ドクターズ・ハイ

Pathology
医療センターのエリート解剖医インターンたちによる堕落のゲーム。観ていて気分が悪くなる反モラル反道徳スリラー。死体にまみれてハイになったアンポンタンたちの遊びと顛末。
ドクターズ・ハイ

これは良識ある皆様方にはあまりおすすめできる映画ではありませんが、けど結論を先に言いますとなかなかよく出来ていて面白かったんですよ。面白いなんて言うと語弊もありますが、ちゃんと不愉快になって気分も悪くなります。何でも来いの映画ファンに限っては、それなりに観て損はないかも、と申し上げられます。

というのもこの作品、ちらりと予告を見る限り、正常な感覚をなくした解剖医たちの医療冒涜的な映画っぽくてですね、まあ言ってみれば真っ先に連想するのは「問題外科」(筒井康隆)なわけでしてね。
「問題外科」は史上最悪のえげつない医療小説ですが、何か、あれに近い狂気を少し予感させるわけです。医者たちのモラルの欠如とそのエスカレートです。遺体を切り刻んで遊ぶ変態どものお話かなと。

でも一方で「どうせ『問題外科』ほど凄くはないんだろ?」という製作陣に対する不信感もあります。普通の娯楽映画ですからね。結局は低予算サスペンス映画的なお茶の濁し方をするんじゃないか、と。だから観る前はまったく期待していなかったんです。

というわけでエリートインターンが主人公で、彼がやってきた大きな医療センターのお話です。

医療センターの元々のインターンたちがおりまして、どうにも厭な連中です。真面目な主人公は最初全然なじめません。いじめっ子もおります。でもちょっとしたことがきっかけで、仲良くなるというか、お仲間入りをすることになるんですね。
たちの悪いインターンたちは、自分で誰かを殺し、仲間に披露してその死因の当てっこをするというとんでもない遊びに夢中なのです。
「社会のゴミみたいなやつ、死んだっていいだろ。遊びのネタに使うよー」てな感じです。モラルの欠如というレベルを遙かに超え、狂人の集団です。

最初まじめな主人公インターン、このお仲間にだんだん染まっていきます。
こんなことを続けていてろくなことになるわけがありません。だんだんと具合が悪い方向にお話は進んでいきます。

という、そんな話です。医療従事者が見たら真っ先に「こんなやつおらんわ」「あほくさ〜」と思うでしょう。まあ、もちろん基本あほくさいんです。
しかしやはり、遺体をもてあそぶエリート変態研修医たちが活躍するこの映画、ただあほくさいだけのつまらない映画ではなくて、意外とちゃんとできております。
きっちり不快感を得られます。モラルの欠落に心も痛みます。気分も悪いです。リアリティはないけどスリラーとして決して悪い出来じゃありません。

単純な「変態インターンたちの狂ったドタバタ」でないスリラー進行も丁寧で、一面的なだけじゃない主人公キャラクターの造型もそれなりによく出来ています。
後半絡んでくる諸処の展開もいいですし、ラストあたりの意外な顛末はセンスよく、なかなかのものですよ。反モラルとゲームの分離と融合が結果的にバランスよく仕上がっています。
意外なのはオチのストーリーそのものではなくて、オチのテイストのほうです。
「ほほう。このテイストをオチに持ってきたか!」という感心なんですが、説明難しいな。
つまり反モラルの残虐映画というテイストと、その中で行われるゲームのゲーム的側面のテイスト、両方がちゃんとあって、真面目であると同時に悪の面を持つ主人公のキャラクター造型と相まって、わりとしゃきっとした展開にて物語を終えるんです。

この映画、全然人気ないみたいだし、取り立てて褒めるべき映画でもありませんが、いや、これ、やっぱり私褒めときたいです。いい意味で予想を裏切られて満足でした。

主人公(マイロ・ヴィンティミリア)は昔のブルース・キャンベルかデヴィッド・バーンか崩れたトム・クルーズみたいだし、敵役(マイケル・ウェストン)もいい味わいを持った俳優です。
綺麗な女優さんもいます。婚約者の彼女も、不道徳仲間の彼女も別嬪さんでいい感じ。でもただの別嬪さんって、女優的にはまあまあ不利なんですよね。

というわけで別嬪さんのブロマイドでも載せときますか。
ローレン・リー・スミスさんです。「寂しい時は抱きしめて」なんていう官能ラブロマンス映画で主演をやっておられたりします。

Lauren Lee Smith
Lauren Lee Smith | IMDbのブロマイドから

いえ、こんなシーンありませんよ。これはIMDbに載ってたブロマイド。

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