精神

精神
精神
公開年:
2008
製作国:
監督:
製作:
撮影:
編集:
出演:
  • 山本昌知

選挙」の想田和弘監督による岡山の精神科診療所「こらーる」の精神病患者、医師、スタッフなどに密着したドキュメンタリー映画。

精神

「こらーる岡山」は山本昌知医師を中心とした外来の精神科診療所で、地域社会の支援に力を入れており、ショートステイ施設、ヘルパー派遣、牛乳配達や食事サービスの作業所も併設しています。
古い民家を利用した診療所の待合室は畳敷きのサロンとしても利用されていて「終日喫煙可」。精神に煙草が必要不可欠なものであることもよく分かっておられる素晴らしい対応の施設ですね。

想田監督は「こらーる岡山」に密着、ひとりひとりの患者に丁寧に接して彼らの苦悩や日常などを追います。

これまで精神病患者の生の声に触れる機会は文章以外でほとんどありませんでしたが、この映画では患者たちの協力もあり、 人間としての精神病患者を描き出します。

さて狂気と正気の違いはなんでしょう。
明確な脳の物理的障害の事例を除き、両者に違いはほとんどありません。狂気と正気の境目は、常に社会が創り出すものです。
この映画に登場する患者たちは個性的で且つ類型的でもあります。まるで俳優やタレントのようです。あるいは身近な誰か、あるいは自分自身に似た人を発見するかもしれません。
人間のある種の極端さを表現するのが俳優とすれば、俳優と精神病患者が似ていても当然です。精神病患者は何かしら極端なものなんです。

ある患者は言います。「普段は普通なんですが、時々、5年に一度くらい自分を制御できなくなります。犯罪を犯す可能性もあります」
どうですか。
5年に一度、自分を制御できなくなるなんて誰でもそうじゃないですか。むしろおとなしいほうです。毎週制御できなくなる人だっていそうですよ。

自分が犯罪を犯す可能性に怯えるという高度な精神活動ができる精神病患者と、自分が犯罪を犯す可能性は0だと信じ込み犯罪者を糾弾することしかできない貧弱な想像力の馬鹿と、どちらが正気でどちらが狂人だといえるのでしょう。

と、まあ言いたいことはいろいろありますがそれはともかく。

この映画は貴重な映像満載で見る価値が十分ある逸品ですが、ちょっとだけ気になったのは、想田監督が山本医師はじめ施設の人たちや患者たちの中に入りすぎた結果、前半のぴりぴりした関係による緊張感が薄れ、後半は愛と優しさに満ちた観察記録になってしまった点です。
また、それに付随してテーマが分散してしまった印象も受けます。
精神病患者・精神病というものを追求したかったのか
山本医師の信念とその施設を紹介したかったのか
小泉改革後の福祉切り捨て社会が具体的にどういうことなのかを問題提起したかったのか
多分、それら全てを表現したかったのだろうと思われます。が。というか違います。監督が定義する観察映画ってのは表現したいことを表現するための技法ではなく、観察の中から何某かのテーマを観る人が見つけるべきであるものです。で、実際、そういう意味ではこの映画はすべてを表現できています。あれ?
表現出来てますね完全に。。とすればそれはこの映画の欠点ではなく長所ということになります。 なんと、苦言とか気になるとか、いちゃもんを付けた私のほうが間違っていたのです。なんてこった。これが監督の観察映画というものであったのです。
ドキュメンタリー映画だからと言ってダイレクトな主義主張を表現したジャーナリズム的映画とは違います。こういうアプローチもあるのです。

DVDには、上映後の座談会や山本医師のインタビューも収録されていて、これらもセットで観るとより良いでしょう。とくに患者たちとの座談会はいい感じです。監督、だめ出しまでされてます(笑)

釜山国際映画祭 - 最優秀ドキュメンタリー賞 (PIFF Mecenat Award)
ドバイ国際映画祭 - 最優秀ドキュメンタリー賞
マイアミ国際映画祭 - 審査員特別賞
香港国際映画祭 - 優秀賞 (Outstanding Documentary Award)
ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭 - 宗教を超えた審査員賞

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