ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う

ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う
1993年「ヌードの夜」の続編。何でも屋の男が巻き込まれるどろどろ女の事件。
ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う

雑居ビルのバーを経営する母子(大竹しのぶ、井上晴美、佐藤寛子)は碌でもない連中で、冒頭は彼女たちの吃驚仰天残虐シーンから。
おおっ。このどろどろ、このねちねち、いいですね。期待です。

何でも屋代行業を営む紅二郎(竹中直人)は何でも屋といいながら役割的には探偵であり、「探偵物語」やその原点「傷だらけの天使」を彷彿とさせるああいうテイストです。松田優作の物真似で登場した竹中直人の初期を思い出します。
この何でも屋がどろどろ女達による事件に関わってくるというお話で、全編貫くアーティスティックな狙いすぎ映像とともに雰囲気よく進行します。
中程には謎の女の行方を捜す「港のヨーコ横浜横須賀」みたいな展開もあったりして、「あんた、あの子の何なのさ」と声が聞こえてきそうです。
雑居ビルのバーといい探偵物語風代行屋といい昭和テイストたっぷりの日本的などろどろ物語。悪くないです。
こだわり映像による独特の雰囲気できちんと集中して魅せてくれますし、どろどろドラマと共に大竹しのぶの演技力だけでも見る価値大いにありです。
冒頭の事件シーンが掴みばっちりですから、のめり込んだまま2時間くらいまで余裕で楽しめます。

ところが私はうっかりして「ディレクターズカット版」とやらを見てしまったようで、2時間半の長尺でございました。
劇場公開版が何分の映画か知りませんが、どう考えてもこの映画に2時間半は要りません。
最後のほう、クライマックスに向けて意外な面白い展開になるのですが、それであと5分くらいで終わるんだろうなあと思ってからがさあたいへん。延々、延々と妙ちくりんなシーンが続きます。
その上、これまで淡々と渋い演出で描いてきたいろんな人物が突如として安っぽい漫画的行動とセリフにまみれはじめ、こだわりで撮ってきた映像がくどいキラキラ映像になってきたりして、黙ってみてりゃずっこけ寸前、挙げ句の果てに拳銃バキューンで、仕舞いにはお弁当食べてね、とか、変な変な終わり方で、半ずっこけの妙な姿勢のまま不思議な感覚を残して終わります。

後半の妙ちくりんなシーンのうちの多くは怪っ態なヌードシーンがだらだらと垂れ流されるだけです。これがまあヌードだからして飽きるということもなく助平目線で見続けられるのでそれはそれで歓迎もとい我慢できるのですが、映画的には「なんだこりゃ」的であることに違いありません。実に不思議なサービスシーンです。
この付録シーンについて映画ファンなら「死霊の盆踊り」を思い出すかもしれませんがさすがにそこまで言いたくありませんのでノーコメント。

本編の付録として、本編の中にこうしたシーンを付け足すという新たな映画技法であると私は認識したんですが真意のほどは判りません。
そういうわけでディレクターズカット版では40分ほど要らないもしくはくどいもしくはだるいもしくはわくわくシーンがありますのでそういうのを判って見ると退屈せずに済むでしょう。

と、ここまで書いてふと気づいたんですが、この映画はタイトルが「ヌードの夜」です。
と、いうことはあれですか。あの最後のヌードシーンこそこの映画の本質ですか。
「ヌードの夜」というタイトルだからといって普通ほんとうにヌードシーンが本質だとは誰も思わないけど、裏をかいてまさにヌードシーンこそが目玉の映画であって、それまでのストーリーのほうがオマケであると、そういう見方も出来るかもしれません。
うーん。実験的。

というわけでどうしても「もうそろそろ終わりかな」と思ってからの無駄な3、40分が印象に残りすぎていけませんが、それに至るまでの本編部分は見応えあってとても良いです。面白いですよ。

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