扉をたたく人

The Visitor
扉をたたく人

62歳の大学教授がニューヨークの別宅に侵入した若い移民のカップルと出会います。

扉をたたく人

The Visitor が原題ですね。邦題は「扉をたたく人」・・・さほど悪くないですね。太鼓をたたく、にも引っかけてます。
さて主人公の教授は孤独っぽいです。この映画も老人に近いおじさんが主人公の、私が推奨する「老人映画」の範疇に入るかと思われます。
最初はピアノ教師を招き入れるシーンです。ここでこのおじさんの多くのことが語られます。
まず孤独感、それから「ピアノを習ってみたいな」という願望、お茶目ですね。音楽が好きなんでしょうか。それとも、何かの理由で興味を持ったんでしょうか。次に頑固で意固地。先生の言うことを信頼しません。で、諦めるのも速い。努力を嫌う。人を疑う。
教授の仕事っぷりはどうでしょう。わりといい加減なようです。いい格好をつけたがります。プライドだけは高いです。責任感はありません。うんうん。
いいですね。いい老齢のおじさんですね。やなやつに近いですね。

このおじさんが出会うのが移民の若いジャンベ奏者です。ジャンベはアフリカの太鼓です。

そうです。皆様の予想通り、頑固で格好つけでプライドだけ高い教授がジャンベのリズムに惹かれ、ジャンベ奏者と仲良くなっていくという展開ですね。わかりやすいです。ちょっと良いところは、この教授がもともと本当に厭なやつだったかというと決してそうではなく、最初から優しくて礼儀正しくて素直なところもある点です。冒頭でちゃんと表現していますね。そうなんです。ピアノを習いたいな。音楽いいな。子供みたいなピュアなところを持っているんですね。
その表現があったかなかったかはとても重要です。もともとピュアで優しいからこそ、若いカップルを引き留めるというドラマチックな展開が無理なく受け入れられるのです。ただの頑固オヤジとしか表現していなければ、若者を追い出して警察に通報してお仕舞いですからね。

この映画のとても好きなところは、登場人物たちが皆が皆、礼儀正しく、他人を思いやり、丁寧な言葉を使い、優しいというところです。一見不良かと思った若いカップルも大層インテリでいい人たちですよね。母親も、みんなです。
「登場人物たちがいい人たち」というのは世界的に見ても虚構の大きな流れです。私はそれに初めて触れたのが筒井康隆氏の「美藝公」でした。それ以来、いい人たちの物語に触れるとつい「美藝公的」と表現してしまいます。ファンならではの阿呆さ加減ですね。でも明らかに世界のうねりはそちらに向いています。映画の世界もそうですよね。まあ文学の動きなどはあまり詳しくないので恥をかきそうですが勝手にそんなことを思っております。

もうひとつのツボはもちろんジャンベです。いいですね。ジャンベ。公園でのセッション、楽しそうですね。ほんといいです。
何度か主人公の教授がジャンベを叩くシーンが用意されています。最初はぎこちなく、だんだん楽しく、映画の進行に合わせたシーンです。
アメリカの抱える移民の社会問題を個人のレベルで掘り下げたりします。

ヨーロッパ映画のようなエンディングを迎えた後、われわれは少々打ちのめされ、それからシーンを反芻して思いをはせ、しばし動けなくなるかもしれません。
たいへんよい映画です。

2010.05.30

監督のトム・マッカーシー、誰だろうと思っていたら、まあ驚きました。何となくよく映画で見る人、俳優のトーマス・マッカーシーと同一人物ではありませんか。
トーマスでもトムでも同じですが映画によって表記が異なるんでしょうか。
で、トーマス・マッカーシーって誰よ、と思ったあなたは私と同類の人間ですが、出演作は本サイトですでに取り上げている「グッドナイト&グッドラック」「シリアナ」「父親たちの星条旗」の他「ミート・ザ・ペアレンツ」「オール・ザ・キングスメン」エメリッヒ「2012」と多岐にわたっています。オマケに「カール爺さんの空飛ぶ家」では原案のひとりとしてクレジットされています。
「扉をたたく人」、そのトーマス・マッカーシーの初監督作品のようです。
恐れ入りました。多才な方なんですね。

2010.12

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“扉をたたく人” への 4 件のフィードバック

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