ソウル・キッチン

Soul Kitchen
ソウル・キッチン

ハンブルクの大衆レストラン「ソウル・キッチン」を中心に展開するあれよあれよの賑わい。

ソウル・キッチン

遠く上海に旅立つ恋人、給仕係、別のレストランをクビになったハードボイルドコック、仮出所の兄貴、旧友の不動産屋など、いろんな人が「ソウル・キッチン」を営むジノスとその周辺で大賑わいを演じます。
その間、カッコ良くて洒落たレストラン、各種料理、R&Bを基本とする音楽が堪能できます。

大衆食堂「ソウル・キッチン」はジノスのいい加減な料理でそこそこ人気のレストランです。建物は古い倉庫みたいな洒落た建築で、手作りの内装によるとてもカッコいいレストランです。京都だったらカフェ・アンデパンダンやUrBANGUILDを彷彿とさせます。ご当地ネタ過ぎますが。
このレストランのカッコ良さにまず惹かれます。こんな店があればいいですね。こんな家だったら尚いいですね。無骨さとハイセンスの内外装です。
しかし劇中では「古くさくて汚い雑な作りのちゃんとしていないレストラン」という設定です。
厨房設備にも不備があって、それが原因で主人公ジノスは腰を痛めます。この腰を痛めたことがすべての始まり。坂道を転がるように物語りは展開に次ぐ展開を見せます。

あまり奇を衒っていないストーリーです。ですがそこが魅力。大きなストーリーも面白いですが、細かなセリフや細かな演出が冴え渡ります。
最も目立つのがハードボイルドコックです。彼の登場シーンは別のレストランをクビになるところですが、クビになった彼が店を出ると職場の仲間もぞろぞろと出てきます。引き留めたり別れを惜しんだりすると思ったら「さよーならー」「じゃねー」と手を振ってそしていそいそと店内に戻ります。シェフは波止場のヤクザ者かのごとく振る舞います。このすっとぼけた演出で真っ先に思い浮かぶのがマッティ・ペロンパーです。アキ・カウリスマキ映画のあの間合いと侘び寂びとコメディセンスが好きな方ならこの初っ端シーンで「ソウル・キッチン」への好感度が勢いよく跳ね上がることでしょう。コックはずっとマッティ・ペロンパー的なハードボイルドタッチを崩しません。
続く主人公と旧友との出会いシーンなんかも、もぞもぞしたおかしさに満ちています。
兄貴と給仕係の恋もそうですし、人間対人間のおかしな間やギャグセンスはまこと北欧的で、それがつまりいわば現代的です。

主人公ジノスも魅力的です。この手の物語にありがちな駄目で滑稽な人物ではないのですね。本人は真面目にレストランを経営しており、ふざけた人物像ではありません。真面目でやさしく家族思いで自分の店を愛しています。この真面目さも北欧映画の人物を思い出させます。

レストランの映画だからして、料理のシーンもあります。スカッとシャキッとカリッと撮り上げます。調理シーン、料理のシーン、短いながらも共にたいへん良く出来ています。こういうところできちんと締めているところが映画全体の説得力にも繋がります。

真面目なニヤニヤ笑いとレストランの顛末と料理を基本とする「ソウル・キッチン」のもう一つの特徴は音楽と若者文化です。
随所で盛り上がるソウル・ミュージックは、レストランのカッコいい内装、給仕係のカッコいい家、そういうものとの組み合わせでもって何かとカッコいいのです。それとなくカッコいいのです。全体的にたいへん洒落ています。
ソウル・ミュージックをベースにアメリカナイズされた若者文化を素直に描きまして、このアメリカかぶれのドイツ的味わいというものも見どころの一つです。

監督、脚本、製作のファティ・アキンは73年生まれのトルコ系ドイツ人。「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」などのすばらしい作品を残す監督です。
脚本と主演のギリシャ系ドイツ人アダム・ボウスドウコスも才人ですね。とぼけた演技と絶妙脚本でした。

というわけで劇場で見逃して悔やんでいた「ソウル・キッチン」、嬉しいことに早々にDVD発売されまして、これを機会に是非皆様もこの楽しい映画をご覧になってはいかがかとお勧めして久しぶりの更新今日はこの辺で。

ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、審査員特別賞、ヤングシネマ賞

めちゃファンキーでノリノリのサウンドトラックもおすすめ。iTSにも売ってます。

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“ソウル・キッチン” への 7 件のフィードバック

  1. ソウルキッチンで調べたら、このサイトにたどり着きました。この映画ナイスでしたね。登場人物、映像、音楽、ストーリーにセンスを感じ、久々グットな映画を観た気分で気持ちよかったです。 レストラン物では『バベットの晩餐会』ご存知かもしれませんが、確か1970年代のデンマーク映画ですが、是非観て欲しいです。ラストに向けてぶぁーっと感動します。

  2. コメントありがとうございます。「ソウル・キッチン」はかなりの面白さでお気に入りです。こういう、細部にこだわった妙な映画大好き。
    全然関係ないのですがうちで買っている雌猫が「とめ」という名前でして、頻繁に「とめきち」なんて呼んでおります。それで、「トメキチさんよりコメントがありました」というブログからのお知らせを見て「うわ。とめからコメント来たっ」と思ってしまいました。・・・関係なくてすいません。
    「バベットの晩餐会」ですよね。ああ。何故観ていないのだおれの馬鹿馬鹿アホと自暴自棄になる寸前です。思い出させてくれてありがとうございます。

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