アフター・ウェディング

Efter brylluppet
アフター・ウェディング
公開年:
2006
製作国:
監督:
脚本:
撮影:
音楽:
主演:
出演:
  • シセ・バベット・クヌッセン
  • スティーネ・フィッシャー・クリステン
  • クリスチャン・タフドルップ
  • フレデリック・グリッツ・アーンスト
  • クリスチャン・グリッツ・アーンスト
  • イーダ・ドゥインガー

インドの慈善活動に支援を申し出た資産家の奥様は20年前に別れた恋人。
スサンネ・ビアの超ホームドラマ。

アフター・ウェディング

いきなりですが今から「アフター・ウェディング」を見る人は絶対に予告編を見ないでください。レンタルで見る人は他のDVDに紛れ込んでいる予告編に十分注意してください。超ネタバレです。だいたい2時間の映画のうちの1時間45分くらいのところまで予告編と称してさくっと要約して筋を紹介しています。
他の映画も例外なく全て同じ調子でネタバレ予告を垂れ流しますからレンタルDVDには要注意。同じスサンネ・ビアの「ある愛の風景」も、本編を見る価値を0に貶める「あらすじ紹介」しまくりで呆れ果てます。

では予告編の代わりに冒頭をご紹介しましょう。

冒頭はインドで慈善活動をするヤコブ(マッツ・ミケルセン)です。子供たちに囲まれて食事の配給から英語の授業まで、顔は怖いが子供たちから信頼されているご様子。
どうやらそのヤコブに対して、支援のためのプレゼンテーションをするような依頼が入っているようで、このヤコブはそれを聞いても「向こうからこっちへ来ればいい」とか「考えさせてくれ」とか全然乗り気じゃありません。
子供たちが好きで慈善活動は一所懸命ですが、誰かに媚びて支援してもらおうとか、よりよい環境を構築しようとか、煩わしさを嫌ってそういうことは全く考えていないようです。
慈善活動は一種の反社会的行動であり、理想は高いくせにそのために自分が無理することは避けたいという反抗期の若者のような気質を感じさせます。
このヤコブの性格が「アフター・ウェディング」全体を通して一つのキモとなっています。

とはいえ、ここでプレゼンに行かなければ施設が解体されてしまうという事情から、嫌々ながら身だしなみを整えデンマークへ向かいます。
いっぽう、支援を申し出た資産家ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)は貫禄ある男で、ちょっとどういう奴なのかはわかりません。子供や綺麗な嫁さんとちょけたりしています。裏があるようなヤバいような、ちょっとそういう雰囲気を醸し出します。

いよいよプレゼンです。ヤコブはビデオを見せながらインドの実態を語りますがヨルゲンは身を入れて聞いていない。途中で遮られ、口先で「素晴らしい。検討するよ」とあしらわれ、ヤコブはムカつきます。「そんなことより、明日娘の結婚式へ来てくれよ。な」と誘われ「何言うとんねんこのおっさん」と憮然とするヤコブ。しかし金持ちの機嫌を取るために仕方なしに娘の結婚式へ出向きます。
さてお立ち会い、その結婚式で出会うヨルゲンの嫁はんヘレネ(シセ・バベット・クヌッセン)とヤコブは何と20年前に別れた元恋人同士でした。じゃじゃーん。
目を見張るヤコブ。「そうするとあれか、今結婚しているこの娘、おれの娘ちうことか。おいちょっと待てこら」と、こんな感じの危ういお話が始まります。

これは偶然か、仕組まれた罠か。どうなっていくんでしょう。それはもう見てのお楽しみと言うことで、なかなかどうして、じっくりじっとり、緊張感漂う渋い映画に仕上がっております。

というわけで、実はストーリーだけを取り上げると、実になんというか、どうってことないというか、それがどうしたというか、うそくせーというか、そういう映画なんですが、この作品の価値はストーリーの流れ以上に演出や映像や演技の渋さと深みにあるんです。

「ある愛の風景」では始終四隅にケラレを入れた変な映像でしたが、こちら「アフター・ウェディング」はもっとナチュラルです。ナチュラルでリアル。このリアルさはラース・フォン・トリアーのドグマ95に乗っとった技法を継承しています。即ち、自然光と手持ちカメラによる緊張感です。
もちろんドグマ作品じゃありませんからガチガチの技巧派ではありませんし実験作でもありません。ちゃんと物語りやテーマに直結する必然としての技法であります。

自然光を主とした映像は時に緊張感を、時に映像の美しさを際立たせます。それに加えて頻出する目のアップやぐるりと回り込むような動きのある映像に、見ているこちらにも緊張と胸騒ぎが伝染します。力がこもった映像の力を堪能できます。

人間のドラマが中心ですから役者の演技も光ります。顔色も目つきも悪いヤコブの性格設定、これが物語の要となり、観る者をミスリードする大事な役割を果たします。
インドで慈善活動し、金持ちに媚びず、庶民派で、昔は不良で、娘に愛を注ぐ独身男です。一見、主人公に相応しい人物像ですが、この映画では裏をかきます。この男の負の側面もそれとなく描きますね。最初は気にならないんですが、だんだん気になってきたりします。バラしてもいけませんから多くは語りませんが、理想主義者で大人の行動がとれない青臭い部分を秘めたこの男を、マッツ・ミケルセンは好演します。

このマッツ・ミケルセン、誰だと思います?聞いてびっくり「誰がため」即ち原題「フラメンとシトロン」のシトロンです。「アフター・ウェディング」の二年後の作品ですね。なぬ?誰もびっくりしませんか。いやあ、シトロン、カッコ良かったですよねえ。

資産家ヨルゲンも同じく、最初はヤバそうな油断ならなさそうな嫉妬深そうな金持ち男として登場し、徐々に何か様子が変わってきます。ロルフ・ラッセゴードの演技は全く以て素晴らしいの一言。
出演作はテレビの刑事物シリーズの他はコリン・ナトリーの二作くらいで、あまり情報ありません。

ヘレネはワイルドさを持った主人公の元恋人で資産家の奥様。この人がですね、先日なくなられたスーちゃんこと田中好子さんに似てるんですよ。もうそれだけで泣きそうに。
私はキャンディーズには興味ありませんでしたがスーちゃんだけのファンであったのでして、みんなが「デブ」とか「地味」とか言っていても「あほんだらスーちゃんの素晴らしさがわからんのか。5年後を見てろ」と啖呵を切っていたのでありまして、「黒い雨」の時はスーちゃん復活際の大興奮で感動しまくり、核の怖さなど気にもとめずスーちゃんの背中を見るためだけに2回見たくらいです。
そんなことはともかく、このヘレネはスーちゃんと違い、ワイルドな部分も持ってます。よく見るとあまり似ていないんですが。

娘アナがまたこれが良い人選で、かわいいけど美女かというと微妙、我が儘で母親譲りのワイルドさも持っていて、でもか弱い子供みたいなところもあってという難しい役をパーフェクトにこなしました。
最初の結婚式での登場シーンでは印象に残らないんですが、後半どんどん人間が立ってきます。最後のほうでは驚くべき演技力を見せまして、私は思わずもらい泣き。いやはや凄いもんです。
スティーネ・フィッシャー・クリステンセンというこの人、allcinemaで調べても出演作は本作しか載ってないんですね。

監督スサンネ・ビアと言えば、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「イン・ア・ベター・ワールド」が注目です。2011年夏には日本で公開予定なのだとか。
「アフター・ウェディング」ではインド、「ある愛の風景」ではアフガン、「イン・ア・ベター・ワールド」ではヨルダンが出てきます。
わりといつもそんな感じなのでしょうか。他の映画見てないので知りませんが。
「ある愛の風景」のアフガンも、「アフター・ウェディング」のインドも、本編のホームドラマで描く人間たちのリアリズムに比べて観念的で抽象的な描き方になっています。ちょっと面白いところですね。

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