ジュリアン(グザヴィエ・ルグラン)

Jusqu'à la garde
公開年:
2017
製作国:
監督:
出演:
2017年のグザヴィエ・ルグラン監督作品「ジュリアン」です。離婚夫婦の親権についての映画、DVの香りもします。DVすなわちドメスティック、かつバイオレンス。
ジュリアン(グザヴィエ・ルグラン)

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「ジュリアン」は離婚が絡むドメスティックなドラマです。離婚夫婦と息子、その親権を巡るお話です。さらにこのドメスティックドラマには離婚原因のひとつとしてバイオレンスの香りが漂います。ドメスティック・バイオレンス、つまりDV、そうです、ただの夫婦や家族の物語ではなく、そこに潜むのはもうちょっと踏み込んだ社会の病理、家庭内暴力についての映画でもあります。

冒頭は元夫婦と同席しているそれぞれ弁護士が判事さんの前で弁論を繰り広げまして、観客もこの夫婦について少しうかがい知ることができます。DVについての主張と否定、冒頭ではどっちの言ってることが信頼できるのかまだちょっと判らないこと含め、この「ジュリアン」という映画、これは一つの家族をドラマとしてぐいぐい描きますが、さらに同時に世のDV問題について普遍的にも描いてます。

息子ジュリアンは中学1年生くらいですか?子供ですがちびっ子ではなく、思春期にまだ少し届いていない年頃です。難しい年頃ですよね。このジュリアンは離婚した両親のうち、母親と暮らしており母親の味方です。というより、父親を憎んでいるし畏れてもいますし、それを判事さんに提出する作文にもビシッと書きます。

「ジュリアン」という邦題を思わずつけたくなるのも頷ける息子ジュリアンの、この子の表情や態度、立ち居振る舞いこそがまず「ジュリアン」の見どころその1です。だれもがこの子の演技に感情を奪われるでしょう。不満や怒りやそして恐怖です。子供の頃父親にDVを受けていた人は感情移入しすぎて大変なことになること請け合い。

でも「ジュリアン」ってハーモニー・コリンの同名映画がすでにありますからできれば違うタイトルをつけてほしかった。こっちにもいろいろ事情ありますし(知らんがな)

ジュリアンにはお姉ちゃんもいます。お姉ちゃんはもう大きいので父親もまったく執着していません。このお姉ちゃんがなかなか良い案配で、独自にふらふらふわふわしていたり勝手に苦悩していたりお歌を歌ったりします。

さてそんな家族の、テーマ的には主に親権についての映画です。判事さんの判断はまだなので、最初の約束通りジュリアンは父親のところに定期的に会いに行くことになります。DVを認めてもらい完全に手を切ってジュリアンが嫌々父親に会いに行くことを辞めにしたいというのが妻の考えです。DVについてドラマ内では証言や雰囲気などから察知するレベルをずっと維持しています。もう離婚してしまっていますから、離婚前の状態は観客にはわかりません。

この映画が良く出来ているのはこういうシナリオです。これね、観客が奥さまの味方なら完璧に父親を鬼だと思えますし妻に感情移入してありとあらゆるシーンで夫の恐ろしさなんかを感じとることになります。

逆に、夫の味方・・・とまではいかないにしても、夫婦には多少お互い様のところもあるんじゃないか、てな目線で見ていたら妻の怪しさを感じたり夫に少し同情的になったりするかと思います。

このように、あえて結婚生活でのDVシーンを回想したりせず、イイモノとワルモノに完璧に設定して描き分けることもせず、世の離婚夫婦の訴えを聞く判事さんのような状態のまま観客はドラマを見続けます。ここでジュリアンの壮絶演技が入ってくるものですから、身をよじる気分を味わい続けますね。

そんなわけで多分社会派映画なんだろうと思います。立ち位置不明確なまま苛立ちや恐怖を描ききりますし、夫婦の親や周辺の人々の反応など細やかで面白いし、シナリオは多くDV夫婦の事例をリサーチして組み立てたんじゃないかと想像できます。

で、ストーリーが進みますとですね、これがそうも言ってられなくなります。転機があり、だんだん雲行きが怪しくなってきます。終盤、映画の質がだんだん変化していくことをなるべくなら知らずに観ることを推奨しますが、でももう手遅れ、私もこんなふうに書いちゃったし。そもそも公式が「傑作サスペンス!」言うとるで。せっかく映画探偵が「離婚夫婦のドラマ」と気を使って書いてんのに。あっ、今確認したら一番言ってはいけない言葉をさらにキャッチコピーに入れとるよ。「衝撃の結末を迎えた」それ一番言うたらあかん言葉や。この言葉はアウトやで、スリラー配給のみんなも肝に銘じときや。例え衝撃の結末だったとしても「衝撃の結末」と書いた瞬間に結末から衝撃を消し去るし、結末以外の90分なり120分なりを無価値なものに貶めることになるんやで。

思わず気分が荒くれて言葉使いまで変わってしまいましたが、というそういうことでですね、終盤の緊張感はそりゃもう大変なんですけど、それというのもそれまでの丁寧なドラマがあればこそ。単なるサスペンス扱い単なる衝撃の結末扱いを公式がやらかしてますが、実際にはじわじわ迫り来るとても良質なドラマだと思いますよ。

そして最後に見どころその2、ジュリアンを演じたトマ・ジオリアだけでなく夫役のドゥニ・メノーシェがたいへん良い演技していたことを特記しておきたいと思います。

※公式サイトをよく見ると専用ドメインですね。とするとこの公式はいずれ消えますね。とするとネタバレ記述が仇になるのはこっちのほうですね。公式が消えた後、もし覚えていたら後半の記述を全部消すとか手立てがいるかもしれないですね。覚えていたら。

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