネタを随所に仕込んでおりまして、「シャマラン作品はこうあるべき」とか本人でもないのにべきべき言うてる奴なんかを手玉に取ります。もうナイト・シャマランはくじけません。痛快です。

もひとつ、どんでん返しについてです。「どんでん返し」の呪縛を否定しながら実は「ヴィジット」はやっぱりどんでん返し系の映画でありましてですね、それが垢抜けてて洒落てるってのが本作ならではの特徴です。垢抜けて洒落てるどんでん返しを呪縛にまみれた監督が思いついてきっちりやってのけたわけです。これに喝采送らずどうしますか。
具体的にこの件について言及することはやっぱり今の段階ではちょっと避けたいところです。今絶賛上映中の映画ですから。ネタバレ系はもう少し待って追記の形でやるかもしれませんがまだわかりません。

更新久しぶりなんでリハビリを兼ねてわりと最近観た大好きナイト・シャマランの痛快作「ヴィジット」でした。

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