ポゼッション

Possession
ポゼッション
公開年:
1981
製作国:
監督:
製作:
  • マリー・ロール・リール
脚本:
撮影:
  • ブリュノ・ニュイッテン
音楽:
  • アンジェイ・コジンスキー
主演:
出演:
  • マルギット・カルステンセン
  • ヨハンナ・ホーファー
  • カール・ドゥーリング
  • マキシミリアン・ルシュレイン

美人妻アンナ(イザベル・アジャーニ)とその夫(サム・ニール)、変な愛人(ハインツ・ベネント)にその母親、ゲイ探偵に幼稚園の先生に怪しい連中、いろんな人が妄想と狂気に陥るホラーでスリラーでカルト的変な映画「ポゼッション」はポーランドのアンジェイ・ズラウスキー1981年の怪作。

ポゼッション

なかなか手に入らず観ることが難しい作品ということでカルト的扱いです。でも最近めでたくDVDが再発され、美しいイザベル・アジャーニを再度拝むことができるようになりまして、期待に胸膨らませこの伝説的作品を観て「なんじゃこら」と思った人もいるかもしれません。

私は初見です。「イザベル命」と腕に入れ墨をしていたくらいのイザベルファンなのに(嘘)作品は全然観ていませんで、公開時も、VHSでも観ていませんでした。「ノスフェラトゥ」の数年後、妖艶なる美女っぷりも最高潮のイザベルを堪能できる貴重なる作品です。

で、その内容はまさに「なんじゃこら」です。いや、いい意味と微妙な意味で。

狂気に陥る美人妻。という映画らしいという程度の認識でしたが、いやはや、この作品はなかなか凄まじいです。狂人映画という名にふさわしい狂人っぷり。美人妻だけでなく、夫や愛人やピンクの靴下やいろんな人が変でいい感じです。ストーリーも変です。映画的にも変です。なんだかよくわからなかったりしますがそんなことはお構いなしです。

この変な感じは、70年代の一部ヨーロッパ映画の特徴でもある混乱と無秩序と狂気と不条理に通じます。それに加えて後半にはノワール的アクションも堪能出来るし、ラストに向けてのハチャメチャな崩壊っぷりはゴダールの映画みたいだし、さらに80年代に入っていましてモンスターホラー系の粘液系SFXまで楽しめます。

まあなんて盛り沢山なんでしょう。

アデルの恋の物語」みたいな感じの映画かと思っていましたから驚いたのなんの。

演出はくどめでしつこいです。狂気のシーンがやたらと多くて、みんな錯乱しすぎでギャーギャー言うとります。よだれだぁーとか、イザベルの狂人演技は見ていて気恥ずかしくなるほどの大騒ぎ。いやはや、これは当時さぞかし衝撃的だったことでしょう。

今の時代、新しい映画のリアリズムにはいくつかの特徴がありまして、「ゲロ」「よだれ」「交通事故」「注射」「汚い便所」などの描写がリアルで露骨であることがそのひとつ。昔の映画では決して露骨に描かれてこなかったこうしたシーンが、近代の映画ではほんとに頻繁に、リアリティを伴って描写されますよね。いやさすがに慣れてはきていますが、こういったシーンの露骨さに最初は大いに驚いたものです。

で、この81年の「ポゼッション」の狂人描写も、今見ると衝撃は少ないとしても、その徹底ぶりは驚くべきことだったのだと思うのです。美女イザベルによだれだぁとか触手系官能シーンとか、よくやりましたね。

イザベルの狂人ぶりについてちょっと話がそれますが「美女の狂乱」という点で、シュールな恐ろしさを感じると同時に、得も言われぬ面白さも同時に感じたりします。これは何に由来する面白さでしょうか。ちょっと考えてすぐに思い当たります。そうだ、これは吉本新喜劇の山田スミ子の雄叫びと同等の面白さやおまへんか。と、イザベル・アジャーニと山田スミ子を並べて語るとは映画ファンに後ろから刺されてもおかしくない冒涜でありまして、この部分、無視しといてください。

ポゼッション

印象的な好きなシーンもたくさんあります。例えばゲイの探偵たちとか、ピンクの靴下とか、ああいった演出はかなり好き。ラストの坊やにも戦慄です。坊やのシーンはいいですよ。すごいです。

撮影もやたら凝っていて、カメラの動きがパワフル。ちょっとアップが多いですが、そうじゃないシーンの力強さはかなりのものです。後半の唐突なノワール的な動きも洒落ています。

夫役のサム・ニールは口元がダニエル・ブリュールによく似た妙な顔の人で、いろんな表情を表現します。この作品でサム・ニールの演者としての才能が発揮されています。この人、ダニエル・ブリュールを除いても見たことあるなあと思っていたら、「オーメン/最後の闘争」のダミアンじゃありませんか。というか、多作に出演の超有名俳優でした。「ピアノ・レッスン」の人です。「オーメン/最後の闘争」はキャリアの汚点らしいですね。そりゃそうですね。

愛人ハインリッヒがこれまた個性的な登場人物。演じているのはハインツ・ベネントという方で「ブリキの太鼓」に出ています。
カマっぽくて強くて金持ちで母親と暮らしていてワルです。面白いです。母親もいい感じです。

監督のアンジェイ・ズラウスキーはポーランド出身の映画監督で、狂気と不条理と官能の象徴主義的作風が特徴のようです。本作「ポゼッション」がカンヌ国際映画祭でパルムドールにノミネートされ、イザベル・アジャーニが女優賞を獲得したことで一気に注目されるようになりました。
狂気や不条理が「ポーランドの悲劇的運命を象徴している」とか何とか言われたりしております。やたら象徴象徴言うのはどうかと思いますがそういう判断は迂闊にはしないほうがいいので保留しときます。

一部でカルト的扱いの「ポゼッション」でした。

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